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陛下と矢印 ストレンジラブ      愛国者学園物語20

 日本のメディアは反応がバラバラだった。このニュースを無視するテレビ局、小さく報道する新聞社、それに大々的に伝えるメディアと対応が分かれた。
「悲報に悲しむ子どもたち、わざとらしい?」
「愛国者学園で絶叫 子どもたち、皇族の@@のニュースに呆然」
「(愛国者学園の学園生が訃報に泣き叫んだことは)皇族への愛がなしたこと。彼らは日本の宝だ」

 もちろん、なんでも言えるネット社会では、学園生に賛成と反対の意見がごちゃまぜに飛び交った。彼らをこの世の宝と賛美する声や、動画で愛国者学園の子どもたち万歳を叫ぶユーチューバー。

 それに神道、皇室への愛と愛国心こそ、日本人の全て、愛国者学園の学園生はその見本だと主張する極右の文化人には、多くの賛同者がコメントした。

 もちろん「わざとらしい」という声もたくさんあった。
「いくらこの学園の子どもたちが皇室を敬愛する気持ちを持っていたとしても、あのように泣き叫ぶだろうか」
「怪しい」
「やらせだ」
「この学園にはプロデューサーがいるそうだから、今回の騒動もやらせだろう?」


 中には具体的な人名まで書いて、プロデューサー説をもっともらしく主張するブロガーまでいたが、「ソースは?」とコメントされると、この話題を避けるようになった。

「君がそう主張するならば、その根拠か情報源を明らかにせよ」。この学園生絶叫問題でも、その「ソース」の有無をめぐって、どうでも良いような悪いような言い争いが繰り返された。


 この学園は確かに皇室に対し深い敬意を示し、日常的に彼らを賛美していた。もちろん、行事などで行われる万歳三唱でも、天皇陛下万歳を叫ぶ。それだけではない。校舎内には、皇族の写真を飾った特別な部屋があり、学園生の表彰などを、そこで行なっていた。さらには、天皇・皇后両陛下の誕生日に、それを祝う生誕祭まで開催していたことは、ここでは詳しくは述べなくても良いだろう。

各教室の天井には矢印のマークがあり、それは皇居のある東京の方角を示していた。要はあの矢印のさす方向に、天皇皇后両陛下をはじめとする皇族方がおられる、だからあの方向に敬意を示せということだ。


それは、イスラム教からヒントを得たと学園のパンフに紹介されていた。イスラム教徒が聖地メッカの方角に向かって礼拝をするので、イスラム教国のホテルの天井にはその方角を示した矢印が描かれていることがある。それを真似したことになる。


 もちろん、異議もあった。天皇陛下たちがいらっしゃる場所を矢印で示すとは失礼だ、という怒りの声だった。しかし、冷静な知恵者がいて、あれは陛下たちやお住まいを指差しているのではなく、単に東京の方角を示しているだけだ。それ以外の意味はない、と反対者たちの怒りをなだめて、事態は落ち着いた。

続く


大川光夫です。スキを押してくださった方々、フォロワーになってくれたみなさん、感謝します。もちろん、読んでくださる皆さんにも。