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海外動向 7/17〜7/23

当研究所では、ケーブル業界の独自の視点で放送・通信・メディア等に関する海外動向の調査・分析を行っております。このノートでは、おもに海外で一般に公開されたニュースや企業からの発信情報をもとに興味深いものをご紹介します。



◆ 今週の重要トピック

Paramount買収劇の次はワーナーということでしょうか。発端はBank of Americaのアナリストがワーナーの今後について言及したものです。これを皮切りに事業再編に関してさまざまな報道が続いています。そんな中、Netflixが好調な第2四半期の決算を発表。配信サービスの中では強さが際立つ結果となりました。

◆ 業界動向

Netflixが第2四半期決算を発表、契約者数805万人増で全世界合計2億7765万へ

売上は前年同期比17%増の95億6000万ドル、純利益は44%増の21億5000万ドルです。契約者数の伸びは第1四半期が930万人増でしたので、それより鈍化しているもののメディア業界の中では好調な決算です。広告付きプランの契約者数は前四半期比34%増加し全契約者数の45%を占め、構築中の新しい広告プラットフォームを年内にカナダでテスト運用開始、2025年にはより多くの国で提供する計画です。

Netflix、Disneyやワーナーとの配信バンドルには否定的な姿勢を表明

第2四半期決算の発表に伴う株主へのレターに書かれています。Comcastなどのケーブル事業者やモバイル事業者との提携については、Netflixを見つけやすく使いやすくするものとして意味がある。例えばテレビで手軽に視聴できる、料金支払いをケーブル事業者がネットなどとまとめてくれるといった利便性があります。一方、Disneyやワーナーとの「バンドル」については、Netflix自体が「Go-To Destination」、つまりNetflixを目的として加入するサービスとして形作られていることからメリットが少ないというものです。

ComcastのバンドルサービスStream Saverが好調なスタート

Stream SaverはNetflix、Peacock、Apple TV+をバンドルしたプランで、月額15ドル。個々に契約するより30%割安となります。Comcastで12州、2100万加入者を管轄するComcast’s Central Divisionの社長がStreamTV Insiderのインタビューに答えたものです。Stream Saverの具体的な加入者数などは明らかにしていません。一方、配信サービスとの提携で異なるアプローチを取るCharterは、同社のSpectrum TVサービス加入者に対してDisney+を無料化していますが、こちらはうまくいっていないようです。無料化のためにはCharterのシステムに登録する必要がありますが、Charterの対象プラン加入者のうち10%以下しかこれを行なっていないということです。

米国の中規模ケーブル事業者Mediacomがモバイルサービスを開始

VerizonのMVNOとなります。ブランド名は「Mediacom Mobile」で従量制プランは月額15ドルで提供されます。固定ネットとのバンドルサービスも用意されています。

Nokiaの第2四半期決算、5Gが振るわず20%の減益

純利益は前年同期比20%減の3億2800万ユーロ、売上は18%減の45億ユーロです。Ericssonとほとんど同じ説明ですが「モバイル事業者が5Gへの投資に慎重な姿勢を続けているためマーケットは依然として厳しい」というもの。ただ、下半期には需要が回復すると予測しています。

ワーナーの配信サービスMaxがフランスでロケットスタート

6月11日にスタートしたばかりですが、すでに家庭への普及率が5%に達しているようです。これはApple TV+やParamount+に迫るもので、かなり好調なスタートを切ったと言えそうです。

ワーナーが1000人近くの従業員を解雇

大部分は財務部門で配信サービスMaxを手掛ける部署は10人以下にとどまるようです。ワーナーは2022年のDiscoveryとの合併後、数千人規模の人員整理を行なっており、その後も継続的に削減を行なっています。

◆ メディア

ワーナー、NBA放映権の獲得のためAmazonと同額を提示

米国時間で7月22日にAmazonと同額となる年額18億ドルを提示したようです。NBAは7月16日に2025年から11年間の放映権をDisney、NBC、Amazonと760億ドルで契約することを承認。翌17日にワーナーに通知、ワーナーは22日までに対抗措置を講じるかの猶予期間が与えられてました。NBAの放映権をワーナーは1984年から40年間にわたり維持しており、その期間に他社に放映権が移る場合の対抗措置を検討する権利を確保していたようです。現在の放映権は2024年(2024-2025シーズン)までの9年契約で年額14億ドルです。

米国、6月のテレビでの視聴サービスで配信サービスが初の40%超え

Nielsenによる調査結果です。配信サービスが40.3%を占めています。配信サービスの中でシェアを増やしたのはYouTube 9.9%(5月は9.7%)、Netflix 8.4%(7.6%)、Amazon Prime Video 3.1%(3%)、Disney+ 2%(1.8%)、Tubi 2%(1.8%)、Max 1.4%(1.2%)、Peacock 1.2%(1.1%)、減ったのはHulu 3%(3.1%)、Paramount+ 1.1%(1.2%)、Pluto TV 0.8%(0.9%)です。

WNBA(女子バスケのプロリーグ)、11年間で22億ドルの放送契約を締結

1シーズン2億ドルとなり、現在は5000万ドルですので4倍となります。契約先は現状と同じDisney、CBS、Amazon、Ionですが、2025年以降はさらに契約先を追加することが可能となっており、契約額が大きくなる可能性があるということです。

米国、ディズニーが子供向け番組で苦戦

今から10年前、2014年当時はディズニーが覇者でしたが、2024年にはその座をYouTubeやNetflixに奪われたというもの。Nielsenによる調査結果です。特に12歳未満ではYouTubeが圧倒的で2860万人の視聴者を持ちます。続くのがNetflixで1720万人、Disney 1560万人となっています。

Netflixのアフリカでのコンテンツ戦略

南アフリカのダーバンで開催された映画関連のイベントDurban FilmMartでNetflixのアフリカ・コンテンツ責任者が述べたものです。世界的なヒットを目指さない、まずは現地視聴者の心を掴むことを優先するというもの。2020年にはアフリカ初のオリジナルシリーズ「Queen Sono」をリリース、その後もアフリカのクリエーターとの関係を深めているようです。

◆ 業界再編(M&A)

ワーナー、事業分割などの再編を検討?

Financial Times誌が情報筋の話として報じています。巨額の負債に対応するため映画スタジオと配信サービスMaxの独立会社化を検討という内容です。この他、資産売却などの選択肢も検討されているようです。

PwCが予測するメディア業界の今後、10年後にはビジネスが成り立たなくなる?

コンサル業務などを行うPwCがまとめた「Perspectives from the Global Entertainment & Media Outlook 2024–2028」(世界のエンターテインメント&メディア展望)によるもの。こちらのWebで全文が公開されています。2024年から2028年までの世界収益は、平均成長率が3.9%増の3兆4000億ドルにとどまるという予測。メディア関連企業のCEOを対象にした調査では、57%が「10年後には現在のビジネスが成り立たなくなる」と回答しています。

収入面では、2023年に視聴者からの収入を広告収入が上回っており、2026年には1兆ドルを超え、2028年まで年率6.7%の成長を予測しています。一方、視聴者からの収入は横ばい。NetflixやAmazon Prime Videoが広告付きプランを導入した影響が出ているようです。

メディア業界の潜在的な成長分野として示されているのはEsportsを含むゲーム関連事業です。現在は収益面でのインパクトは小さいものの、2028年には最も急速に成長する分野の一つになると予測しています。

補足:レポートではConnectivity、Advertising(広告)、Consumer(視聴者)の3分野をエンターテイメント&メディア業界の収入としていますが、Connectivityはモバイル・固定ネット関連の接続収入ですのでご注意ください。

◆ インフラ

T-Mobile、米国のモバイルサービスで最高評価を維持

Ooklaによる2024年前半の「Connectivity Report」によるものです。Verizon、AT&Tとの比較になります。これによると速度はT-Mobileが突出しており、他2社の倍近くとなっています。このほか5G、顧客満足度などいくつかの指標で比較していますが、いずれもT-Mobileがトップという結果です。

◆ その他

AT&Tが盗まれた通話・メッセージ記録を削除するためハッカーに37万ドルを支払う

テック系の情報メディアWiredが報じています。ハッカーに対し、データを削除し、それを裏付けるビデオの提供を求め、その対価として5.72 bitcoin(支払い時点で約37万ドルに相当)を支払ったというものです。

Disney、ハッカーによる情報流出を調査中

Disney社内で使用されているSlackのデータが1TB(テラバイト)以上、流出した可能性があるようです。Slackは議論やコミュニケーション、情報共有に使われており、プロジェクトや社員の関連情報が含まれるようです。

監修者・執筆者:J:COM あしたへつなぐ研究所 編集部メンバー

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