お花を大切に

会社から来たメールに「ざっくばらん」という言葉が書かれていた。個人的にこの言葉を久しぶりに見た。一般的には珍しいという程の言葉でもないと思うのだが、自分にとって暫く見聞きしなかった言葉だ。メールの「ざっくばらん」を見ているうちに思ったのだが、何だろう「ざっくばらん」というのは。勿論意味は分かる。「遠慮ない様子、気さくな様子」という意味だろう。分からないのはこの「ざっくばらん」という言葉の語源だ。あまり日本語的でない響きを持つような気がする。どこからやってきたのだろう。

中世ドイツの貴族、ザック・バラン。彼は、当時の皇帝ルートヴィヒ4世に気さくに話しかけて処刑された伝説の紳士だ。皇帝に気さくに接し過ぎて処刑された彼は、民衆の心を掴み、「ざっくばらん」という言葉として残り、いつまでも民衆の心に生き続けたという。

「お前がやったんだな、いい加減白状しろ」
「だから刑事さん、俺はやってねえって言ってんだろ」
「仕方ない。これだけは使いたくなかったんだけどな。ヤマさん、あれ持ってきてくれ」
ヤマさんが持ってきたのは自白剤「ザックバラン」。警察で自白剤として使用が認められている唯一の薬品だ。チューっと注射すると、たちまち気さくに自白する。
「刑事さん、マジ大変だったんだって。証拠とか処分するのってさあ」
ザックバランがあれば、どんな難事件もすっきり解決だ。

昔は山の中でよく見かけたが、今では見かけることが少なくなったバランの木。晩秋には、大きな実を付けるという。このバランの実をざっくざっくと一口大に切り、出汁で煮て作るバラン汁は、鹿児島の代表的な郷土料理の一つだ。地元では、ざっくばらんとも呼ばれ、親しい友達や親類が訪れてきたときに振舞われるという。

ケニアに住むマサイ族の言葉で「ざっくばらん」とは、「象の尻の筋肉の部分」の意味。それが何故日本語で「遠慮ない様子、気さくな様子」を意味するのか。それは分からない。

件のメールの差出人は会社の人事。「来年度の新入社員と先輩社員の語らいの場を設けたから、ざっくばらんに新入社員と語らえ」との旨のメールだった。勿論このメールでの「ざっくばらん」の意味は、「気さくに話過ぎて内情を暴露しちゃいけないよ」という、本来の意味には含まれていないニュアンスが入っているのは分かっている。ドイツ貴族ザック・バランと同じ道を歩まないように気をつけたい。

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