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球場

9回裏。

贔屓のチームはこの試合に勝つと首位へ浮上するチャンス。
球場もボルテージが上がる。

カラになったカップを見てビールの売り子が寄ってきた。

「ビールいかがですか?」

お決まりの文句に

「今良いところだから。」と返す。

そうするとその子は

「お兄さんがビール買ってくれたら、今打席にいるバッターがホームラン打ちますよ!」

レフト側からのカクテル光線が売り子のシルエットをまぶしく照らす。

というかこの子は何を言ってるんだ?

「お兄さんファンなんですよね。じゃあビール買わなきゃ。」

ロクに返事もしないままビールを注ぎカップを渡される。
仕方ない。という思いでビールの代金をその子に渡した。

「見ててくださいね。」

その子が言い終わったかどうかの瞬間

バッターはスイングの後に試合を決めたとわかるガッツポーズをした。
ダイヤモンドを一周。
スタンドは声にならない叫びがそこかしこで上がる。

「すごいね君、、」

その場からは離れて次のお客さんの対応をもうしている。
まあ商売だしな。


そう思ったとき彼女はこちらをチラっと見て振り返り、後ろ手にピースをした。

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