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あやうく一生懸命生きるところだった私へ

私ほど大学での勤務を謳歌している人もいないと思う。

仕事終わりや休みを利用して、興味がある公開講座に参加したり、筋トレもしている。そして学生と同じように大学の図書館も利用できるので、読みたい本を借りて読んでいる。

実は一年以上前から近くの図書館で予約していた本があった。しかしあまりに人気のため順番が全然回ってこない。
忘れかけていた頃に大学の図書館で検索してみたところ、すぐにその本を借りることができた。

韓国で25万部以上を売り上げたベストセラー。本当なら一生懸命頑張りすぎて、もう頑張れなくなった昨年に読みたかった本だ。

筆者は苦労して有名美術大学に合格したものの、なかなかその世界だけでは食べていけず、会社員とイラストレーターをしながら生きていた。ある日40歳を前にして、「こんなに一生懸命生きているのに、自分の人生はなんでこうも冴えないんだ。」と限界に達し、なんのプランもないまま会社を辞めてしまう。

それ以降、彼はフリーのイラストレーターとなったが、仕事のオファーはなく、ビールを飲み、貯金を食い潰し、何か言い訳をつけて仕事を断ることを日課にしていた。そして苦労して美術大学を卒業し、絵を書くことを仕事にしているのに、絵を描くこと自体がそんなに好きではないという決定的な事実に気づく。

と、ここまでが筆者紹介文の概要だ。
これを読んだだけで、「おいおい、大丈夫なのかよ?」と心配になった人もいるかもしれない。私はといえば「自分と似た人が世の中にいるんだなぁ。」と率直に思った。

私がフリーで仕事をしていた時、「zoéさんてどうやって暮らしているんだろうね。不思議だね。」と元同僚たちの間で噂になり、半ば都市伝説化していたことを知っている。ちなみに私はものすごく一生懸命働いていました。

私は看護師として働き始めたものの、自分が看護師に全然向いていないことに早くから気がついていた。昼夜問わずものすごく働いたけれど、他の看護師さんのように勉強熱心でもなく情熱も知識もない。しかしこんな自分でも辞めると病棟が回るなくなるからと思い、頑張って働いた。体が悲鳴をあげるまで働いた。その後フリーでしていたエステの仕事も、本当に頑張ってやってみたけどどれも全然うまくいかなかったし、全てが中途半端だった。

それでもまだ頑張ろうとするので、体が不具合を起こし「頑張ってはダメ〜!」とブレーキをかけて私を止めたのが昨年のこと。

40年以上頑張り続けてきた心と体の電池が切れてしまい、とうとう動けなくなってしまった。

そして悟った。

「私の代わりを務めてくれる看護師さんやエステティシャンはたくさんいる。けれど、私の人生を生きてくれる人は私しかいない。」

よし、自分の人生をもう一度生き直してみよう。

と。

以後、一生懸命生きないと決めた。頑張らないことにした。

たまたまリハビリがてら1日だけ仕事に行った先が今の大学だ。
繁忙期なのに人が足りず困っていたので、「私でよければ来ますよ、暇なんで。」と申し出て現在に至る。

看護師としてその分野に情熱があるわけではないけれど、資格と経験が活かせるし、目の前にある仕事をひたすらこなせばいいので案外合っている。

以前は仕事にもっと『やりがい』とか『学び』を求めていた。辛くても頑張ります!と本気で思っていた。

『天職』と言える仕事に辿り着ける人もいるだろうけど、自分はそうではなかったというだけの話だ。

この本の筆者ではないが、エステの事業を一緒にやりませんか?というお話を頂くことがある。

だが全力で断っている。片っ端から連絡を断っている。

別に私がやらなくても世の中にはたくさん同じことをしている人がいるのだ。私である必要はない。

一生懸命であることはとても素敵なことだ。力加減と方向性さえ間違わなければ。

私はなぜあんなに一生懸命生きていたのか、自分でもわからない。一つだけ言えるのは、自分のためではなかったということだ。
誰かのために一生懸命な自分を見せる、誰かに追いつくために一生懸命になる必要がある、そういう側面もあったことを否定できない。

私が40数年かけて思ったことは、一生懸命頑張って報われる人もいるし、そうでない人もいるんだよ、ということかもしれない。自分は間違いなく後者だ。

私は今一生懸命生きていない。
そのかわり、どうせ一度の人生なら楽しく生きようと思っている。

同じ世代の人たちが結婚をして母となってなっていくのに、私は全然それに追いつかない。話についていけず、だんまりしてしまうこともある。だけどそれで大丈夫だ。
小さい頃からマイペースでなんでもスタートが遅かったので、40を過ぎてもこんなもんだろう。

本にもこんな文章があった。
「必ずしもみんなとスピードを合わせる必要はない。」とね。

流れに身を任せて生きているうちに、色々な楽しいことが目の前に訪れるようになった。それは自分にぽっかり空いた穴を埋めてくれ、新たな好奇心を生み出し、人との繋がりを連れてきてくれた。まさに大学での仕事がそれで、生活に楽しみを与えてくれている。


今後の人生、もしかしたらまたどこかで一生懸命になる時がくるかもしれない。でもその時がきたらまた考えることにしよう。


あやうく一生懸命生きるところだった!









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