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内閣府、液状化被害に対する被害認定基準を見直しへ【塩川鉄也の国会質問ピックアップ】

2011年に発生した東日本大震災は、深刻な液状化被害をもたらしました。
国土交通省の集計によれば、住家被害件数は、全国で2万6914件に及びます。
液状化で家が傾いてしまうと、めまい、頭痛、吐き気、睡眠障害などの健康被害が生じることが分かっています。とても住み続けられる状態ではありません。
しかし、当時の被害認定基準は、液状化被害に十分対応したものとなっておらず、液状化で傾斜しながらも原型をとどめる住宅は、半壊や大規模半壊の対象となっていませんでした。
そのため、被災住宅へ最大300万円の支援を行う被災者生活再建支援法をはじめ、災害救助法や義援金制度など、各種の被災者支援制度の利用ができない状態でした。

「被害実態にあった、早急な基準の見直しを」

塩川議員は、発災直後から、繰り返し、被災者支援策の重要な要件となっている被害認定基準の見直しを求めました。

政府は、質問を受けて、2011年5月に被害認定基準を改正。
新しい基準では、住家四隅の傾斜の平均が100分の1(100センチの垂直高さに対して1センチの水平方向のずれ)以上であれば半壊とみなすなど救済対象が拡大されました。
被災者と市民の声、被災自治体関係者の努力、国会での追及によって、発災から2か月以内に、認定基準改正が実現しました。

<2011年4月5日衆院総務委員会より抜粋>
【塩川議員】
地盤の液状化による被害についてお尋ねいたします。
今回の大震災で、各地で地盤の液状化による家屋損壊が生じております。
家が傾いている、この傾きを直すだけでも、ジャッキアップだけでも500万円はかかるとか、地下にある配管の補修などを行えば1000万円を超えるような費用がかかると言われているわけであります。
この液状化の被害認定とのかかわりで、罹災証明書発行の基準となる住家の被害認定について何点かお尋ねをいたします。
罹災証明書は、被災者生活再建支援制度を初めとする各種の被災者生活支援制度において、適用の判断材料となっております。そのため、住家の被害認定は被災者生活支援において重要な要件となっているわけであります。
この液状化による家屋の地盤被害に対する被害認定がどのようになっているのか、そのスキームについてお尋ねしたいのと、あわせて、過去、液状化による全壊などの被害認定の事例と件数がどのようになっているのかについてお尋ねをいたします。

【長谷川内閣府大臣官房審議官】
地盤の液状化が原因となりまして住宅の主要な構成要素に損傷が生じているかどうかという観点から、一つといたしまして、外観による判定として、地盤の液状化等により基礎の一部が全部破壊されているかどうかという調査、二つ目といたしまして、傾斜による判定として、住宅の四隅の傾斜を計測いたしまして一定以上であるかどうかの調査、三つ目といたしまして、部位による判定として、基礎等の損傷を把握し、これを含めまして住宅全体の損傷割合を算定するという調査、これらをすることによりまして住宅の被害の程度を判定するという仕組みになってございます。
それから、過去の地盤の液状化による事例でございますけれども、地盤の液状化が原因となって全壊と判定された事例といたしましては、具体的に、中越地震の際に、地盤の液状化により住宅が二十分の一以上傾斜した例などが数件あったというふうにお聞きしております。

【塩川議員】
いろいろな被害認定のスキームについての御説明がありました。ただ、過去、液状化による全壊等の被害認定の事例と件数というのはほとんどないということが実態であります。
今回は広範囲に及んでいるという点でも、被害認定の実態に見合ったような要件緩和や、あるいは新たな制度の創設も含めて検討すべきときにあると思います。
この被害認定の事例としてお話しになりました、例えば、地盤の液状化により基礎のいずれかの辺が全部破壊をするとか、あるいは外壁または柱の傾斜が二十分の一以上という事例は、実際に当てはめてみてもほとんどないということになるわけですね。
しかし、例えば浦安市の方などのお話でも、実際には、四十分の一ぐらいの傾きであっても寝ることすらできないような状況になるわけですね。家の中で酔っているような雰囲気にならざるを得ないのが家の傾きの問題ですから、とても住める状況にないという被災者の声がございます。
ですから、液状化に係る住家の被害認定について、認定要件の緩和を含めた見直しをする必要があるんじゃないのか。実態に即した対応を今行ってもらいたい。内閣府としての考えを聞かせてください。

【長谷川内閣府大臣官房審議官】
現時点におきましては、さらなる改定の必要があるというふうには必ずしも考えていないというところでございます。

【塩川議員】
それぞれの自治体が調査をする中で、なかなか現場と合わないような事例というのは聞いているわけですけれども、基本は、住み続けることができない状態ならば、それはもう全壊ということなんですよね。そういう観点で対応することこそ必要です。
その点で重ねてお尋ねしますけれども、地域の被災状況を踏まえ、被災者支援の立場で行う各自治体の被害認定をしっかりと尊重するということで対応していただきたいと思いますが、改めて、いかがでしょうか。

【長谷川内閣府大臣官房審議官】
地盤ではございませんが、今回の津波の被害等につきましては、例えば、なるべく迅速かつ簡便に調査ができるようにというようなことも含めて、いろいろとお話を申し上げているところでございます。そういった意味で、地盤等につきましても、いろいろ御相談があれば適切に乗っていきたいというふうに思います。

この4月5日の質問の時点では、まだ被害認定基準の見直しについては考えていないとの答弁でした。
引き続き、政府を追及します。

<2011年4月15日衆院内閣委員会より抜粋>
【塩川議員】
液状化被害の問題についてお尋ねします。
4月12日に、東日本大震災による液状化被害者が多数に上る自治体の首長さんが要望書を国に出されました。「災害に係る住家の被害認定基準における液状化被害の取り扱いの明確化及び大幅な被害割合の追加をすること」などであります。
私も鹿嶋や神栖などの液状化被害の調査に行きましたが、深刻であります。どのように対応をしていくのか、お尋ねをいたします。

【松本龍防災担当大臣】
現実の基準が今回の地盤の液状化の実態にそぐわないという指摘もありますので、これから、家屋の状況を調査して、基準の見直し等も含めて勉強していきたいと思います。

松本内閣府防災担当大臣から、「被災者生活再建支援法の基準見直しも含めて勉強していく」との答弁。
2週間後に再度質問をします。

<2011年4月28日衆院総務委員会より抜粋>
【塩川議員】
4月15日、内閣委員会で、松本防災担当大臣は「基準の見直し等も含めて勉強していきたい」と答弁をいたしました。
東防災担当副大臣においでいただいております。東副大臣も、千葉県内の液状化被害地域の現地調査もされたとお聞きしております。どのような地域を調査され、現場でどのような感想をお持ちになったのかについてまずお聞かせいただけますか。

【東祥三内閣府防災担当副大臣】
千葉市、習志野市、浦安市、茨城県の潮来市、神栖市において現地調査を実施させていただいたところであります。
例えば、液状化による被害を受けた住宅の床が傾いてしまっている。御指摘のような被災者生活再建支援制度で、どれだけきちっとその部分を手当てすることができるのかということを痛感させていただきました。
液状化の被害というのは私どもが想像する以上に大きな被害を与えてしまっている、そういう感想を持ちました。

【塩川議員】
現場の実態をよくごらんいただいていることと思います。
きょうのお昼のNHKニュースで松本防災担当大臣が、液状化の被害は、住宅の修復だけの問題でなく健康被害にもつながるので、見直す方向で努力していると述べ、基準の見直しを五月初めに行う方針との報道でございました。
被害認定の基準の見直しなど、どのように対応されていくお考えなのか、その点についてお聞かせください。

【東内閣府防災担当副大臣】
被害認定の専門家及び学識経験者、さらにまた、医療関係といいますか健康関係に対して知見を有されている方々の意見を聞かせていただきまして、できるだけ早くこの基準見直しを決断したいというふうに思っております。

【塩川議員】
しっかりと、早急な基準の見直しをやっていただきたい。
そういう被害認定の見直しを含め、被災者生活再建支援制度の適用とあわせて、地盤被害そのものについてももう一歩踏み込んだ対応が必要だ、こういうこともあわせて求めておくものでございます。

この後、5月に、住家の被害認定基準が改正され、液状化被害で傾いた住宅も、大規模半壊、半壊とみなすようになり、救済の対象が拡大されました。

まとめ

毎年のように、地震、豪雨、火山、豪雪など自然災害が相次ぎ、日本全国どこでも、いつ甚大な被害を受けるか分からない状態です。
災害対策基本法の第3条では「国は・・国民の生命、身体および財産を災害から保護する責務を有する」と定めています。
防災対策を進めると共に、すべての被災者を対象にした生活と生業の再建、被災者の自立にむけた支援を国の責任でおこなうことが求められています。

「被災者に公的補償を!」と、阪神・淡路大震災被災者の粘り強い運動と世論の力で「被災者生活再建支援法」の創設を勝ち取るなど、被災者と市民のたたかいによって公的支援策の前進・拡充が切り開かれてきました。
液状化被害に対する被害認定基準の改正も、国を動かし、被災者支援を前進させた事例です。

少しずつ前進してきた被災者支援策ではありますが、例えば被災者生活再建支援法では、支援が最大300万円にとどまっており、生活や生業の再建にはまだまだ不十分なのが実態です。

すべての被災者を対象に、被災者の生活・生業の再建と自立した生活を取り戻す。支援制度がなければ新たにつくる。そのために国に責任を果たさせる。これからもこのような立場で、引き続き、被災者の方の要求を出発点に、支援策の拡充を目指していきます。<スタッフ>

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