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変革期を乗り越えるリーンで柔軟な組織を作るために①~コアコンピタンスの再定義と事業ポートフォリオの再設計~

事業ポートフォリオ再設計の困難さ

事業ポートフォリオの設計・見直しは難しい。なぜなら、不確定要素の多い状況下で様々なことを考慮し、検討して最終的に決断をしなければならないからだ。特に現在のような10年に一度の、あるいは50年に一度かもしれないが、非常に大きな変革期においては、特定の産業の魅力度のとらえ方自体を大きく変える必要がある。また、実行フェーズにおいても、結局のところ選択と集中を行うので万人が納得できるようなやり方は無い。別の言い方をすると、組織・グループ内の誰か、あるいは特定の部署が必ず合理化される。リソース・アロケーション(人員と予算)の最適化によって成長戦略を描くことで、社内・グループ内で完結出来ればベストではあるが、やはり一般的には人員整理、外部への事業・法人の売却、会社の清算等が行われる事が多い。当然に反発が生じるし、丁寧に進めないと法的リスクも高まる。
今日は、コロナのパンデミックによって多くの会社・グループが迫られているであろう事業ポートフォリオの見直しとその前提になるコア・コンピタンスの再定義について書いていきたいと思う。ただし、壊滅的なダメージを受けている業界は対象から除く。代表的な例が航空業界だ。観光産業の面が大きく、固定費負担も非常に大きい典型例である航空業界は、2020年8月時点では自力での巻き返しが相当程度困難であると私は考えている。運営する事業数も多くなく、ポートフォリオの見直しではどうにもならないと考えられる業界は、今までにないようなタイムラインの中でもっと根本的でドラスティックな改革が必要になるためだ。
ちなみにJALは四半期ベースの業績で見ると、2009年4月~6月期の連結決算における990億円の赤字に匹敵する937億円の赤字を2020年4月~6月期で計上している。ANAも同期で1,088億円の赤字だ。売上高はJAL、ANAそれぞれ763億円(昨対比▲75.7%)、1,216億円(昨対比▲78.1%)だ。このあたりの構造と今後の同業界において生じるであろう変化について別の機会に詳細を検討したい。

コア・コンピタンスの再定義

まず、アプローチとしては典型的だが自社のコア・コンピタンスを再定義する必要がある。本Noteを読んで頂いている方にとっては釈迦に説法かもしれないが、コア・コンピタンスとは「他社には容易に真似できない持続的な競争優位の源泉」のことをいう。シンプルに表現すると「ある企業・企業群の中核となる強み」だ。例えば、特定の高度なエンジニアリング技術等が挙げられる。教科書的だが富士フィルムの超微細粒子・コラーゲン制御などの高機能材料分野の技術等はコア・コンピタンスと呼べるものであり、このコア・コンピタンスを生かして新規事業であるライフ・サイエンス部門にリソース・アロケーションを行い、今日ではパネル・ディスプレイや内視鏡などの医療用機器にも応用している。
特定の産業自体が破壊され兼ねないくらいのインパクトを受けているこのタイミングで、各企業・事業は今後の勝ち残りをかけてコア・コンピタンスを改めて考え、持続的で模倣が困難なコア・コンピタンスを中心に事業を展開していくことが重要だ。
ところで、タイトルに書いた「リーン」であることと「柔軟」な組織であることは両立が難しいと考える。リーンであることは筋肉質な組織を作ることであり、余剰資源を出来るだけ少なくして最小限のインプットで、アウトプットを最大化するという事だ。一方で、柔軟な組織とは会社・グループにある程度変化のための余力を残しておく、つまりは余剰資源をある程度保っておく必要がある。少し見方を変えると、既存事業の無駄を排除して改良的イノベーションを起こし続けながら、一方で新規事業に投資をしながら破壊的イノベーションを模索するという事だ。これらの一見相容れない考え方を両立する事こそが今後の競争を勝ち抜く源泉になると考える。ただ結局のところ、破壊的イノベーションを目指して新規事業に投資しようとしても、投資の源泉である(健全な投資を行うための)短期的な営業キャッシュ・フローがある程度潤沢になければ新規投資を継続することは困難だ。
上記、航空業界のように著しく大きな影響を受けている業界を今回の対象から除いているのは上記の観点からである。

今回は一旦ここまでとして、次回はもう少し具体的な内容を書いていきたいと思う。読んで頂いてありがとうございます。m(__)m

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