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誰もやらないことをやる-都市型水族館への挑戦 #02

皆さん、こんにちは!
JCEL株式会社 代表の三坂です。

前回の私の記事では、「ゆるやかなコミュニティの創出」と題して、新江ノ島水族館開業後の、新たな挑戦の始まりについてご紹介しています。

まだご覧になっていない方は、前回の記事も併せてご覧ください!

都心に海を作る

「ゆるやかなコミュニティ」を求めるマーケットに水族館を提供する!
と決めた私がターゲットとして見据えたのは「都心」でした

しかし、都心型水族館の前に立ちはだかる大きな課題が二点。

一点目は展示水槽用の「海水」の調達でした。
水族館というのは展示水槽を維持していくのに毎日数百トンから数千トンという大量の海水を要します。

従って、水族館の立地は直接海から海水を給水するかタンカー等で海水を補給することが容易な海沿いとういのが常套手段です。

都心で成立させるには海から直接以外の何らかの方法で大量の海水を調達する必要がありました。

日本は海に囲まれた島国ですから、海沿い立地は潤沢です。わざわざ内陸に水族館をつくることなどナンセンスでした。

しかし、海外に目を向けると米国ラスベガス(砂漠の真ん中)にも水族館はあるのです。彼らは「人工海水」で展示水槽を賄っていました。簡単に言うと「塩と真水にミネラルを混合して生成する海水」ということです。これなら水族館内で海水を生成することが出来ます。

我々は現地に飛んで行って水族館のバックヤードを見せてもらうと、人工海水の生成装置及び水処理設備は想像以上にシンプルな仕様で運営していました。

日本のプラント技術からすると安価に精度の高いものが成立することは自明でした。「タダ同然」の海水に比べると極めて高価なものですが技術的には十分可能であることが確認出来ました。

最初はコバンザメになる

課題の二点目は都心の高額な地代でした。

当時日本国内は沖縄・美ら海水族館、大阪・海遊館、愛知・名古屋港水族館等の大規模水族館が主流でした。

目玉展示の大型生物で広域から集客するという観光的事業モデル。しかし、都心の一等地でそんな広大な土地を購入することはもちろん賃借することも事業的にはあり得ません。

一方で私のコンセプトは「コミュニティの創出」でしたから、そもそもそんなに大きな施設をイメージしていませんでした。

ただ、それなりの規模感が無いと人々は大切な週末にわざわざ足を運んでくれず観光的事業としては成立しません。

そこで、苦肉の策で捻りだしたのが「コバンザメ水族館」。コバンザメを展示するのではなく、コバンザメになり、"大きな魚にくっついて泳ぐ"水族館のアイデアです(笑)。

既に集客力のあるエリア(施設)に新たな魅力付けとして小規模水族館を併設させるというものです。従来の観光的事業モデルから都心部再開発のキーコンテンツ化事業への転換を目指したわけです。

新たな挑戦の舞台

こうして日本ではナンセンスと思われていた「都市型水族館」は課題解決の道を進みだしました(もちろん、私が進みだしたと思っていただけで周囲は大いに疑問視していました…)。

とにかく具体的な青写真が描けないと説得力が無いので都市型水族館の候補地探しが先決でした。

そして、日本中を探して見つけ出したのが、

  • 海の無い巨大観光都市、京都

  • 100年に一度の開発、東京スカイツリー

でした。

京都プロジェクトはJR京都駅から徒歩圏にある公園立地でJR西日本の運営する蒸気機関車館が併設されていました。

そして、東京スカイツリープロジェクトは大規模開発のキーコンテンツとして水族館がテナント入居するという過去に事例のない構想でした。

ここから新江ノ島水族館の開業を遥かに凌ぐ苦難の道が始まりました。


JCEL株式会社 代表取締役 三坂伸也

三坂伸也の略歴

一級建築士

早稲田大学理工学部を卒業。
1985年大成建設(株)入社。
1989年オリックス(株)入社。

オリックス不動産(株)水族館事業部長、オリックス水族館(株)常務執行役員を経て、2014年12月オリックス水族館(株)代表取締役に就任。

京都水族館(京都市下京区)、すみだ水族館(東京都墨田区)の開発・運営責任者として陣頭指揮を執る。

2019年 2月JCEL(株)設立、代表取締役社長に就任
JCEL株式会社
国内で常に新たな水族館の形に挑戦をしてきた三坂伸也が代表を務めるJCEL株式会社。満を持して海外へ進出、「水族館の公園化」