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作品の「面白さ」について2

前回の記事

前回の要約

一応前回の概要だけおさらいしときます。おさらいって言っても大したこと書いてないと思うけども。

「面白さ」とは人間の知識欲、情報欲を刺激することで発生します。つまり情報を読者の脳にしこたま送り込むことが肝要なのです。

しかし大量の情報は読者の負担になるので、適切な工夫が必要です。

方法としては、提示する情報を小分けにする、前後の文章を連携・関連させる、不要な情報は消す・減らす、以上ですね。

ただこれは俺の言いたいこと、考えていることの一割にも満たないのです(過言か?)

なので今回の記事ではその続きを書きます。

前回の補足

続きを書くとか言いつついきなり補足な訳ですけど、前回の記事では情報を伝える時の、伝わりやすくする工夫を書きました。電気で例えると、電気が伝わりやすくなるよう抵抗を減らす工夫ですね。

なぜ先に抵抗を減らす工夫を書いたのかを説明しますと、そもそも物語とは情報の塊なわけで、必要最低限の情報はある訳です。ここから不要な情報を減らし、より伝わりやすく工夫することで、読者に情報を届けるという目的は達成出来てしまっているのですね。

この時点で面白さはある程度確保出来ている訳です。

しかし抵抗を減らす工夫をする前の、元の物語がもっと面白ければ、当然ながらより作品は面白くなるので、今回はその辺を掘り下げていきましょう。

「面白さ≠突飛さ」

面白い物語を書こうとする時、間違った工夫として突飛(とっぴ)なストーリーや設定を書く方がいますが、「面白さ」と「突飛さ」は実は不等号です。

「面白さ≠突飛さ」なのです。

おいおいおい、ふざけんなよ、世の中のおもしれー作品は突飛なやつばっかだろうが! おおん!?

という声が聞こえますが、まあまあ話を聞いて下さい。

まず「面白さ」とは、情報が脳に届くことで生じる「情報欲」が満たされる快楽なのですが、突飛な話は脳に届きにくいのです。つまり分かりにくい。そして分かりにくいと面白くない。

ではなぜ世の中の作品の「突飛さ」が目につくのかと言うと、これは一言では説明が難しいので段階を踏みましょう。

「突飛さ」とは?

そもそも突飛さとは、「ぶっ飛んでいる」ことですね。誰も思いつかないような設定、珍しいもの、真新しいもののことです。

しかしこれらは単体でいきなり出されてもつまらないのです。

なぜなら突飛であるがゆえに、意味が分からないので脳に届かない。

しかし段階を踏むことで「突飛さ」は「面白さ」に届きます。この段階とは一体何か?

それは「説明」です。

「突飛さ」を成立させる「何か」

まず結論から言うと、面白い作品の「突飛さ」は実は突飛ではないんです。きちんとした「何か」に立脚している。

この「何か」というのは「現実」とか、身近に感じるもの、当たり前のもののことです。これは必ずしも現実に存在するものでなくても構いません。

例えば「魔法」ってありますよね。魔法は現実に存在しませんが、創作の世界では結構当たり前に使われてます。超能力とか、別の言葉に置き換えてもいいです。

つまり手垢のついた、使い古された概念であれば現実に存在しなくても、「突飛さ」を成立させる「何か」になりえます。

この「何か」を土台にして「突飛さ」を成立させる訳ですが、この成立させる方法が「説明」なのです。

「説明」とは?

「説明」とは、ぶっちゃけると設定説明のことなのですが、ただ設定の羅列をしてもクソつまんないです。

しかし「突飛さ」を成立させるには「説明」が不可欠なのです。

この「説明」とは、ただ設定をそのまま文章にするのではなく、物語にしたもののことを指します。

つまり出来事を発生させつつ、さりげなく読者に設定を提示するのですね。これは作者の手腕が問われますが、本題では無いので割愛します。

「突飛さ」という積み木のてっぺん

そろそろまとめに入ります。

「突飛さ」は積み木に例えると、てっぺんにある三角形のパーツです。

このてっぺんにあるものは目立ちますが、実はその下にそれを支える土台が当然存在しますが、目立ちません。地味なのです。

土台とは、読者が比較的当然に知っている概念のことです。先ほど説明した「何か」のことですね。仮に「魔法」としましょうか。

「魔法」という概念を土台にして、例えば「魔法学校」とかを考えます。

魔法学校には魔法先生がいたり魔法生物がいたり、魔法の授業があります。これらの設定を「説明」することで、読者は「魔法学校」というてっぺんの積み木を認識します。

これがてっぺんの積み木の正体、つまり「突飛さ」な訳です。

かなり簡略化した説明なので、このままでは納得がいかなそうですが、本題は別にあるのでちょっと勘弁して下さい。

次でラストです。

「突飛さ」が面白い理由

ここで一番初めの、大量の情報をいっぺんに読者の脳に叩き込むことこそが「面白さ」の肝であることを思い出してください。

きちんとした土台を持つ「突飛さ」を読者に提示すると、一体何が起こるのか。

それは「突飛さ」を核として、今まで「土台」を元にした「説明」が一気に読者の頭に一瞬で思い浮かぶのです。

これは非常に多い情報なのですが、人はきちんとした繋がりを持つ情報なら一気に頭に思い浮かぶという性質を持っていて、これが脳の情報欲をかなり刺激します。

おわかり頂けたでしょうか。

つまりきちんとした説明を、それも読者を深く強く納得させるだけの説明をすることで、あとはてっぺんの積み木をちょちょいと刺激してやれば、読者の脳は快楽を、つまり「面白い」と感じる訳です。

これが「突飛さ」が目につく理由であり「面白さ」の理由という訳ですね。

あとはこの方式を利用して物語を書くだけです。じゃんじゃん面白い話を書ききましょう。

まず土台を用意して、その土台を元に設定を考えます。設定を考えたらそれを読者に説明して支柱を作り上げます。その支柱を使って、てっぺんに突飛な「何か」を乗せます。

ここまで出来ればもうこちらのものです。その「何か」を使って物語を縦横無尽に暴れさせましょう。

これが上手くいけば、読者はもうあなたの手の平の上。面白い作品の出来上がりです。

※ちなみにこれはあくまでも、面白さの「原理」の説明であって、具体的にこうしたら面白い作品が書けますよというアドバイスではありません。設定を考える際の指針・参考にして下さい。我ながら言い訳がましいですね。

以上で今回の記事を終わります。お疲れ様でした。

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