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おもてなしの原点とは

「おもてなし」の語源については、諸説ありますが、その一つについて、聖徳太子が制定されたとされる、十七条憲法に源流があるのでは、とも言われています。

十七条憲法の第1条には、かの有名な「和をもって尊しとなす」という条文があります。この「もって」「なす」の文字が、「もてなす」という言葉に発展したのではと言われています。

それぞれの言葉の意味としては、「〜をもって」=「〜を働きかけ」、「〜となす」=「〜という状況をつくる」です。

その後、平安時代から茶道の文化が醸成されていくにつれて、茶道の作法や考え方に基づいて、相手に対する気遣いや心配りを表現するという考え方が、日本独特のおもてなし文化を作っていったと言われています。

また、他にも、おもてなし=「表なし」、すなわち、表裏のない心で、表面的ではなく本心で相手を気遣う、という語源もあるようです。面白いですよね。

「利休七則」とは

安土桃山時代、現在の茶道の原形を作った千利休が「(茶道で)人をもてなすときは、こんな考え方と作法を大事にしましょう」と説いた7つの教えがあります。この「利休七則」の教えが、「おもてなし」の考え方を体系的に発展させました。

7つの教えそれぞれを、要約してみたいと思います。※あくまで要約であり、本来はそれぞれに深い意味合いがあることをご理解ください。

1. 茶は服のよきように

「服」とは、飲むこと。ここで言う「服のよきように」とは、飲んだ人にとって「調度良い加減」になるように点(た)てましょう、という意味。つまり、相手にとって、心地よくなるよう、配慮をしましょうという意味合いです。

このように茶道を志す者へ向けたメッセージが、茶の湯を極めた千利休の視点で言語化されています。以下、あと6つ、言葉の意味だけハイライトでご紹介します。

2. 炭は湯の沸くように

「炭」とは、茶釜に火をつけるための木炭。うまく湯を沸すには、最初の火の調節(炭の置き方・下準備)がとても重要であるという意味。

3. 夏は涼しく、冬は暖かに

季節感を大切にし、表現しようと言う意味。物理的に涼しくしたり、暖かくしたりするだけでなく、例えば、部屋に暖色・寒色を使うなど工夫して演出しよう、と言う意味でもあります。

4. 花は野にあるように活け

花を活ける時は、野原に咲いているように感じさせるようにしよう、という意味。つまり、物事を表現するときは、その本質を知った上で表現しようという意味。

5. 刻限は早めに

「刻限」とは、時刻に対する意識・認識のこと。これらを大切に、平常心でゆとりを持ってもてなしをしよう、の意味。

6. 降らずとも雨の用意

晴れた日にも、傘を持って行くように、不測の事態を想定し、準備を万全にしておこうと言う意味。

7. 相客に心せよ

茶席で同じ場所に居合わせたら、お互いに気を配り、思いやる心を持ちましょう、の意味。

これらの文脈から、千利休の言う「おもてなし」とは、事前準備である「しつらえ」をして心にゆとりを持ち、心をもって相手を想うすこと、だと読み取れます。

僕は、このように時代と共に脈々と受け継がれてきた、日本の素晴らしいおもてなしの心を、人材育成や組織開発事業を通じて、現代や未来に反映させることに貢献させてもらえたらと考えています。

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