観戦記:そうざいさんvsこまちさん
この頃は暑い日が続きますが、指す将順位戦7thでは熱い対局が続いています。特に第4節のそうざいさんvsこまちさんの対局カードはなかなかに熱いもので、私にとって注目局でした。(棋譜再生)
開幕4連勝を賭けた1局
A2リーグは結構な猛者揃いですが、開幕前に私が昇級候補として名を挙げたのは、第1に前期A1のにっし~さん、第2にこまちさんでした。
しかし実のところ、第2に挙げたこまちさんの名前は、換えてそうざいさんにするか悩んでいたものです。お二人にはそれだけの実力があると考えていました。
にっし~さんが第3局でスーパーヤギさんに黒星を喫することとなり、第3局終了時点で3戦全勝が上記のお二人となり、さらに第4局で直接対決となれば注目せざるを得ません。
勝った方がリーグ唯一の開幕4連勝です。
先手、意表を突く三間飛車(オープン型)
対局が始まった瞬間というのはなかなか観戦するのが難しいものですが、棋譜を見ると先手番となったそうざいさんの初手は▲7八飛。
居飛車メインながら振飛車も指しこなすオールラウンダーのそうざいさんなので何が出てきてもおかしくないとはいえ、なかなか予想しずらい立ち上がりとなりました。
さらに、角道を開けた後手に対して角交換を受けない先手そうざいさん。なかなか見ない形だと思うのですが、こまちさんが時間を使う様子もなく、私の見識が狭いだけなのでしょうか。
ちなみにこの形を私なりに調べてみたところ、△7七角成に▲同桂としておいて、△4五角には▲6五桂から十分戦える模様。(参考図)
ただ後手が△4五角を打たずにじっと駒組みした場合は、7七に跳ねた桂の扱いが難しいので、その構想がなければ採用するのも難しいという印象です。
本譜はしばらく頑なに角交換に備える手を指さないそうざいさんでしたが、両者そんな変化など気にしないかのようなハイペースで指し手が進みます。
17手目でようやく▲8八銀とあがり、結局△7七角成▲同桂の形は現れませんでした。
後手、角を自陣に設置する
後手が動かないので先手は自ら角交換をし、7筋の歩も交換して7六の好位置に飛車を据えました。
対して後手は堂々と駒組みを進め、玉頭の位を取ります。
このあたり、位取りの好き嫌いはあるとしても形勢に差はないところでしょう。
6筋で互いの銀が睨みあったところで、後手は自陣に角を放ちました。先手の飛車と逆サイドの1筋を睨む角で、この角が働くかどうかが本局の形勢に大きく関わってきそうです。
捌ける
狙われた飛車を7七に引いたあと、観戦中の私は▲5七銀~▲4六銀で3五の歩を狙っていったりするのかなと考えていましたが、どうもそうざいさんの構想は違うようです。
▲4六歩と玉のコビンを緩和しておいてからシンプルに銀をぶつけていきました。
勝負どころと思われるこの局面、こまちさんの次の手がとても明るい手でした。
この手を自然に指せるのがこまちさんの恐ろしいところでしょう。悲しいことに私は指されるまで見えていませんでした。
数手進んで、銀交換から8六に飛車を走ると、角の働きも良く後手のほうが調子の良い雰囲気です。
攻めかかる先手、受けとめる後手
先の図から△6六飛を予想していたので、△8四飛はやや消極的な印象でした。それもこまちさんの棋風というところかもしれません。
対して、ここから先手そうざいさんが攻めかかります。
いろいろ味をつけて▲5三歩が入った局面では、後手が少しでも受けを間違えれば一気に先手に持っていかれる可能性が感じられます。
6二角を警戒して△同金左の後手。対して先手は▲7七桂から左桂を活用して5三を狙っていく。すると後手は△5四金と立って5三の当たりを避ける……。白熱の攻防です。
そして勝負手と見える▲4一銀の放り込み。この銀があっさり取られてしまうようでは先手が攻めきれないでしょう。
△4二金に他の変化もあったかもしれませんが、本譜▲5一角から数手進んで……先手に馬を作らせたものの後手は4一の銀を取ることに成功しました。
手厚いのに安心できない後手陣
駒得を果たした後手は△4六歩から手厚い陣形にまとめていきます。
一方先手は遊んでいる左金を引き付け、飛車を8筋から成りこみ攻めの体勢を崩しません。
いろいろあって次の図、後手の飛角金銀が豪華な防御壁を築いていますが……。
よく見ると4三の角と4一の金を支えているのは3二の銀1枚で、どうにも安心できない後手。▲6四桂からしがみつかれます。
優勢に見えてもなかなか安心できない後手ですが、▲7二龍の局面はもう飛車を逃げる余裕はないというところに来ています。ついに後手が攻める時です。
きわどい終盤
△5六歩~△4七金で攻めかかる後手ですが、△3六歩とした図は間に合うのかどうかきわどい形勢に見えます。
2枚飛車を設置する先手、寄せに行く後手。
難しい終盤戦ですが、上部が手厚い分、基本的には後手に分のある戦いで、大きく間違えなければ、というところ。
図の3七歩はぼんやりとしていて、詰めろかどうかもよくわからないですが、振り返ってみると手持ちの駒が少ない中で確実に寄せきる好手だったと思います。
受けが利かなくなり、後手玉に詰みもなく先手投了となりました。
幻のそうざいマジック
本局、全体としてはこまちさんの受け止める技術がそうざいさんの切り込む技術を上回っての勝利といった印象です。
中盤以降はずっとこまちさんが優勢だった……はずですが、KENTOに棋譜を流してみると終盤で一瞬だけ先手に評価値が振れる局面がありました。
それで先手が勝ちというわけでもなさそうですが、最終盤まで難解な局面にもっていったのはそうざいさんの力でしょう。
3連勝同士の対決にふさわしい、見応えのある一局だったと思います。
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