ぽたぽたポッター

言葉の頭に「おばあちゃんのぽたぽた」を付けるとイメージが変わる気がする。ギスギスとした言葉や雰囲気であっても、この言葉を付けるだけで長閑な陽の当たる縁側の言葉や雰囲気になると思う。どうだろうか。

「丸和、何だこの報告書は。全然駄目だ。一体なんだこれは」
「えっ、ええ」
部長に呼ばれ、叱責される課長の丸和さん.
「何だこれはと聞いているんだ」
「えっと、おばあちゃんのぽたぽた報告書です」
ぱっと広がる日の光。長閑な縁側の雰囲気。
「だから、暖かみがあるんだなあ。この報告書」
すっかり誤魔化される部長。

秋葉原の一角で行われた不正ソフトウェアの一斉取締り。押収されたDVDやBlu-rayの山。
「おい,これはどこで手に入れた」
販売していた人を追求する警察官.
「おばあちゃんのぽたぽたDVDとぽたぽたBlu-rayです。縁側で一枚一枚、手で焼いてもらいました」
緊迫した空気が、陽だまりの縁側の空気に一変。若い警官は郷里の母を想い涙する。

猟奇的な犯人の起こした殺人事件の現場。目を覆いたくなる遺体。あまりの惨状に吐いてしまう新人警官。
「おい、これはひどいな。あの刑事を呼んでくれ」
暫くして本庁から刑事が駆けつける。
「遅くなりました。おばあちゃんのぽたぽた刑事です」
おばあちゃんのぽたぽた刑事の登場に事件現場の雰囲気も和やかになるが、この惨状の前では力が及ばない。曇った空から日差しは降り注がない。
「うーん、これは、おばあちゃんのぽたぽた完全犯罪です」
ぽたぽた刑事のぽたぽた犯罪宣言に、雲の間から日差しが降り注ぐ。ぽたぽた刑長事Xぽたぽた犯罪宣言のコンビネーションで、閑な縁側の雰囲気に到達。被害者も浮かれて生き返る。

ベルが鳴る電話の受話器を取る。
「ぽたぽた、ぽたぽた。お宅のおばあちゃんが事故にあったから……」
ああ、おばあちゃんのぽたぽた詐欺だ。

「ぽたぽた、ぽたぽた」
縁側から声が聞こえる。覗き見ると陽だまりに見慣れぬお婆さんが座って、何やら醤油を塗りながら火鉢で焼いている。妖怪ぽたぽたババアだ。散らかっている新聞などを醤油を塗って勝手に縁側で焼く妖怪だ。縁側に物を散らかしておいてはいけない、昔からの言い伝え。

いつでも和やかにしてくれるぽたぽた。この先の人生、ピンチに直面した時は、おばあちゃんと共にぽたぽたと切り抜けたい。

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