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[4/3] Return of the Obra Dinn
Return of the Obra Dinn をやった。
この記事ではゲームクリアのネタバレになってしまう情報は書かないように多少は気をつけているが、何がネタバレになるかも難しい。もし未プレーで今後やる予定の人がいたら、今すぐ Obra Dinn を買ってクリアしてその後でこの記事を読んでほしい。
あまり真面目なレビューとか感想ではなく、書きたいことだけ書く。
Return of the Obra Dinn
4 年前に消息を絶ったオブラ・ディン号が無人で帰港した。
プレイヤーは東インド会社の主任調査官として、死体からその死の瞬間に立ち会える不思議な懐中時計を使って、乗員乗客の安否を推理・特定する。
より正確には、乗員名簿 (乗員の名前と役職が書かれている) と船上のスケッチ (乗員の顔が描かれている) も使ったうえで
・各乗員の顔と名前を一致させる
・各乗員が生存しているか、死亡しているかを当てる
・生存しているなら、どこで生きているかを特定する
・死亡しているなら、死因を特定する
・誰かに殺害されているなら、誰が殺したかも特定する
を行い、オブラ・ディン号に起こった事の顛末を記した手記を完成させる。
秀逸な難易度設計
まず何よりもゲームとして面白い。全部で 60 人にも及ぶ乗員がすべて特定可能になるようにあらゆる情報を活用しなければならいが、どの人物の特定にもきちんと根拠が用意されている。ただし、100% の確度を持って誰かの名前を当てられることはむしろ少ない。色々な人物の死の瞬間だけから可能な限り情報を拾い集めて推理を組み立てることで、ある程度の根拠を持って答えを導き出すことができる。
たとえば、全 60 人のうちシーン中で名前を呼ばれることのある人物はほとんどいない。はじめに色々なシーンを探る段階ではとても全員が特定可能には思えないが、役職や国籍などの情報や、時系列で直接繋がっているシーンでの一連の行動など、うっかりスルーしてしまいそうな箇所によく目を凝らすことで特定につながる情報が得られることがある。
3 人に対して正しい推理をするたびに演出が入り、その 3 人の推理結果が確定されていくのも良い。全 60 人の特定という長い道のりを少しずつ進捗していくことが出来るし、誤った推理から次々と他の誤った推理が導かれていき……という破滅がちょうどいい塩梅で抑止される (簡単にはなりすぎない程度だと思う)。2 人について自信のある推理をしているとき、次の 1 人を当てずっぽうで攻略できてしまうというのはあまり良くないと思うが、ある種の救済なのかもしれない (とはいえ全員根拠を持って推理できるので、当てずっぽうはしないのがオススメ)。
観察と想像
個人的にこのゲームで凄く良いと思ったのが、推理自体はすべて根拠を持って行うことができるようになりつつ、一方ではプレイヤーの想像力に委ねられる部分が非常に大きいところだ。
多くの人物の死の瞬間に入り込み、その直前の音声も聴くことができるが、その静止した世界で描かれている情報量がちょうどいい。映画やドラマなどの動画ほどに個々人の動きがちゃんと分かることはないが、漫画などの静止画に比べればその世界の中を動き回れるという点で情報量が格段に多くなる。
ある人物の死の瞬間、その人物の周辺や、あるいはその死のイベント自体から少し離れた場所にも色々な人がいたり物があったりする。そのシーンのイベントと直接関係ない人物でも、さっきまでどこに居たのか? 今どこに行こうとしているのか? 何を持っているのか? 何かを探しているのか? それはなぜか? といったことを前後のシーンとも併せて推測することができる。
Obra Dinn のストーリーにはオカルト要素もある上に、手記は淡々と各人物の死について綴るのみで直接得られる情報が非常に少ない。推理を全て完成させても全体の話の流れがいまいち掴めないようになっている。その全体の流れにある程度納得する (正しい答えは分からないので、それぞれが想像して補うほかないと思う) ために、クリア後も様々なシーンに潜って各人物の動きに注目し、そこから想像・考察を進めていくのも楽しい。
小説でも漫画でも映画でもなんでもいいが、その中に描写されているあらゆることに目を凝らし、たくさんの登場人物の行動やその理由について丹念に検証し、自分なりの納得を得ていく……といったことはなかなか出来ない。それは凄くエネルギーを必要とすることで、それをしたくなる、そうさせるような作品はそれ自体が強い力を持っていると思う。
Obra Dinn はまずそのゲーム性が入念な観察と推理を必要としており (そしてそれが面白い)、気がつけば、ゲームクリア後にもストーリーの裏側を自分なりに埋めるために更なる観察をし、想像を膨らませ、推理を進めている。目新しいゲームシステムやグラフィックの刺激も相まって、一つの世界をまるごと楽しめる素晴らしいゲームだった。
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