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クリニクラウンの効果

【写真提供:日本クリニクラウン協会】

みなさんクリニクラウンという存在はご存知でしょうか。むかし、ロビン・ウィリアムズ主演の映画「パッチ・アダムス」で有名になった、病院(クリニック)を訪問する(道化師(クラウン)のことです。日本でもNPO法人日本クリニクラウン協会という存在があるように、かなり認知度も高いように思います。このクリニクラウン、各地の病院を回り、遊びや関わり(コミュニケーション)を通して、病気を持つ子どもたちに勇気と笑顔を届ける活動をされています。

コロナウイルスの感染拡大により、第一回の緊急事態宣言の最中、このクリニクラウンの活動もストップせざるを得ない状況になり、それにより心待ちにしていた子どもも、大好きなクリニクラウンに会えずにお空へ飛び立ってしまうという、いたたまれないニュースもありました。

病院という、子ども達にとって殺風景な環境で唯一の楽しみになりえるクリニクラウン。この存在の価値を科学的にしめすシステマティックレビューがありました。

Lopes-Júnior L C, Bomfim E, Olson K, Neves E T, Silveira D S C, Nunes M D R et al. Effectiveness of hospital clowns for symptom management in paediatrics: systematic review of randomised and non-randomised controlled trials BMJ 2020; 371 :m4290 doi:10.1136/bmj.m4290

このシステマティックレビューでは、24件の臨床試験(患児の総計は1,612人)のデータを基に分析を行っていました。24件のうち13件はランダム化比較試験、11件は非ランダム化比較試験でした。

解析対象者に生じた症状で最も多かったのは不安であり、それに次いで、痛み、心理的・感情的反応および知覚されたウェルビーイング、ストレス、がんに関連する倦怠感、泣くことが続いていました。レビューの結果、親が一緒にいるか否かにかかわらず、ホスピタルクラウンの訪問を受けた患児では、標準的なケアを受けた患児に比べて、一連の医療措置が行われる間に感じる不安の程度が有意に低減し、心理的ウェルビーイングも向上したことが示されていました。ホスピタルクラウンとの交流があった患児では、標準的なケアを受けた患児と比べて、ストレス、倦怠感、疼痛、苦痛の有意な低減が認められたことも確認された。これに対して、ホスピタルクラウンと交流した患児が感じる苦痛の程度が、標準的なケアを受けた患児と同程度であったことを報告した研究は1件のみでした。

著者であるLopes-Júnior氏らは、「この研究結果は、急性疾患や慢性疾患で入院中の小児やティーンエイジャーの心理的ウェルビーイングおよび感情的反応は、ホスピタルクラウンとの交流により向上できる可能性のあることを明らかにしたものだ。また、この知見は、入院中の小児の心理的適応を向上させるために、今後も補完療法に関する研究を継続する必要性を裏付けるものだ」とも述べていました。

こういった科学的検証によって、クリニクラウンの活動がさらに活発になることを祈っています。

(文責:植木)

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