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翻訳物を原文でも読む理由

レイモンド・カーバーの短編集を読んでいる時に「ファイアズ(炎)」収録の「みんなは何処へ消えた」は「愛について語るときに我々の語ること」収録の「ミスター・コーヒーとミスター修理屋」の別バージョンであることに気づきました。
二つの作品を読み比べて違いを確認したくなったので原文のペーパーバックで「Where is everyone?」を読みました。そんな事をする必要は全くありません。しかし、この作品には炎があります。それぞれの違いを確認したくなりました。先ずは編集者によって大幅にカットされた「ミスター・コーヒとミスター修理屋」はスッキリとして読みやすい印象です。入門編としては最適でそこを狙っているのかなと思います。
「みんなは何処へ消えた」は登場人物が増えて、それぞれのキャラクターの活躍する場面が増えていて、コチラの方が圧倒的に好きです。
最後に原文で「Where is everyone?」を読んだ印象です。基本的には翻訳と内容に大きな差はありません。しかし、銃で脚を撃たれせいで不自由な生活を送る男、アルコール中毒のカウンセリングを受ける登場人物たちの描写は英語のほうがリアルな印象があります。「殺してやる」と「I'll kill you.」だと謙遜と謙譲を美学とする日本語には迫力で劣ります。
カーバーの作品には炎があると思っています。英語はザラザラとした不安定な焚き火の印象、日本語では行燈か和蝋燭のような原文と比較すると少しだけ洗練された印象があります。
明かりは暗闇を作り出します。それを探索したくなる。そこを想像するためにより深く探りたくなる、または惨めに近い登場人物たちに対する暖かい視線に触れたくなる。そんなところでしょう。
英語の勉強を始めた時に燃え尽きて、挫折するのを防ぐ為に世間的には「努力と忍耐」で乗り越える壁を「遊び」として成立させる事により迂回しながら学習の継続を目指していてきました。
最近はその考えを少しだけ変えています。パチンコ屋に早朝の9時頃から並びます、他人の貯金を取り崩してギャンブルや相場に投資します。素晴らしい翻訳の原文を確認するために自宅から電車に乗って都市部に出掛けます。熱中すると誰でも止められなくなります。所詮は同じ穴のムジナです。その熱量で踊らされる前に手を引くことは賢明な判断です。
無駄なことを思う存分できる休日はやはり貴重です。

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