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10歳でフランスから日本へ来た夫

私の夫はフランス人の父と日本人の母の間に生まれた、いわゆるハーフです。

生まれはフランスのパリ。
そこでしばらくは育ったのですが、10歳(日本でいう4年生が終わる頃) に両親の事情で、家族で日本へ移ってきました。

旦那の家族は、それまでフランス語しか使っていなかったそうで、彼は日本に来て初めて、日本語を一から学ぶことになります。

(現在も旦那の実家は日本にあるのですが、義母とは日本語、義父がいるとフランス語のコミュニケーションです。)


旦那は、4年生がほぼ終わる頃に初めて日本の公立小学校に通い出して、当然いきなり授業についていける訳もないので、
登校してホームルームが終わったら、自分だけ別の教室へ行き、下校時間までひたすらマンツーマンで日本語を学んでいたそうです。

平仮名、カタカナ、漢字、それをただただ読み書きすることだけをしていたと言っていました。
小学校を卒業する間近に、やっと他の生徒達と同じ授業に参加するようになったんだとか。

それでも、体育や音楽、家庭科、美術といったような副教科と言われるような授業は、言葉が分からなくても身体を動かしたり、何か作ったりするだけだったから、そういった授業には出ていたそうです。


最近でこそ、綺麗なハーフのタレントやモデルが当たり前にいる日本ですが、
私や旦那の小学校時代なんかは、ハーフの子はなかなか珍しかったですし、
旦那も周りから「フランス人、フランス人」と言われていたそうです。
当時は何を言われているか分からなかったけど、良い気はしなかったと言っていました。

そんな旦那は小学校の家庭科の授業の時、一つ作るものを選んで、自分で完成させるという課題があったそうです。

私の小学校でも同じ課題がありましたが、ほとんど全員が “ナップサック” を選んで作って、そのナップサックで遠足に行ったり、体操服を入れたりと、後々実用的に使っていた記憶があります。

別に先生から “ナップサック”を作れと言われた記憶は無いのですが、周りもそれを選んでいるし、上級生がそれを使っているのを見ていたのもあったせいか、
それを選ばない方が不自然な雰囲気があった気がします。


そんなこと全く知らない旦那は、クラス、、いや学年で唯一、 “テディベア” を選んだそうです。

彼が色々なアイテムからそれを選んだ理由。

それは、 “母親にプレゼントしようと思ったから。” でした。

なんてフランス人らしい理由!!とこの話を初めて聞いた私は、感動で泣きそうでした。笑

当時周りにいた日本人のクラスメイトは、旦那がテディベアを選んだことに色々言っていた気がしたそうですが、
まだ日本語がそこまで理解できていなかった為、なんでか自分の選択はみんなと違うらしい、ということは感じていたそうです。


そして教材が届き、みんな材料を机に出して作業に取り掛かるのですが、
布の端を縫って紐を通せばほぼ完成のようなナップサックと違い、
テディベアの難易度の高さに、「しまった、、、」と思ったそうです。笑


それでも彼は、放課後に居残りをして、一人黙々と教室でテディベアを一生懸命縫い続け、無事完成させて、母親へプレゼントをしたんだとか。


母親目線で考えると、このストーリーは思い出すだけで泣けます。笑


日本の男の子だって、それぞれみんなお母さん想いなのでしょうが、
10歳を過ぎたほとんどの日本の男の子は、学校で “テディベアを作って母親にあげる”なんて小っ恥ずかしくてできない気がしちゃいます。

日本の文化も良いところはたくさんありますが、
夫婦であれ親子であれ、こうゆう素直な愛情表現が普通にできるフランスの感覚は、とても素敵だなと思います。

そんな彼は、10歳まで日本語を話せなかったと思えないくらい、今は日本語は普通に話します。
ごくたまに言い間違いや、漢字の読み間違いがありますが、そういうのを聞いてると逆に安心します。笑


彼が日本に来てからしてきた苦労はきっとたくさんあったと思いますし、
当時どんな気持ちだったのか、どう感じていたのか、よく聞くことがあります。

旦那曰く
「もちろん大変だったんだけど、子供だったからそこまで深く頭で考えていなかった。子供だったから良かったのかもしれない。
今になってからの方が、自分は大変だったんだなと思えるかもしれないけど、でも今では日仏英の3ヶ国語が使えない自分は想像できない。」

だそうです。


私たちは現在フランスへの移住を考えていてますが、親として一番考えるのは子供達のことです。
ですが旦那のそんな経験や言葉を聞いていると、もちろん一番考えると同時に、ある意味一番心配しなくともなんとかなるのかなとも思っています。

それだけ子供たちが持つ潜在能力がすごいということ。

“案ずるより産むが易し” なのかもしれないですね。


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