MOONLIT (25首)
MOONLIT 丸田洋渡
サイダーの途中で時が止まったら エレベーターの炭酸が抜ける
太陽に雪が降ったらしゃぼん玉が同時に割れたりして したりして
茹だる暑さ 卵 冷蔵庫の卵 冷蔵庫の十三個の卵
誤作動で百円玉が落ちてくる鬱、鬱くしいmoonlit pool
ときどき点けて遠くから見て忙しい正午のイルミネーション準備
天使凍結 空から来た隙間風に躰が本のように捲れる
裏返るメロディー 眠い目をこすってテニスコートに雪を見に行く
飴を舐めると地球儀が回りはじめて彼は得意なダンスに夢中
QQQ 風で扇風機が回る 生きているのが不思議な日には
真珠新宿 魔の手魔の手を振りほどき電車に減り込むように乗り込む
致命的な物語の失速 昼に食べごろになる冷凍ひじき
何かのシャワーを体のどこかに当てている 罪なら感じっぱなしの毎日
温泉なら少しくらいは誤魔化せるだろう涙をぽとぽと流す
ぬかるみを裸足で歩くこの生が死者の夢なら 覚めない夢なら……
おもいでの竹林に来て靱やかな霊的現象に 溺れる
もぬけの殻 十二ヶ月が終わったら新しい十二ヶ月の雨
歌声は声を離れてあたたかく響いた when the worlds sleep
それは睡魔をねむらせてから 火のなかのオルゴール・その仕掛けは秘密
メリュジーヌ くらやみの部屋くらやみの無辺際止まらない宇宙酔い
Casket 限りある詩集の中で 限りある蜜語を耳許で
瑠璃・玻璃間の諍いは静かに終わる あなたは永遠に蚊帳の外
魘されて起きたよ 今日のこの日まで言わなかったよ 光焼けの紙
終わらなくても良いと思ったトンネルの終わりが来ない 冬のカデンツァ
drop and drop 休み休みで。 頷いてよろめきながら心で歩く
ゆりかごの空にゆられて傘が飛ぶ World-Weary 傘はまだ空
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