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住宅地の液状化対策に新制度、個人負担の軽減を【塩川鉄也の国会質問ピックアップ】

被害認定基準の見直しにより、液状化被害をうけた住宅に対する被災者生活再建支援法による救済の対象は広がりました。しかし、傾きを直すだけでも500万円、地下の配管なども含めれば1000万円以上かかるとされる再建費用には遠く及びません。

「液状化被害からの復興と被害の再発防止のために、さらに踏み込んだ支援が必要だ」
制度がないなら新たな制度を作る必要があると、当時の菅直人総理に迫ります。

◆菅直人首相、住宅地の液状化対策、新制度の検討を表明

<2011年7月20日衆院予算委員会より抜粋>
【塩川議員】
地盤工学の学会であります地盤工学会が、東日本大震災の教訓と提言の案をこの六月で出し、今専門家の方々で練り上げる作業をしていると承知をしております。
この提言では国はインフラの液状化被害については一定程度対応してきたけれども、戸建て住宅については対応がおくれているということを取り上げております。
大畠大臣、この国の宅地液状化対策のおくれというのが今回の重大な被害の拡大につながったんじゃありませんか。お答えください。

【大畠章宏国土交通大臣】
確かに、私も香取市に参りましてその状況をつぶさに見て、実態というものを把握させていただきました。市長さんの話によりますと、液状化対策をやった団地といいますか宅地では被害が少なく、液状化対策が未対策のところで大きな被害があったという話を伺いました。
そういうことを考えますと、御指摘のように、個別の住宅に対する液状化対策に対する情報の提供あるいは対策というものがおくれたということは率直に私も認めたいと思います。

【塩川議員】
今お話ございましたように、液状化対策の手段はあるんです
しかし実態は、そういったことについての国の制度がないために、今回の広範な液状化の宅地被害につながっている、この点をどうするのかということが問われているわけであります。
負担が非常に大きいということも重大であります。液状化宅地被害については、ジャッキアップなどの対策、傾きを直すのにも500万円かかるとか言われていますし、地下の配管についても一連のものを直せば1000万円とか言われている。こういう大きな負担について、しっかりとした公的な支援策こそ必要だ。
総理に伺いますが、宅地の液状化被害に対して直接の公的な支援制度をしっかりと設けるべきだ、このことこそ行うべきだということを強く求めたい。

【菅直人総理大臣】
将来の震災などを考えますと、この液状化は、予防的な措置が重要だとも思っております。個人の家の対応については新たな制度を含めて検討が必要だ、そう考えております。

菅総理は「新たな制度を含めて検討が必要だ」と新制度の検討の必要性を初めて表明しました。
この後、政府は、地盤強化対策を宅地敷地の一部まで広げる「液状化対策推進事業」を開始します。

しかし、この制度でも、個人負担が多く発生することが判明。
発災から約1年たった、2012年2月24日に行われた衆院予算委員会公聴会でも、被災自治体の長から「液状化対策推進事業は宅地所有者の費用負担が重い」「半壊以上の被害が3600棟。今なお苦しんでいる方がいる」「修繕には建て替えに近い額がかかる」など、健康被害や財政負担問題について意見が出されました。
こうした声を国会に届け、制度の改善を求めました。

◆個人負担の軽減が液状化対策を進めるポイント

<2012年2月29日衆院予算委員会>
【塩川議員】
液状化地盤の復旧費用というのは、工法によっていろいろ変わりますけれども、家屋の復旧や外構の復旧費などを加えるとやはり1000万円を超える。家を建てかえるに近い額がかかると言われております。
こういう液状化被害に対して、復興交付金の液状化対策推進事業が創設をされたわけです。
しかしながら、被災自治体の市長さんからは、使い勝手が悪いという厳しい批判のお言葉がありました。
松崎浦安市長は、事業化に向けては、宅地所有者の費用負担が大きく、関係権利者の合意形成の面で大きな課題があることも明らかになったと述べ、実現可能性の低い事業だと。
そこで、平野大臣にお尋ねしますけれども、こういった被災者の方の負担についてどのように軽減を図っていくのか。
例えば効果促進事業というのはきちんと使えないんでしょうか。あるいは、取り崩し型の復興基金とか災害救助法の住宅応急修理などについても、これを柔軟に活用して費用負担の軽減のために充てるとか、こういう取り組みで、合わせわざで、この負担軽減策というのはもっと国として知恵を出して、提案もしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

【平野達男復興大臣】
復興交付金の中の効果促進事業という部分につきましては、個人の財産に係るさまざまな助成というものは、これは原則やらないということで考えております。
液状化につきましては、できるだけ個人の負担にならないように、その制度の適用の範囲を広げております。それから、先ほど申し上げた融資制度等、こういったものを活用していただきたいということです。

【塩川議員】
効果促進事業について、個人の財産に係る助成はやらない、そこがそもそも問題だという声がたくさん上がっているわけですよ。そういう枠をはめるために、被災者の復興、被災者の生活再建ができないのでは、そもそも制度そのものの意味がないということであります。ここのところこそ見直すべきだ。
この液状化対策推進事業も、公共について液状化対策を行う、その際に、当然、接する民地部分も液状化対策をやらなければ、公共部分の液状化対策も意味をなしませんねという趣旨で行われるわけですよね。
ですから、所有者について一部の負担を求めるけれども、公共の部分と民地の部分と一体的にやるというのがこの事業であるわけです。もし、個人負担が大きいためにこういった事業に手を挙げられないような被災者が多ければ、公共部分の液状化対策も進まないという結果になるんじゃありませんか。
そういう点でも、個人負担をいかに軽減するかというのは、この事業そのものを成り立たせる、公共の液状化対策をきちんと進めていく、その一番のポイントになると思うんですが、この立場で負担軽減策、改めて考えるべきじゃありませんか。

【平野達男復興大臣】
できるだけ個人の負担が過重なものにならないように、このことについては最大限努力をしなければならないというふうに思っております。
個々のケースの状況に応じて、ここの部分までは助成対象になる、事業の対象範囲になる、こういったもののやりとりというのは十分可能だというふうに思います。

まとめ

液状化による住宅被害については、大畠国交大臣が答えているように国の対策が遅れたことが被害拡大の要因となりました。
市街地での液状化対策を進めるには、道路など公共部分だけでなく、宅地の対策を進めることが不可欠です。そのために新制度を作ったのに、個人負担が大きすぎて使えないというのでは、国の責任を果たしているとは言えません。
この液状化被害だけでなく、他の災害でも、政府は「個人の財産に係る助成は、原則やらない」と答えますが、その壁を動かしてきたのが、この間の被災者と市民の運動です。
「被災者に公的補償を!」と、阪神・淡路大震災被災者の粘り強い運動と世論の力で「被災者生活再建支援法」は創設され、その後も、被災者と市民のたたかいによって公的支援策の前進、拡充が切り開かれてきました。
直近では、2020年12月に施行された改正被災者生活再建支援法では、これまで対象外だった半壊世帯の一部にも、最大100万円の支援が行われるようになりました。

引き続き、すべての被災者を対象に、被災者の生活・生業の再建と自立した生活を取り戻す。支援制度がなければ新たにつくる。こういう立場で、被災者の方の要求を出発点に取り組んで参ります。<スタッフ>

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