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効果的な社内研修  喉の渇き潤すように ~日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2018.02)

ご依頼を受けて、ちょこちょこ書いていたもののアーカイブをNOTEでしておくことにしました。今日は日経産業新聞の2回目です。一昨年の暮れくらいから、6~7名でリレー連載のようなものを書いてます。2カ月に1回くらい担当がまわってきます。各内容は広い意味でHRに関係があれば何でもOK。2回目は研修の効果についてです。研修つくりは本当に面白い。

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日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2018.02)
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効果的な社内研修  喉の渇き潤すように
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 皆さんの企業でも企業内研修を実施していることと思います。研修の担当者の大きな悩みの1つは、効果の判定です。研修がはたしてどれだけ効果があったのか。
 多くの企業では「5点法」のアンケートを実施していますが、必ずしもアンケートの結果が高い研修がよい研修とは限りません。研修に参加した社員が研修をきっかけに意識を変え、行動を変え、それが成果に結びつく循環があってはじめて効果のある研修だったといえるのですから。
 実は研修の成果の半分は始まる瞬間に決まっています。その研修に期待感をもって集まっているか、参加したいと思って集まっているかが何よりも大切なのです。どんなに良いコンテンツでも、嫌々受けてしている人には、十分な効果を発揮することはなかなかできません。
 真夏の炎天下で喉がからからに渇いているときに飲む冷たい水はおいしいですよね。同じ水でも喉が渇いていないときにはそれほどおいしくは感じないものです。
 研修も同じです。研修における喉の渇きとは、「学びたいと思う気持ち」。この強さが研修の研修の成否を大きく左右します。
 「学びたいと思う気持ち」を呼び起こすのは、何よりも「健全な危機感」だといえます。もっといえば、人を成長に導くためにもっとも重要な要素が「健全な危機感」なのです。今のままの自分では駄目だ、もっとこうなりたい、そんな気持ちを指します。
 会社は社員に、上司は部下に、この「健全な危機感」が芽生える環境を常に提供し続ける必要があります。自らを健全な危機感に上手に追い込める人は、常に成長し続けられる人でもあります。
 自分にはこれが不足していると感じているときに、それを獲得できる研修を提供できれば、炎天下で冷たい水を差し出すのと同じ効果を発揮します。初めて部下をもったときは「部下との効果的な接し方を習得したい」、新入社員であれば「一通り仕事を回せる力を得たい」というように。
 仕事のステージが変わったときは「健全な危機感」が自然に芽生えるときでもあります。マネージャー研修のような階層別研修が存在している理由はここにあります。
 ただし、会社の置かれている環境は毎年変化します。その変化を上手に捉えて研修を設計しないと、喉が渇いていない人に水を差し出してしまうことになりかねません。同じマネージャーでも、去年と今年では求められることは微妙に違ってきますから、提供すべき水も変わってくるのです。
 私のいる企業の研修体系の大半は、希望者参加型研修と称する「手あげ式」の研修で構成されています。かつ、就業時間外に実施しています。社内研修というよりは自己啓発支援制度だといえます。
 「手あげ式」のよいところは、喉の渇いている人しか集まらないところです。自分の時間を使って集まるのですから、本当に学びたい人が自ら学ぶために集まります。
 それでも、研修はライブです。いつもうまくいくとは限りません。狙ったような反応がない場合は、講師と事務局が集まって休み時間に急きょコンテンツを変更することもあります。チーム編成を見直すこともあります。試行錯誤の繰り返しです。その根底には、社員の成長につながる研修でありたい、企業業績に資する研修であり続けたいという強い思いがあります。

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