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コミュニケーションの質

コミュニケーションを円滑にすることは生活する上でとても重要です。相手の聞きたいことに答えていなかったり、伝えたと思っても伝わってなかったりすることはよくあります。最近では、オリンピックの開催やワクチン接種などのCOVID-19にまつわる様々に物議を醸している問題は、双方のコミュニケーションがうまくいっていないから起こるものと傍観しています。臨床哲学者で大阪大学前総長の鷲田清一先生が、相手との間の隔たりについて指摘しているように、話せばわかるほど相手との違いが分かるようになることがコミュニケーションあるともいえます 1)。今回は、急性期病棟における看護師の引き継ぎの課題について調べたシステマティックレビューを紹介します。

これは看護管理の雑誌であるJournal of Nursing Management(IF:2.243)に2021年5月に掲載された質的研究のシステマティックレビューです 2)。

質の良い看護師間の引き継ぎは患者の安全を促進する一方で、質の悪い引き継ぎは医療過誤と関連していることは指摘されています。しかし急性期病棟で質の悪い引き継ぎが行われるのは非常に危険です。このシステマティックレビューの目的は、急性期病棟の看護師の部署間やシフト間の引き継ぎの課題をより深く理解するために行われました 2)。
10 件の研究が選定され、Transactional model of communication 3)が用いられました。このモデルは、コミュニケーションモデルの中でも最もダイナミックなモデルです。このモデルの特筆すべき特徴は、人を「送り手」と「受け手」と呼ぶことから、「伝え手」と呼ぶようになったことです。これは、人々がメッセージを送り、受け取ることで、コミュニケーションが達成されることを意味しています。
結果として、引き継ぎにおける7つの主要な課題がわかりました。①完璧さへの期待、②パートナーシップの必要性、③一方的なコミュニケーション、④情報取得の障害、⑤適切な患者情報の欠如、⑥構造化された引き継ぎの必要性、⑦中断/妨害です。
結論 として、引き継ぎは、ケアの継続性を確保するために、患者中心のケアの不可欠な要素と考えるべきであり、引き継ぎ時のコミュニケーション不足は、看護師の負担やストレスを増大させ、患者のケアに悪影響を及ぼす可能性があるということでした。そのため、明確な引き継ぎのためのトレーニングを行うべきと指摘しています。

当たり前と言えばそうなのですが、上記の①~⑦のことが本当にうまくいっているのかということは確認する必要があります。引き継ぎの方法はモバイルテクノロジーなどを使ったりして多様化しています。引き継ぎという時間を設けずに記録上やシステム上で実施しているところもあります。形は変わっても、形が変わるからこそコミュニケーションの本質を見直す必要があるのではないでしょうか。(文責:山川みやえ)

出典

1:「平田オリザ 著. わかりあえないことからーコミュニケーション能力とはなにか」のコメントより https://bookclub.kodansha.co.jp/title?code=1000010424

2:Ahn JW, Jang HY, Son YJ.Critical care nurses' communication challenges during handovers: A systematic review and qualitative meta-synthesis.
J Nurs Manag. 2021 May;29(4):623-634. doi: 10.1111/jonm.13207. Epub 2020 Dec 1.

3:Durham, M.G., & Kellner, D.M. (Eds.) (2001). Media and cultural studies: Key works. Malden, MA: Blackwell.

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