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上半期 主観作品セレクション 後編

皆さんおはこんばんにちは!
(4211文字/約6分で読めると思います)

オリンピックの開会式を見た後に、ピクトグラムとか、ドローンとか色々話題になりましたが、あのドローンの演出ではIntelのドローンが1824台のドローンが使われたらしく、それだけのドローンが日本で飛ぶこと自体レアだなぁと思いつつも、最近中国が5200台のドローンを一斉に飛ばして自身のギネス世界記録を更新したというニュースを聞いて、自分の見えている世界ってまだまだ狭いんだなぁと痛感した今日この頃です。


あのドローン演出を見て、正直に言えばあれはあれで感動した自分がいたんですが、あれよりもでかい規模の演出を生で見たらそりゃもっと感動するんだろうなぁと思い、まぁ視野が広がりきったなんて言えることは一生ないと思うので、まだまだ広げる余白があるよってことを気付けたいい機会だと思い、今後も色々見ていければと思います。

先週は上半期に見てきた展示の内、印象的だった作品を超主観からご紹介しましたが、ああやって体験してきたものを再度思い起こし、改めて調べてみて、文字に起こすという過程は、自分の中でのふわふわした感覚を言語化して落とし込むことができたので、今週は前回に続いて後編版ということで引き続きご紹介していければと思います。(先週書ききれなかったという言い訳でもある)

展示を見ては、感じたことを文字起こしして、それを自分の実現したい世界観にどう落とし込んでいくか、、というのをひたすら考える地味で、実を結ぶかなんて分かりませんが、まぁ結ばなくても知らなかったことを知れるのは楽しいので、視野を広げるという意味でも続けていければと思っています。(ドローン演出でメンタルがやや不安定です笑)それではレッツ振り返り!

印象に残った作家さん達


■ イサム・ノグチ
@イサム・ノグチ 発見の道

彫刻を作品単体として見ることはありましたが、彫刻家一人の展示を見るのはこれが初めてで、正直自分にどう響くは分からないまま行ったら、全力で喰らって帰ってきたノグチ氏です。

何よりも衝撃的だったのが、「石の庭」という、香川県牟礼町の野外アトリエに残された複数の石彫が集結した空間でして、何というかこれは実際に生でみないと分からないと思うんですが、エネルギーと緊張感が凄まじく、途中で息が止まってしまうほどでした。(鑑賞に集中しすぎて呼吸すら忘れるくらいの緊張感)

冒頭に鎮座していた「無題」は、最晩年の作品であり、見る位置によってその姿が大きく変わっていく変遷がとても面白く、角度によっても表情が変わるのが新鮮でした。

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「泥かぶり」と言われる石肌と、大胆に削り取られた形、そして、ノミの跡という3つの要素の集合体となっていて、人間にとっての自然(元々は石だった)と、不自然の認識の境界がぐちゃぐちゃになる感覚を抱かせる「ねじれた柱」。ノミの跡が自然が削り取ったようにも感じ、ざらっとした石肌が逆に加工されたようにも感じる逆転現象が不思議ですね。。

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一貫して、「彫刻とは何か?」を問い続ける姿勢を貫きつつも、作品へのアプローチは多様で、どれも変態的なこだわりを感じられたのがこのイサム・ノグチ氏。

普段は二次元的な絵やデザインを見ることが多いので、自然と正面なり見る位置というのは決まってくるんですが、彫刻となるとどれが正面かは人によって可変であり、作品を見る視点が豊富で、視点ごとに解釈が変わっていく様こそ彫刻ならではの魅力だと気付けた展示でした。

■ ライアン・ガンダー
@ライアンガンダー氏が選んだ収蔵品展

コンセプチャルアートの旗手として知られるライアン・ガンダー氏。元々は個展として同時開催予定だったものが、イギリスロックダウンの影響もあり中止とされ、代わりに開催された収蔵品展でしたが、「ものの感じ方、捉え方」というものを考えさせられたユニークな展示構成でした。

一部の「色を想像する」では、モノクロの作品を中心に、作品情報と作品自体が対になっている展示方法で、作品名から作品を想像しても面白いし、作品から作家情報とか何で描かれているのかを考えるという過程そのものが鑑賞体験として新しかったです。

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二部の「ストーリーはいつも不完全・・・」では、展示空間そのものが薄暗く設定されていて、鑑賞者は配られたライトの光だけを頼りにそれぞれの作品を鑑賞するというこれまでにないスタイルでの鑑賞というこれまた斬新な手法。

今回はライトの当たった部分からしか情報を得られず、それができない歯痒さを感じたので、今まで絵を見るときは、まず絵の全体から醸し出される雰囲気や構成で印象を捉えようとする癖があったんだなぁという新しい気付きにも繋がりました。

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何より刺激的だったのは今回の展示におけるガンダー氏のお言葉で以下に引用させて貰います。

私が過去25年間、アーティストとして学び得た唯一最大のツールとは、「Let the world take a turn」(身を任せてみよ)を実践する能力だ。

時間と文脈によって作品への感じ方が変わることを許容すること。
違うこと、普通でないこと、不可思議なこと、変であることを怖れないこと。新しいこと、いつもと違うやり方に可能な限り挑戦し、遠回りすることでお定まりの状況を変え、ひととき視点を変えること。

私たちが一人一人が、何に注意を向けるかという自由を握っていること
芸術の鑑賞は単に網膜によるものではなく、認識的なものなのだ。

と、ガンダーさんが仰る通り、自分の解釈、価値観は可変で、今回の展示のように、空間設計や、視野の制限が入るだけでまた違った感じ方をするくらい人は不安定で、流動的な生き物であり、それこそが芸術鑑賞の醍醐味だということを教えてくれたのがガンダー氏です。

こうやって感じたことを言語化することも大事ですが、今感じてることも、状況次第では簡単に変わるものであって、言語化しきれない曖昧な感覚も大切にしつつ、その時々に抱いた感情をありのまま大切にすればいいのかなとも思えました。

「私たち一人一人が、何に注意を向けるかという自由を握っていること」
この言葉を大切にしつつ、作品そのものだけでなく、作品を自分の中に落とし込むプロセスと向き合えた展示会でした。

■ マンゴ・トムソン
@JAPAN   MAKI Collection

慣例や通常の認識を覆すような作品が特徴的なマンゴ・トムソン氏。MAKI Collectionとして展示してあった「Snowman」は、最初はあまりにも平然と置いてあったので、置き配のダンボールかなと思いきや実は塗装された銅という、だまし絵のような作品でした。

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人が感じる物質性というものは触覚よりも視覚に依存していることに気付けましたし、触ったり、持ったりしてもいないのに、「Amazon Primeのシールがあるし、配送用の段ボールか」と都合よく解釈してしまう人間の認識の緩さというものも感じることができました。

中でも有名なのが「TIME Mirrorsシリーズ」で、自分自身を鏡に投影すると、あたかもTIME誌の表示を飾れるようになるというシンプルだが、その着眼点はなかった。。!と思わされる作品。

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トムソン氏自身の制作過程に迫るインタビューで、「自分自身を面白がらせるようにしています。(中略)様々なレベルで味わうことができる作品を作ることを心掛けています。アート作品は、複数の解釈が可能で、様々なスピード感で体験できるものであるべきだと思います。」と述べているように、作品が表すメッセージを深堀りする過程を楽しむことも、シンプルな体験としても面白がれるという二面性を作品に落とし込めるところがさすがトムソン氏ですね。

■ 田村琢朗
@JAPAN   MAKI Collection

MAKI Collectionを鑑賞しに行った際にいきなり目に飛び込んできた田村琢朗さんの「Lovers」。2つのカーブミラーが普段目にすることのない形で絡ませられているという一見シンプルな構造かもしれないですが、生で見た時の「え、、あれ?カーブミラーですかこれ?」という一種の戸惑いのような感覚にもなってしまいました。

物事を俯瞰して捉え、元の文脈から切り離した提示から、モノのあり方を見直すというアプローチはとても独特ですし、普段は無機物なカーブミラーが絡みあってる様を目の当たりにすると、離れがたい恋人達のように擬人化して見えるという、まさに元の文脈からの離脱と、再思考をさせてくれた作品でした。

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「実はカーブミラーが交差点に存在していたときにも、すでに擬人的要素を内包していたことを田村は見抜き、作品として昇華させたのです。」と解説にありましたが、それを見抜くというか普段どんな視点で生きてるのか気になってしまいます。笑

自分の作品を持つ強さ

前編後編と2週に渡って上半期個人的に気になった作品セレクションを書いてみましたが、こうして振り返ってみると、やはり自分の考え方や価値観を言葉以外の作品として落とし込む行為はとても尊いものであって、同時にそれができる人たちを見てとても羨ましくなってしまいました。

前編でも触れたキース・ヘリング氏の「ダイレクトでしかもハッピーな何かなんだ」という考え方にもあるように、それが具体的にどういったものかを言葉にするのは難しいですが、ペインティングとして起こしたときに、視覚的にハッピーな何かを感じ取ることができます。(ヘリング氏のデザイン見るだけでワクワクしませんか?)

自分も一エンジニアとしてテクノロジーで世の中楽しく面白くしたいと思っているんですが、それが具体的にどういう楽しさなのか、どういう世界観なのかというところを人に伝えるときにどうしても口籠ってしまうのが悩みでして。。

そういったまだ言葉にできない感覚が落とし込まれた作品を見れば見るほど羨望の感覚も強くなってしまうので、今はWebアプリなどの制作が中心ですが、何か一つ作品を出していければと思っている今日この頃です。それを創作する過程のヒントになりうるものは全て吸収すべく、今後も色々と見て、触れて、体験していこうと思います。

「私たち一人一人が、何に注意を向けるかという自由を握っていること」

トレンドや、時代の潮流というものも大事ですが、自分が注意を向けるべきものは、自分の感性に素直に従って自由に体験していこうと思えました!ではまた!

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