自慢味

縁日などで出される露店の幕やラーメン屋の暖簾などに「味自慢」と書いてあることがある。しかし、残念ながら「味自慢」と書いてある店に限って自慢するような味ではないことが多い。そもそも、食べ物を売る店ならば自慢できる味でなければおかしい。書く必要のないのではなかろうか。「当店のトンカツに使っている肉は100%豚肉です」と書くようなものだ。
何故、「味自慢」などと書くのだろう。「味自慢」で何をアピールしたいのだろう。

学生食堂の厨房の奥でいつもモツを煮込んでいる場違いなフランス人のおばちゃん。実は昔、フランスのパリの三ツ星レストランで味自慢の人だったらしい。そんな彼女も、今は名も無き学食で孤独にモツを煮るフランスおばちゃん。何があったのか、分からない。しかし、モツ煮に光る匠の味自慢の業がそこにある。

今日の相撲で一番の見所の取組は、山ノ海と富士桜との一番だ。山ノ海、力強いつっぱりが得意な力自慢の力士と、富士桜、味噌の効いたちゃんこ鍋が得意な味自慢の力士だ。力が勝つか、味が勝つか、目が離せない。

蟻から蚊まで、虫にたかられがちな近所の猿島さん。毛穴から甘い汁が出る味自慢の人だ。動物達や子供にも大人気。

「いやー、昨日のゴルフでねえ、スコアがついに100を切ったよ。ところで、丸和君、君は最近ゴルフの方はどうなんだい」
いつもの事ながらうんざりする山田部長のゴルフ自慢。
「いやー、昨日はソース味の焼きそば食べちゃってねえ。凄いウスターぶりだったよ。ところで、丸和君、君は最近ソース味はどうなんだい」
いつもの事なのにうんざりしない川北部長の味自慢。

露店の幕や暖簾に書かれた「味自慢」の文字。自慢することがなければ、潔く「自慢なし」と書けば良いと思う。

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