人工知能に代わる人工生命というアプローチ
依然猛威を振るう新型コロナウイルス
2020年は新型コロナウイルスが登場、2021年の最後にも新出のオミクロン株によって翻弄され続けています。
米マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏が2015年の講演で「今後数十年で1000万人以上が亡くなる事態があるとすれば、戦争より感染性のウィルスが原因だろう。ミサイルより病原菌に備えるべきだ」と警鐘を鳴らしていたことは有名です。
一方で「ウィルス=病原体」という認識は誤りで、ウィルスにも生物の生存を助けるものや、地球環境を維持する海洋ウィルス等の地球上の生命にとって大切な役割を果たしているものが数多く存在しています(海洋に存在するウィルスだけでも10の31乗個といわれている)。
客観的に捉えると、人類の誕生よりも遥か昔から存在している天文学的数字のウィルスというものを「制御」するということは極めて困難と言えるのではないでしょうか。
人工知能から人工生命へ
生命現象を情報科学的に解明する人工生命(AL)という概念があるそうです。人間の知的な論理をプログラム化して実行する人工知能(AI)は人間の「脳」を模式化したものですが、ALは人間の「身体」を前提に理論化したもので、AIのような機能的かつ合理的に問題を解決するというより、自然界の複雑な環境に適応して生き残っていく生命的なアルゴリズムの創出を目指しています。それはカオスや複雑系という分野で研究されているものと近いもののようです。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大に対して、感染抑制や医療体制の問題解決が喫緊の課題となるわけですが、そのことと合わせて人類が生物として地球上で生きるための謙虚で真摯な姿勢が問われているような気がします。
そうした観点から今後の我々の生活には人工知能だけでなく、人工生命のようなアプローチを持つことが必要なのかも知れません。
JCEL株式会社 代表取締役 三坂伸也