松井市長が職員研修で教育勅語を引用した資料を使い講話していたことに断固抗議し今後の絶対不使用を求める
日本ジャーナリスト会議(JCJ)広島支部は、12月16日に広島市で開いた「2023不戦のつどい」で、教育勅語を職員研修で使っていた松井一実広島市長に抗議する声明を参加者全員の賛同で決定しました。
新聞などの報道によると広島市の松井一實市長は就任翌年の2012年以降、毎年の新規採用職員研修で戦前の「教育勅語」を引用して資料に掲載し、それを使って講話をしていたという。ちなみに今年4月の研修時に使用した資料には「生きていく上での心の持ち方」と題した項目で「我々の先輩が作り上げたもので良いものはしっかりと受け止め、また、後輩に繋ぐ事が重要」として教育勅語の「爾臣民 兄弟に 友に 博愛 衆に及ぼし 学を修め 業を習い 知能を啓発し 進んで公益を広め 世務を開き」との一節が記載されている。
教育勅語は1890年に明治天皇の言葉として「一旦緩急あれば義勇公に奉じ以て天壌無窮の皇運を扶翼すべし」、つまり「重大事態があれば身命を投げ出しても天皇を助けるよう」国民に命じ、子どもたちにもその精神を教え込むために作られたもので、戦前の学校では教育思想の基本原理として必ず掲示され、学校行事のたびに読み上げられ児童や教師は最敬礼で聞くよう求められていた。こうして天皇と国家への忠誠を植え付けられた若者たちが自らの命を捨て、相手の命も奪う侵略戦争に駆り立てられていったのは紛れもない歴史的事実である。
アジア・太平洋戦争に日本が敗れた戦後、この教育勅語は「国民主権」「個人の尊厳」を定めた憲法と「真理と平和を希求する人間の育成」を目指す教育基本法の理念に反するとして、1948年に衆議院で「排除決議」、参議院で「失効決議」が採択された。教育勅語は完全に廃止され、効力なしとなったのである。それを、勅語の文言の中には「親孝行」や「兄弟仲良く」などという「徳目」があるからといって美化し、戦後の民主主義、人権尊重の社会とは絶対に相容れない「軍国主義教育」を蘇らせるようなことは断じて許されないし、あの戦争で犠牲となった幾多の人々を冒涜することにほかならない。
にもかかわらず、このように憲法が否定する教育勅語を松井市長が「評価してもよい部分がある」などとして職員研修の講話に使うというのはあまりに不適切であるばかりか、そもそも公務員に擁護義務を定めた憲法に反する行いと言わざるを得ない。
本日、「再び戦争のためにペン、カメラ、マイクを取らない」を合言葉に設立された日本ジャーナリスト会議(JCJ)広島支部がその決意を新たにするために開催した「2023不戦のつどい」に参加した私たちは、職員研修に教育勅語を使う松井市長に対し厳重に抗議するとともに、市長は過ちを認め二度とこうした研修は行わないと言明するよう強く求めるものである。
2023年12月16日
JCJ2023不戦のつどい参加者一同
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