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そろそろ健康になることにした
10年来のありとあらゆる不調を抱えている。
首や肩の凝り。
謎の息苦しさ。
顎関節症。 等々。
悲しいかな人間とは慣れてしまう生き物で、例に漏れず私もこれらの症状を抱えていることにすっかり慣れ、共存の道を選んできてしまった。
治療をおざなりにしてきたのは、時間やお金の余裕が持てなかったからだったり、治療を差し置いても取り組みたいことがあったからだったりしたかもしれない。病院の待ち時間がもったいないものに思えて……。
でも最大の理由は、自己肯定感が低すぎたことにあると捉えている。
自分を気にかけるということが、最近になるまでほとんどできていなかった。今もきっと充分とは言えないけれど、数年前よりは格段にマシだ。
共存し慣れた不調も、時々「かなりの不調」として存在感を放ち、自由な行動を制限してきたりする。そこで耐えてしまわずに、時間とお金を作ってケアを試みる。
人によっては自然で、ごく当たり前のことかもしれない選択を、私は意識的に取り始めた。不調が和らいだり、解消されたりした方が、格段に暮らしやすくなるに決まっているのだ。
いざ実際のケアを始めてみると、個別のものに見えていた不調が実は相互に関連し合っていたことが分かり始めた。
顎関節症の治療として、就寝時にマウスピースをつけるようになった。
すると今まで自覚がなかったけれど、奥歯を噛みしめていたことが分かった。
ストレスで噛みしめる癖を持っている人の中には奥歯がすり減る人もいるというが、そこまで力が入っているわけではなかったから、今まで気づかなかったのだ。
奥歯の噛みしめが和らぐと、なぜか、息が吸いやすくなった。
今まで息を吸おう、吸おうと力んでいたのはなんだったんだろう……というぐらい、楽に呼吸できる時間が日々増えていく。
肩や顎周りの筋肉にも力が入り続けていたらしく、マッサージに行ったり、自分で揉んだりするようにしたら、噛みしめや息苦しさが和らいでいった。
日常生活はネガティブなストレス源でいっぱいだ。
だから毎日のように気をつけてケアを心がけていないと、すぐに肩に力が入るし顎は外れやすくなるし息は吸いづらくなってしまう。
元気な日とあんまりな日が、何度も何度も繰り返される。
それでも、「ケアしよう」と決意してよかったと思う。
自己肯定感の低さは矛盾の塊だ。
死にたくないけど、生きていたくもない。
健康に気を遣えないけど、病気で苦しみたくもない。
痛いのは嫌だけど、自分の傷つきに手をかざすことが難しい。
最初に自分の傷に自分で手をかざす時、ものすごい気持ち悪さみたいなものと戦ったのを時々思い出す。
「自分を大切にする」ことはナルシシズムに直結しているというか、周囲から冷えた目で見られる愚行というか……。そういう、あまり良くないものだと思い込んでいたのだ。
必要なセルフケアと、尊大さの間にある違いを分かることができなかった。
だから自分を気にかけること、自分の体調とか、心の快不快に意識を向けることそのものが悪いことみたいに思えて、しきりと周りの目を気にしていた。
「今あいつ、自分のこと見てるんだぜ」ってバレてしまわないか不安で。
最初にその気持ち悪さに直面してから大体10年くらい経った。やっぱりまだ「このお金を治療費に充てるよりも……」と自分を蔑ろに考える癖は抜け切らないけれど、自分の体調を気にかけて、疲れたら休むとか、薬を飲んで苦痛を和らげるとかはすんなりできるようになりつつある。
いちど慣れてしまうと、自分の不調が解消されるように行動した方が気持ちよく過ごせることが理解できてきてしまうのだ。
世の中には、楽な方に流れるのは悪いことだとか、苦行を尊ぶだとか色んなものの見方が溢れていて、そこでは快適な状態に身を置くことはあまり良いこととされていない。
セルフケア、セルフラブと言うキーワードや方法論がこれまでになく必要とされている今、「苦しさが美徳って本当かな?」と、これまで抱いてきた価値観に一度疑問を投げつけてみるのも大事じゃないかなと思う。
他人に優しくできるのはその人が寛大だからではなく、きっと心身に余裕があるからでもあるのだ。ゆとりがない時、人は不寛容になりやすい。それは生来の人間性とは関係のない反応なこともある。
寛大さが親切な行動を生み世界を優しい場所にすることができるなら、まず手の届く範囲--自分--に、もう少し時間とお金をかけることも、平和を願う活動になったりするかもしれない、なんて思ったりもするのだ。
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