ドストエフスキーのポリフォニーを可能にしたもの
ドストエフスキーの小説においては、登場人物の言動も作中の物事も非常にダイナミックに動乱しているが、そのダイナミズムを可能にした創作の手法は、ミハイル・バフチンの言うように「ポリフォニー」にある。ポリフォニーは「多声音楽」を意味する音楽用語であるが、ドストエフスキーの小説の登場人物が非常によく喋り、ときには2~3ページにわたる長広舌をまくしたて、それが2人の対話においてだけではなく多人数が居合わせる場面でも為されることから、複数人の「声」の織り成す作品と特徴づけることは可能であ