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海外動向 7/24〜7/30

当研究所では、ケーブル業界の独自の視点で放送・通信・メディア等に関する海外動向の調査・分析を行っております。このノートでは、おもに海外で一般に公開されたニュースや企業からの発信情報をもとに興味深いものをご紹介します。



◆ 今週の重要トピック

米国ではケーブル事業者が厳しい状況に陥っています。テレビ加入者は四半期ごとに40万世帯以上の減少を続け、これまで業績を引っ張ってきた固定ネットも昨年の第4四半期から減少に転じました。今後はさらに悪くなるという予測もあります。競合となるモバイル事業者はFWAで攻勢をかけており、さらに光ファイバーを用いた固定ネット事業を強化。モバイルを新たな成長ドライバーと位置付けるケーブル業界と、まさに真っ向からぶつかっています。

◆ 業界動向

Comcast、第2四半期に固定ネットは12万世帯、テレビは41万9000世帯の減少

加入者数の減少がテレビだけでなく固定ネットでも続いています。配信サービスのPeacockは1年前と比べると加入者が38%増加したものの、直前の第1四半期は3400万だったものが第2四半期は3300万に減少。一方、Peacock事業の損失は3億4800万ドルで、1年前の6億5100万ドル、第1四半期の6億3900万ドルから改善しています。モバイルは第2四半期に32万2000増となり、前年同期比20%増の720万人となりました。

Charter、第2四半期に固定ネットは14万9000世帯、テレビは40万8000世帯の減少

固定ネットは2023年第4四半期から3期連続で減少となりました。四半期末時点での固定ネットの加入者数は3036万世帯です。Charterによれば低所得世帯に向けた固定ネットの援助プログラムACP(Affordable Connectivity Program)が終了した影響が大きく、解約のうち10万世帯がこれに該当するということです。ACPによる解約は第3四半期以降、さらに大きくなると言われています。テレビ契約世帯は前年同期が20万世帯の減少でしたので、減少数が2倍以上に増えています。四半期末時点での契約者数は1309万世帯となりました。Charterの成長エンジンになっているのはモバイルで、第2四半期は55万7000契約の増加。前年同期は64万8000増でしたので、これは下回ったものの第1四半期は47万3000増でしたのでまずは順調な推移といえます。総数は880万契約となりました。

固定ネット援助プログラム終了の影響はCharterのほうがComcastより4倍大きい

米国政府による低所得世帯に向けた固定ネットの援助プログラムACP(Affordable Connectivity Program)終了の影響を分析しています。CharterにはACPにより援助を受けている契約が500万世帯あり、これはComcastの4倍だということです。Comcastも第2四半期に12万世帯の固定ネット加入者を失っていますが、同社のCFOによれば「予想よりは良かった」。これに対しアナリストはACPの影響が少なかったことが要因だと分析しています。もっともこれは第2四半期までで、CFOによれば「ACP終了の影響は第3四半期に大半が発生する」とコメントしています。

英国BT、4月から6月の3ヶ月間で光ファイバーベースの固定ネットが38万7000世帯の増加

1年前の同時期と比べ29%の増加で合計は500万世帯を突破、提供可能世帯は1500万に達したということです。

Disney+とHulu、Maxのバンドルが登場、広告付きプランが月額16.99ドル

広告なしだと29.99ドルとなります。個々に契約すると広告付きが25.97ドル、なしが47.97ドルですので、35%以上の割引率となります。なお、1契約で同時に視聴できるデバイス数や配信フォーマットなどは現時点では非公表のようです。

Verizon、特定のプランを契約したユーザーにNFLのサンデーチケットを無料提供

モバイルの新規契約でプレミアム無制限プランに加入、無制限プラスなどのオプションを追加といった条件がついています。FWAの一部のプランも対象になるようです。試合は2024-25年シーズンが対象でYouTubeで視聴、通常は449ドルかかるものが無料となります。

NBAの放映権はDisney、NBCUniversal、Amazonへ、ワーナーは対抗措置を表明

2025-26年シーズンから11年契約で総額760億ドルと言われています。NBAは7月16日にこの決定を下し、その後、22日にワーナーが「マッチング権」と呼ばれる権利を行使しAmazonと同額を提示、NBAがどういった最終判断を下すのかに注目が集まっていました。この権利はワーナーがAmazonと同一の(マッチした)条件を提示すれば、ワーナー側が放映権を獲得できるというもののようです。ただNBA側の判断は「該当しない」。根拠として挙げているのが「マッチング権を行使できるのは音声と映像を組み合わせた特定の配信形態に限る」という契約条項。今回のケースではワーナーが放送、Amazonは配信ですので、これに該当しないというのがNBA側の主張のようです。対してワーナーは反発しており「契約上の権利を著しく誤解しており、適切な措置をとる」と表明しています。

ワーナーがNBAを提訴、20日以内の返答を求める

2025-26年シーズン以降の放映権の契約でワーナーのオファーを断りAmazonと契約したのは契約違反だとしています。ワーナーとNBAの間には「NBAがワーナーに対して受け入れる機会を与えることなく(つまり競合=Amazonとの同額を提示する機会を与えるという意味合い)、NBAはいかなる第三者とも契約や合意を結んではならない」という契約を根拠にしています。これを「マッチング権」と呼ぶようです。もっともNBA側はマッチング権の対象外という主張であり、両社の争点は噛み合っていません。そもそも、この契約は2014年に取り交わされており、当時は配信サービスがここまで台頭していませんでしたので、契約の記述が合っていない可能性もあると思います。

◆ インフラ

OECDによるブロードバンド調査、固定ネットの42%を光ファイバー接続が占める

OECD加盟国を対象にした2023年末時点の調査結果です。前年は38%でした。光ファイバー接続のシェアがもっとも高いのは韓国で89.6%、続いてアイスランド 89%、スペイン 86%、リトアニア 80%、日本 79%となっています。モバイル・ブロードバンドも2019年の15億6000万契約から2023年には18億6000万契約と19%増加しています。人口100人あたりの契約数がもっとも多いのは日本で203.5契約、次いで米国が190契約です。FWAは人口密度の低い地域で台頭してきており、チェコでは普及率が39%に達しています。これに続くのがスロバキア 23%、ニュージーランド 19%、エストニア 18%となっています。

Verizon、第2四半期にFWAが37万8000世帯の増加

1年間で69%増加し380万世帯となりました。固定ネットを含むブロードバンド全体では17.2%増の1150万世帯です。第2四半期のFWA関連の売上は5億1400万ドルで前年同期と比べて2億ドル以上増加しています。FWAの内訳を見ると、一般家庭向けが前年同期は25万1000増だったのに対し、今期は21万8000増と減少しています。一方、法人向けは13万3000増から16万増へ。つまり一般家庭向けの減少分を法人向けが補っている形です。固定ネットも今期1万3000増ですので、自社顧客の固定ネットからFWAへの転換を図っているわけでもなさそうです。

AT&T、第2四半期に光ファイバー接続の固定ネットが23万9000世帯の増加

固定ネットとモバイルをセットで販売する「convergence opportunity」という施策を推し進めており、固定ネット加入者の39.5%を占めるまで増加したということです。ただこの記事では、この施策がもっとも機能するのはケーブル事業者であり、AT&Tが推進していることに対し懐疑的な見方を示しています。

T-Mobileが光ファイバーによる固定ネットを提供するISPを49億ドルで買収

T-Mobileと投資会社KKRが共同で設立しているジョイントベンチャーを通じてMetronetの株式50%を取得する計画です。Metronetは全米17州で200万世帯以上に光ファイバーベースの固定ネットを提供しています。T-Mobileは4月にも光ファイバーベースのISPであるLumos Networksを買収しており、固定ネット事業の強化を推し進めています。

LGI、英国・固定ネット事業で卸売を展開する背景

LGIとTelefonicaが共同で保有する英国のテレコムVirgine Media O2(VMO2)は、ファイバーベースの固定ネット網を建設・運用する事業を「NetCo」として分離します。NetCoは2025年上半期からVMO2以外のISPにも回線を卸売する計画で、その計画の背景などをCEOがコメントしています。

NetCoが引き継ぐVMO2のファイバー網は1600万世帯をカバー。また、これとは別にLGI、Telefonica、InfraVia Capital Partnersでジョイントベンチャーnexfibreを設立、VMO2がサービスを提供していない地域で最大700万世帯のカバーを目標にしています。このnexfibreとNetCoを統合し、英国のより広い地域で固定ネットの卸売とISP事業を展開していく計画です。

VMO2からNetCoを分離した背景も説明しています。ネットを顧客に販売する事業をServCo(ほぼISPという意味)と定義。NetCoは毎月、固定額が受け取れる卸売ビジネスにより、安定的で利益率の高いキャッシュフローを生み出すことができ、また回線の利用率が上がればキャッシュフローが改善され、それをネットワークへの投資に結びつけることができる。もう一方のServCoは、必然的に顧客体験を優先したビジネスモデルとなり、収益を改善するためのイノベーションが促進され、またISP同士の統合なども生まれやすくなるとしています。

Opensignalによる18カ国のブロードバンド実態調査

所得水準などが異なる18カ国でブロードバンドの信頼性や速度を調査しています。また、国ごとにUrban(都市部)とRural(地方・過疎地域)でどのような違いがあるかを分析しています。信頼性が高かったのはスウェーデン、ノルウェー、英国、カナダ、日本、米国で、低かったのはインドネシア、フィリピン、メキシコ、コロンビア、インド。信頼性をUrban/Ruralエリアでどれくらい違うかを見た場合、もっとも差が大きかったのがコロンビアでした。

Frontierが米国で初めて既設の光ファイバー網による100Gbpsの実証実験に成功

Nokiaの「Lightspan MFファイバーPONプラットフォーム」を利用したものです。既設のファイバーで100/50/25/10Gを組み合わせられるようです。

◆ 業界再編(M&A)

CommScopeが屋外ワイヤレス事業を売却、財務状況が悪化か?

OWN(Outdoor Wireless Networks、屋外ワイヤレスネットワーク)とDAS(Distributed Antenna Systems、分散型アンテナシステム)部門を21億ドルでAmphenolに売却しています。昨年の10月にはSTBや家庭向けゲートウェイを扱うホームネットワーク部門をVantiva(旧社名Technicolor)に売却しています。CommScopeは90億ドルの債務を抱えていると言われており、今後も資金繰りのための事業売却が続く可能性があります。

ParamountとSkydanceの合併に対して集団訴訟が起こされる

Paramountの議決権を持たないクラスB株主にとって16億5000万ドルの損失になる可能性があるとしています。今回の合併によりクラスB株主は1株15ドルで売却するか新ParamountのクラスB株(1株)と交換するかを選択できます。ただ、15ドルでの売却のほうは総額43億ドルまでという上限が設定されており、これを超えた場合は43億ドルを要求株式数で割った額、つまり比例配分されます。この仕組みが問題視されているようです。

LGI、スイス事業Sunriseの株式売却についてコメント

第2四半期の決算発表の場で発言しています。スイス第2のテレコムであるSunriseは、現在、非公開企業となっていますが、これを再上場、予定通り第4四半期に一部の株式を売却する計画です。時価総額は89億1000万ドルになる可能性があるということ。

◆ メディア

Netflix、7月から毎月ゲームを発表する計画

第2四半期の決算発表で共同CEOが「これまで100以上のゲームを発表し、何がうまくいくかを見てきた。現在、80のゲームを開発中で、この経験を活かして発表していく」とコメントしています。「エミリー、パリへ行く(Emily in Paris)」、「セリング・サンセット ~ハリウッド、夢の豪華物件(Selling Sunsert)」といったNetflixのドラマ関連の知財(IP)を活かしたゲームになっており、ゲームと映像視聴のシナジーも狙っているようです。

米国、テレビの視聴シェアでNetflixが初の4位に

Nielsenによる6月の調査結果です。放送、配信などテレビによる映像視聴のシェアをランキングにしたものです。1位はDisneyの10.8%ですが、YouTubeが9.9%とシェアを増やしており1位との差が縮小しています。3位はNBCUniversal 8.5%。ここまでの順位は4月以降変わっていません。変化があったのは4位のNetflix 8.4%でParamountとワーナーの2社を上回りました。NBCUniversalとの差もほとんどありませんが、今夏にはパリ五輪(NBCで放送)があるため激しい競争になると思われます。

米国、パリ五輪の開会式を2800万人以上が視聴

開会式の視聴者数は、2012年のロンドン五輪を4070万人が視聴しましたが、その後、2016年リオデジャネイロは2650万人、2021年東京は1790万人まで減っていました。Peacockでの視聴は250万人となり、開会式の配信サービスでの視聴としては最多となるようです。

MLBが米国ユーザー向けに試合がライブ視聴できる配信サービスを開始

全試合が対象で7月24日から月額5.99ドルで開始されています。

英国では国営放送BBCがNetflixなどの配信サービスより視聴されている!?

BBCによる年次報告書に書かれているものです。週に平均5時間44分、BBCを視聴しており、これは大手の配信サービスの合計より多いといいます。英国に根差したコンテンツを配信・放送しているかについては、肯定的な回答がNetflixは16%だったのに対しBBCは4倍も高い64%となっています。一方、50万世帯がBBCに視聴料を支払っておらず、BBCの収入が減少しています。この理由として若者がBBCから配信サービスへ移っているという分析もあるようです。

英語圏の国々では非英語圏の国で制作されたコンテンツの視聴が増加

米国、英国、オーストラリア、カナダなど英語圏の国々で、非英語圏で制作されたコンテンツ、つまり英語以外の言語を用いたコンテンツの視聴が2020年から2024年で24%増加しています。Ampere Consumerによる18歳から64歳までを対象にした調査結果です。特に18歳から34歳までの世代が非英語コンテンツを好む傾向が顕著で66%が定期的に視聴すると答えています。視聴の方法は字幕が28%、吹き替えが19%。残りの半数以上がどう視聴しているかは不明です。なお母国語以外のコンテンツをどう視聴するかは国によって傾向が異なり、例えばフランス、ドイツ、イタリア、スペインは吹き替え、北欧やオランダは字幕を好む傾向が強いということ。この記事では北欧やオランダは英語を解釈できる人が多いためではないかと分析しています。

◆ 新技術

パリ五輪で活用される最新技術をNABがレポート

NABとはNational Association of Broadcasters(全米放送事業者協会)のことで、米国のテレビやラジオ局全体を統括する団体です。最新技術の筆頭に挙げられているがAIで、ハイライト映像の自動生成では過去のオリンピック映像を機械学習させたAIモデルを使用して、記録的なパフォーマンスや劇的なフィニッシュなど重要なシーンを自動認識するということ。もう一つ取り上げられているが8Kライブストリーミング。これをネットでスムーズに配信したり、マルチアングルやリアルタイムに統計データを表示するといったインタラクティブな機能を実現したということです。

◆ その他

米国、Broadband Communitiesが選ぶFTTHにおける革新的な企業25社

ブロードバンド関連のメディアBroadband Communitiesが、革新的なビジネスプランやゲームチェンジャー的な可能性を秘めたFTTH関連の企業を100社選び、その上位25社を紹介しています。まだ商業サービスを提供していなくても選ばれるようです。ComcastやCox、Commscopeなどが挙がってはいるものの、大半は日本ではあまり知られていない会社です。

米国コンシューマーレポート誌によるブロードバンド調査

4万8000人以上のコンシューマーレポート誌の会員から調査した結果です。2024年のネット料金は平均だと月額85ドル。これは2022年から9ドル上昇しています。ISPの評価を行なっており「ベストISP」に選ばれたのは日本で名前の知られた事業者だとGoogle Fiber、T-Mobile、Starlinkなど。逆に「ワーストISP」に選ばれてしまったのはAlticeです。今回の調査では5人に1人が光ファイバーベースの固定ネットを使用。ただ最も多かったのは54%を占めたケーブルインターネットです。接続タイプごとの満足度調査も行なっており、満足度に肯定的な評価が多いのがファイバー、衛星、5G、逆に悪い評価が多いのがDSL、ケーブル、衛星となっています。

報道の信用度調査、米国では報道を信用するのは3人に1人?

2024年にReuters Institute for the Study of Journalism(ロイタージャーナリズム研究所)から委託を受けたYouGovが調査した結果です。もっとも信用されているのはローカルニュースで、「信用する」と答えたのがテレビ62%、新聞58%。それに続くのがABC やBBC、CBSで52%となっています。信用すると信用しないの両方が高いという変わった傾向を示したのがFoxでいずれも43%という結果でした。

監修者・執筆者:J:COM あしたへつなぐ研究所 編集部メンバー

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