ばかの王国

ふと思い付いて「イワンの馬鹿」を広辞苑で調べてみた。広辞苑にはこうあった。
「ロシア民話に取材したレフ=トルストイの童話。……(中略)……ばかの王国を築いて人びとに善行を施す話」。
ちょっと待て。何だ、ばかの王国って。「イワンの馬鹿」って話は、そんな終わり方で良いのか。色々あってできたのは、ばかの王国。台無しなのではないだろうか。

・鬼を退治した後、桃太郎は、犬、猿、雉の三馬鹿と共に鬼が島に「ばかの王国」を作りました。
・三蔵法師、孫悟空、猪八戒、沙悟浄が天竺に到着すると、そこは「ばかの王国」でした。
・関ヶ原の戦いの後、徳川家康は「ばかの王国」を開いた。

折角の苦労を台無しにする「ばかの王国」。何か凄いインパクトだ。ばかの王国は、現代にも蘇る。

「丸和君、ばかの王国支店への転勤が決まったよ。支店長待遇で、実質的には栄転だ」
部長は、やり手の丸和課長の肩に手置き、語りかけた。
「ええっ」
やり手課長に伸びる失脚の魔の手。スピード出世の丸和さん。頑張った先に「ばかの王国」。左遷なのは明らかだ。

朝の会で先生が転校生を紹介する。
「今日、転校してきた川北君だ。自己紹介してくれ」
「ばかの王国から来ました。川北イワンです。よろしくお願いします」
ざわめく教室。転校生の話のとっかかりである「前に住んでいたのはどんな所だった」トークが使えない雰囲気。

「おー、よーしよしよし」
ムツゴロウさんの「ばかの王国」。

書いているうちに、自分の中で魅力が増してきた「ばかの王国」。嫌いな人にも百回「好きだ」と言えば、本当に好きになってしまう話に似ている。

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