教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま 松井市長の教育勅語使用に抗議
憲法第99条「憲法尊重擁護義務」に違反して
広島市の職員研修に教育勅語を使用したことに抗議するとともに
市民に謝罪し今後の研修に使用しないことを要請します
新聞報道によると広島市の新規採用職員研修で、松井一実広島市長が市長就任翌年の2012年以降毎年戦前の「教育勅語」の一部を研修資料に使っていたことが明らかになりました。
教育勅語は子どもたちに「天皇のために命をささげる」ことを教え込んだ軍国主義教育の中心となる教育思想の基本原理を示すものとして1890年に明治天皇の言葉として出されました。その本質は「一旦緩急あれば義勇公に奉じ以て天壌無窮の皇運を扶翼すべし」、つまり「重大事態があれば天皇のために命を投げ出せ」ということにあります。「親孝行」や「兄弟仲よく」などの徳目がありますが、それらはすべて天皇を命をかけて守ることに結びつけられているので、教育勅語の一部を切り取り肯定して使用することは適切ではありません。
戦前の教育は教育勅語の精神を徹底して子どもたちにたたき込みました。天皇と国家への忠誠を植え付けられた若者たちは、自らの命を捨て、相手の命をも奪う侵略戦争に送り出されました。
敗戦後、「個人の尊厳」を保障する憲法と「真理と平和を希求する人間の育成」をめざす教育基本法が制定され、憲法の理念に反する教育勅語は1948年に衆議院で「排除決議」され、参議院では「失効決議」が採択されました。とくに参議院の「失効決議」では憲法・教育基本法制定で戦前の「教育の誤りを徹底的に払拭」した結果、教育勅語は廃止され効力を失っています。
報道では、松井市長はこのような性質の教育勅語の一部である「爾臣民、兄弟に、友に」を英訳付きで新規採用職員研修で配付し、今後も使用を続ける考えを示した、と述べています。憲法が否定している教育勅語は、憲法を遵守することを義務づけられ立憲政治の下で民主主義行政を行うべき市長をはじめとする地方公務員の持つべき理念と相容れません。
1.日本国憲法下では死語であり禁句である「爾(なんじ)臣民は」を研修で使う市長は憲法尊重擁護義務を遵守していないこと
憲法15条第2項では「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と明記されているにもかかわらず、「爾(なんじ)臣民は」を研修の場で用いていることは、松井市長が「新規採用職員」に「市の職員は『臣民』と心得よ」と指導していることになり憲法違反を職員に植え付けたことになるとともに、天皇を「国民の総意に基く」「日本国の象徴」としている憲法第1条違反の行為を2012年以来12年間続けて来たことになります。
このように確信犯的違憲行為を権力行使の場である研修の講話の形で累積している松井市長に対し、研修を義務付けられた広島市職員は、職権乱用による誤った思想の押し付けによる精神的苦痛の補償を求める法的措置も可能だと考えられます。
2.差別の意味を隠した憲法違反の徳目「兄弟に友に」を研修で使う市長は憲法第99条憲法尊重擁護義務を遵守していないこと
「兄弟に友に」を松井市長は「よい部分」としていますが、現行民法のように兄弟平等という意味ではありません。教育勅語では男系による家督相続制下の家族関係を守る心構えを説いているのですから、長子相続のために兄弟姉妹中で長男の存在を最大限に重視し、最優先するという不平等関係を当然と心がけよという意味になります。極限すれば、教育勅語次男以後の男兄弟や姉妹など場合によっては居てもいなくても良いという家族観を表現しているのです。このような意味である憲法違反の教育勅語の表記を「よい部分」として研修で
市長の講話によって聞かされた新規採用職員の中で、次男以後の男兄弟あるいは女性が精神的苦痛を受けたとして、法的措置を講じることができるほどの違法行為を市長という立場を利用して指導したことになります。
従って、憲法第99条「憲法尊重擁護義務」に違反して広島市の職員研修に教育勅語を使用したことに抗議するとともに市民に謝罪し今後の研修に使用しないことを要請します。
以上
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