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Mr.Children楽曲特集(1992‐1995)

4人組バンドのMr.Children。彼らの名前を知らない人は日本人の中にはいないほどの知名度を誇っています。
1989年に結成、1992年に小林武史さんプロデュースにてメジャーデビュー。わずか1年でミリオンヒットを達成し、その知名度を徐々に上げていきます。
デビュー31周年を迎えた今もなお、愛されているミスチル。今回は1992年~1995年にかけてのミスチルのシングルやアルバム曲を振り返っていきます。



1st Album「EVERYTHING」

1992年5月10日リリースの1stアルバム。勘違いされている方もいますが、ミスチルはシングルではなく「アルバム」でメジャーデビューされています。
7曲入りという非常にコンパクトなアルバムで、タイトルには「何よりも大切なものっていう気持ちを込めて。みんなにとって、そういう存在であってほしいし。僕らにも、記念すべき1枚目ですし」という思いが込められているそうです。また、現在も人気のシティーポップや渋谷系風の要素を取り入れたアルバムとなっています。

元々アマチュアバンドとしてライブハウス等で活動していたミスチル、当時「新人バンドをまっさらな状態からプロデュースしてみたい」と思っていた小林武史さん。当時の小林さんは、サザンオールスターズのプロデュースも担当しており有名でした。

1991年頃から小林さん所有のマンションでデモ音源制作を開始、都内の2つのスタジオで1991年の12月頭から1992年1月までレコーディングが行われます。
殆ど収録曲はアマチュア時代から存在している楽曲であり、小林さんがアレンジを加えたり、桜井さんが歌詞の変更を行いつつこのアルバムに収録されていったのだそうです。

オリコンチャートでは最高25位、当時の売り上げは芳しくありませんでした。というのも、当時一部以外でのミスチルの知名度はほぼ0に近く、完全な「新人バンド」という扱いだったためです。
サウンド的にも数年前までの80年代風というか、シンセがかなり目立ったポップなアレンジとなっています。
ジャケットは信藤三雄さんが手掛けていますが、渋谷系という雰囲気が強いですね。
なぜかCDのフリーマーケットでこのアルバムをよく見かけるのですがなぜだろうか…かなりの名盤だと思います。

 ロード・アイ・ミス・ユー

デビューアルバムの1曲目、世間的な知名度は低いですが名曲です。
イントロのギターカッティングと、バックでうっすらと鳴り響くオルガンの音色が気持ちいいキャッチーな名曲となっています。
歌詞は正真正銘の失恋ソング。「君」がいたあの夜にはもう戻れないと嘆く若干未練がましい歌詞ですがサウンドは割と爽やかですね。
バンドサウンドの醍醐味を生かしたいという理由で作られ、Bメロへの展開を意識して作られたそうです。
1995年のツアーから一切セトリ入りしていない楽曲ですが、どうも2002年の7月から開催予定だったホールツアー『Mr.Children TOUR 2002 DEAR WONDERFUL WORLD』のセトリに入る予定だったそうです。
デビュー10周年のツアーなので、可能性は割と高そうですがボーカルの桜井和寿さんの小脳梗塞発症により中止になりました。

 Mr. Shining Moon

こちらも隠れた名曲です。2曲目です。
キーボード(オルガン、シンセ)辺りが大活躍している楽曲で、小林さんのアレンジ力も光っていますね。
月が擬人化されている曲で、桜井さんは当時のインタビューで「彼女に会いたいと思っていた時に彼女の夢を見て、ふと目覚めると部屋の窓越しに月が見えて「月がそんな夢を見させてくれたんじゃないか?」って思った」と思い作った曲と語っています。
いわゆるシティーポップの分類に入る曲だと思うんですが、知名度が低いのが残念ですね…ライブでもしばらくやっていないのでぜひ今後何らかの機会に…

 風 〜The wind knows how I feel~

元々のタイトルは「風」で、アマチュア時代にこの曲を演奏していた映像も残されています。当時は若干現在と歌詞が違いましたが。
「誰も見てないとこで努力したものは誰も気づいてくれないけど、どこかで風は分かってくれる」というメッセージを込めて作られた曲なんだそうです。
アニメの主題歌になっていてもおかしくないような曲なんですが、アルバム曲でありノンタイアップです。また、ギターがかなり重なっており重厚なサウンドになっていますね。シンセもバックで聴こえますし。
ドラムも良いテンポでかなり好きなプレイの1つです。
この曲は、2007年7月16日に開催された『ap bank fes '07』でおよそ数十年振りに披露されました。この時は原曲に無い山本拓夫さんのサックスのソロが追加されていたり、全体的に小林さんのキーボード(CP80)が鳴り響いていたりアレンジされていたんですが…
このフェスは割とレア曲が演奏されやすいんですが、なぜ急にこの曲を持ってきたのか気になるところです…この頃のツアーでは初期曲を割と持ってきていたのでそれ関連かもしれませんが。

 CHILDREN'S WORLD

こちらもインディーズ時代から存在する楽曲です。歌詞がかなり変えられており、インディーズ版は主人公が母親から押し入れに閉じこめられている始末です。
子供時代のワクワク感を歌った楽曲です。「大人になっても、子供の頃のワクワクした心を持っていたい」という歌詞であり、歌詞がインディーズ版からかなり変えられたのだそうです。
若干ネガティブな歌詞もありますが希望に溢れており、ギターメインのポップなサウンドが何ともいい味を出しています。
「ミスチルのテーマソング」っぽい1曲であり、2015年に開催されたスタジアムツアー『Mr.Children Stadium Tour 2015 未完』では20年ぶりに披露。
若いファンの方も涙を流しており、この曲の人気さが伺えました。
20年ぶりの披露はやはり、こみ上げるものがありましたね。
ちなみに1994年10月から放送されたフジテレビ系列の水9ドラマ『若者のすべて』の挿入歌に使用されていたようです。


1st Single 「君がいた夏」

 君がいた夏

1992年8月21日発売の1stシングルです。元々アルバム『EVERYTHING』に収録されている曲なんですが、夏に合わせてシングルカットされています。
大阪府を中心としているFM局「FM802」では、1992年8月度のヘビーローテーションに選ばれていました。これにはメンバーも驚いたようです。
また、タイアップは当時一切ありませんでしたが、2017年7月から放送されていたNTTドコモ「NTT docomo group × Mr.Children 25th Anniversary コラボキャンペーン」のCM内で、挿入歌として使用されていました。
オリコンチャートでは当時週間69位を獲得しています。

桜井さんがよく訪れていた山形県鶴岡市の海を舞台にした曲で、「少し前まであれだけ賑わっていたのに、気づけばみんないなくなっている。あのとき感じた寂しさ、浜辺の景色は、その後もずっと、胸に残っていた。そして時々、ふと記憶の扉が開いて、思い出されるものにもなっていた」と語っています。
バックのアナログなシンセの音色、ジョージ・ハリスンを彷彿とさせるスライドギターが夏の終わりの切なさを引き立てています。
ライブでは1stシングルなのにも関わらず、2017年以降一切披露されていないんですよね…夏の終わり頃にはよくラジオで流れていますが。
ちなみにレコーディングはアルバムセッションの頃だったので、夏ではなく冬に行われたんだとか。
歌詞は夏休みの間だけ会える男女の甘酸っぱい恋模様を描いていますね。「おもちゃの時計」という歌詞がなんとも切ないですね…
PVは同年6月2日から5日までサイパンで撮影が行われ、8ミリカメラにて3泊5日に渡って行われたのだそうです。ちなみにその模様がジャケット写真にもなっています。監督は信藤三雄さんです。

 グッバイ・マイ・グルーミーデイズ

カップリング曲。結局、次作『KIND OF LOVE』に収録されるんですが、こちらも隠れた名曲です。
元々、アルバム『EVERYTHING』の収録曲候補として名前が挙がっていたそうですがなぜか収録されず、その後だんだん曲の良さに気づいてきたそうで、「アルバムにも入れよう」ということになり次作に回されました。
「君がいた夏」に相対するバンドサウンドを生かした曲ということでカップリングに収録されたともいわれています。
6月21日から都内の西永福のスタジオで1週間かけてレコーディングされたとか。

アルバムとこちらのシングルバージョンは表記無しですがミックス違いなんだそうで、といっても曲中のグロッケンの位置が違うというだけなんだそうですが…

歌詞は「君との恋が実り、憂鬱な日が終わる」という感じです。かなり端的ですが。先述のグロッケンやシンセがこの多幸感が溢れている歌詞を引き立てていますね。この曲もシティーポップの類みたいな…
また、ベースラインもかなり印象的ですし、1回目のAメロ後のドラムソロが何とも素晴らしいテクニックだなと思ったのを覚えています。


2nd Single「抱きしめたい」

 抱きしめたい

1992年12月1日発売の2ndシングルです。実は2ndアルバム『KIND OF LOVE』と同時発売なんですよね。
タイアップもかなりあり、フジテレビ系列で1996年1月から放送された月9ドラマ「ピュア」の最終回にて挿入歌、2017年8月からは高橋一生さん出演のNTTドコモ dヒッツ「娘の帰り篇」のCMソングとして起用されました。
桜井さんは当時のインタビューで「前向きなラブソングを書きたいと思って、書いたんです。前向きなラブソングって、Mr.Childrenにはあんまりなかったんですよね。別れを描いた曲はあったけど。永遠に歌い続けられるラブソングが作りたいなと思って」と語っています。レコーディング中からシングルとして発売されるだろうなという形になっていたそうです。
オリコン週間チャートでは当時56位を獲得しました。

元々クリスマスソングだったそうで、現在もクリスマス時期のライブで披露されるときは2番Bメロの歌詞が変更されて歌われています。
また、転調は全て小林さんのアイデアで決まったのだそうです。
また、JUN SKY WALKER(S)の宮田和弥さんの結婚式で披露するために作られた楽曲であることも明かされていますが、当日時間がなく泣く泣くカットされたのだそうです。
YAMAHAのCPシリーズと思われる印象的なピアノ、途中で鳴り響くクリスマスちっくなシーケンサー、2番からアクセントとして入るギター、間奏の山本拓夫さんのサックスソロ。名曲です。
1999~2005年にかけてライブで披露されるときは当時のサポメンであったキーボーディストの浦清英さんがサックスを生演奏されているのが意外でした。

売り上げはあまり芳しくなかったようですが、「君」に対する一途な思いが詰まったラブソングであることからか、ミスチルが流行り出した頃辺りから「抱きしめたいをカラオケで歌うとモテる」という謎の噂が広まる事態に。桜井さんのモノマネをしながらこの曲を歌う男性陣が全国各地で現れたのだそうです。逆に桜井さんだから良くてカッコつけて歌うのは引くという女性陣も多かったようですが…
PVは1992年の10月にフランスのパリで撮影されました。8ミリカメラで撮影が行われています。というのも、当時のミスチルのマネージャーがパリにただ行きたかったことから急遽現地で撮影することになっただけのようで。
そして、この曲と言えば2015年5月に発売された平浩二さんのシングル曲「愛・佐世保」が嫌でも浮かんできます…問題はこの曲のカップリング曲である「ぬくもり」。何とほとんど歌詞が「抱きしめたい」からの引用だったのです。9割ほど引用してました(笑)
作詞は平さんではなく、別の女性作詞家の方によるものだったそうですが、当時ワイドショーなどで大々的に報道され、同年12月にはこのシングルが回収される大騒動になりました。
因みにこの女性作詞家は「60を超えていて、ミスチルもよく知らない」と述べていましたが真相やいかに…

 君の事以外は何も考えられない

カップリング曲です。何と初のタイアップが付いており、1992年当時、矢崎総業のCMソングに起用されていたようです。恐らく、同じ映像のCMがYoutubeにアップされていましたが、BGMが他のアーティストの楽曲であり、現在もミスチルバージョンのCMは未発掘のようで…
ただ、TBS系列で夕方に放送されていたニュース番組『JNNニュースの森』内でこのミスチルのCMの目撃情報が多かったので見つかる可能性は高そうです。
アマチュア時代から存在している曲だそうで、桜井さんの彼女をテーマにして作られた甘酸っぱい楽曲です。
アマチュア時代のバージョンは元々、ドラムのJENこと鈴木さんがコーラスを入れていたとか。イントロの考案もJENさんが行っています。
メロディーもグロッケンやオルガンなどでキラキラしていますね。間奏のアコーディオン?もポップでいい感じです。3番のAメロの部分が個人的には好きですかね。

桜井さんは本作が収録されたカップリング集『B-SIDE』のライナーノーツで「恥ずかしい」というようなことを述べていました。確かに一途な歌詞である「抱きしめたい」と比べてもさらにまっすぐな歌詞ですし、90年代以降本当に演奏されていないので桜井さんにとっても忘れたい楽曲の1つなのかもしれません。


2nd Album 「KIND OF LOVE」

1992年12月1日に発売された2ndアルバムです。1993年の年間オリコンチャートでは130位、その後だんだんと知名度と共にランクアップしていきました。1995年2月20日に発表されたオリコン週間チャートでは13位を獲得しています。
1992年7月からアルバムの制作が開始、都内の新宿ヒルトンホテルのスイートルーム2部屋を10日も貸し切って制作およびレコーディングが行われました。基本的に部屋にシンセサイザーやハードディスクなどの機材を持ち込み、桜井さんと小林さんの2人で曲を制作、曲を完成させ、それぞれ家で待機している他のメンバーに曲を渡しレコーディングしていくという感じで制作されていったようです。
ギターもベースもコンピューターに繋いで直に録音されており、ドラムは別のスタジオでレコーディングしたそうです。また、本作から一部の楽曲においてベースとドラムは打ち込みを使用するようにもなったようです。
アルバム制作は1992年の9月まで続いていきました。
また、桜井さんはセッション中のうちの3日間で4曲を書いてくるなどかなりスムーズに進んだとか。

前作『EVERYTHING』よりも曲の幅が大きく広がっており、なおかつ作詞や作曲のクレジットが桜井さんと小林さんによる共作となっているものも割と多く見受けられます。
ポップな曲からバラード、ファンキーな曲、洋楽テイスト、ボーカルが違う曲など様々な曲が収録されていますね。
タイトルは当時のミスチルには「Love」が少し重い言葉ということで「愛のようなもの」を意味する「KIND OF LOVE」に決定したとのことです。

 虹の彼方へ

ビデオ作品『湘南爆走族9 俺とお前のGOOD LUCK!』の主題歌、また、2003年10月からフジテレビ系列で毎週日曜日に放送されていた情報番組『晴れたらイイねッ!Let'sコミミ隊』のテーマソングとして起用されました。
個人的にはもっと知名度が上がっていい曲なんじゃないかとも思いますね。

かなりポジティブで希望に満ち溢れた曲なのですが、元々はサイケデリックなアレンジの曲だったそうです。しかし、桜井さんによると「歌詞を作ってる段階で、前向きな歌詞だからアレンジもそれに合わせて変えようってことになって。けっこう力強い感じの、エイトビートになりました」とのことだそうです。
ホーン隊がとにかく目立っていて、そのバックのグロッケンやオルガンもミスチルらしいな~と思いますね。

ライブでは2016年に開催された『Mr.Children Hall Tour 2016 虹』で演奏されたことが記憶に新しいですが、私としては1996年6月21日に日本テレビ系列で放送された音楽番組『FAN』での演奏が記憶に残っていますね。
この時いわゆる深海期だったわけですが、発売当時とは違うどこか憂いを見せるような、笑顔のない桜井さんの表情に驚いたのを覚えています。

 Distance

隠れた名曲です。アルバム曲なので他の曲に埋もれていますが、正直シングルとして発売されていても良かったんじゃないかと思います。
作詞を桜井さん、作曲は桜井さんと小林さんの2人で行っています。
歌詞は失恋ソング。「君」との心の距離が出来てきて、別れを目の当たりにした主人公の心情が描かれています。
いつかは別れが来ることは分かっていた主人公。ただ、やはり未練が残っている様子が伺えますね。
桜井さんはこの歌詞を何通りも考えて作っていったのだそうです。

サウンドはギターメインといった感じでしょうか。ラスサビのバックで聴こえるギターがカッコ良いです。
そしてバックで聴こえる太いシンセパッドの音色。この調子でいくと間奏でもギターソロか?と思いきや、まさかのサックスソロ。意外性に度肝を抜かれたのを覚えています。
ちなみに意図していたのかは分かりませんが、ギターのディレイ(ギターの音色を遅らせる効果のあるエフェクター)がU2っぽいと田原さんがインタビューで述べています。
この曲も確か30年近くライブで流行ってないと思います…

 車の中でかくれてキスをしよう

アルバム曲ながらも割と知名度の高い楽曲です。
アマチュア時代から存在していた楽曲のようで、イギリスのバンドであるフェアーグラウンド・アトラクションのアルバム『ファースト・キッス』(1988)のジャケットから影響を受けて作られた楽曲だそうです。

歌詞はタイトルの通り。「君」は無邪気な性格のようでなんとなくこの2人の誰も触れてはいけないような密やかな恋愛の様子が汲み取れる歌詞です。
サウンドはギター、ピアノがメインで入っています。確かギターは外部のミュージシャンの方が演奏されていたらしいです。
そしてうっすらと入ったオルガン。こちらも幻想的な雰囲気を出しています。
また、歌、ギター、ピアノのみで「せーの」でレコーディングしたようで、緊張感が出ているとか。

歌詞を先に桜井さんは作ったようで、桜井さん曰く「ちょっと感受性の強い子を主人公にしてみようってことで。2番の歌詞をけっこう危ない感じにしたかったんだけど」との事だそうです。
ちなみにアマチュア時代とはかなり歌詞が違います。
2012年5月6日にTBS系列で放送された音楽番組『EXILE魂』ではATSUSHIさんが、2018年7月14日にTBS系列で放送された音楽番組『音楽の日2018』では家入レオさんが本曲をカバーしています。
また、2015年11月28日にZepp Tokyoで開催されたライブ『10th ANNIVERSARY LIVE TOUR RADWIMPSの胎盤』ではRADWINPSと桜井さん、田原さんによりこの曲が披露されました。
ライブでは更に化ける名曲です。

 思春期の夏 〜君との恋が今も牧場に〜

初めて聴いた人は「これ桜井さん?」と思うかもしれませんが、違います。
ボーカルはドラム担当のJENこと鈴木英哉さんです。
実は前々から存在していた楽曲だったそうですが、なぜかレコーディングされず、今回レコーディングされ収録されることになったそうです。
歌詞は牧場に現れる「君」へ片思いする主人公の気持ちを描いたもの。昼も夜も待って、毎度毎度話しかけようとするものの、どうすることも出来ずに日が暮れてしまう。
だけど、明日になれば恋の果実が実るように。主人公はそんな思いを抱いて過ごしている、そんな甘酸っぱくもある曲です。
作詞は桜井さんと小林さん、作曲はJENさんと小林さんの共同名義です。

サウンドはグロッケンやアコーディオン?が前面に出ていてどこかのどかな雰囲気がありますね。ドラムはどうも打ち込みのようです。
バンジョーとギターも目立っていますが、この曲のギターの一部はJENさんが演奏しているとか。確かJENさんはギターも弾けるようなので。レコーディングはヒルトンホテルの1室で行われています。
ライブでは当時割と披露されていたようですが、最近はなかなか…と思っていたら、2017年に開催されたツアー『Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25』でなんと22年ぶりに披露、同時に初の公式映像化となりました。
2020年、Youtubeでこちらのライブの熊本公演(映像化されたものと同様)が無料で公開されたのですが、なぜかこの曲の一連のおふざけ寸劇部分からこの曲のパートまで視聴者数がグンと減っていたのが記憶に新しいです(笑)

 星になれたら

1991年頃から存在する曲で、仮タイトルは「JR」「星になれたらいいな」だったそうです。
これはファンじゃない方もかなり知っている楽曲ではないでしょうか。ベストアルバムである『Mr.Children 1992-1995』にも収録されていますし、1994年10月から放送されたフジテレビ系列の水9ドラマ『若者のすべて』の挿入歌にも起用されています。
また、2022年1月にはユーキャンのCMで杏さんがこの曲を弾き語りながらカバーされていました。

歌詞は、夢を叶えるために故郷を離れる主人公の思いを描いたもの。また、クレジットは作詞が桜井さん、作曲が元JUN SKY WALKER(S)のメンバーの寺岡呼人さんと桜井さんの共作です。
桜井さんと寺岡さんは昔から親交が深かったらしく、歌詞も桜井さんが帰宅時に思い付いたのだそうです。
因みに仮タイトルの「JR」は、制作当時に流行していたJR東海『クリスマス・エクスプレス』のCMソングを依頼されたら?と仮定し、付けられたタイトルだそうですね。

メロディーはまたしてもグロッケンやシンセストリングスが入りポップな感じに仕上がっています。ラスサビでは転調しますが、この転調がまたいい味を出しているんですよね。

ライブではなかなか披露されませんね。ミスチルとしての演奏は2011年のライブツアー『Mr.Children STADIUM TOUR 2011 SENSE -in the field-』が最後になっています。そろそろ披露される頃ではないでしょうか?


3rd Single 「Replay」

 Replay

1993年7月1日に発売された3rdシングルです。週間オリコンチャートではなんと最高19位を記録、かなり知名度も高い曲ではないでしょうか。
桜井さんもファンを公言していた女優の牧瀬里穂さんが出演した江崎グリコ「ポッキー」のCMソングに起用され、このCM起用もヒットの要因だったのだと思われます。

歌詞は倦怠期の男女の様子を描いたもの。ただ、タイトルから「再び恋を始める」という前向きな意味合いにもとれるのが分かります。
歌詞に出てくる「3年目のジンクス」とは、「カップルは3年目に別れやすい、愛が冷める」というジンクスの事なんだそうです。
桜井さんはインタビューで「恋人同士なんだけど、倦怠期でつまづきの時期を、別れとかのテーマじゃなくて、前向きなもので書きたくて」と語っています。

何と桜井さんがこの曲を思いついたのはラジオ局なんだとか。プロモーションで全国のラジオ局を周っていた際、某ラジオ局で休憩中にこの曲のメロディーが降ってきたのだそうです。当時の桜井さんは、テープレコーダーにメロディーを録音することが多かったようですが、今回は忘れたためにラジオ局のマイクに歌い、局のテープリールに録音するという斬新な方法を取ったのだとか。
そして、楽曲は1993年の春には既に完成していたとの事。また、有名なのはサビが15秒となっており、CMの枠に収まるようになっているというエピソードです。実際、「画面から出てきたときにどういうインパクトで聴こえてくるのかみたいなことを考えて作った」そうですし。

メロディーですが、レコーディングは意外とすんなりと行ったそうです。ギターがいいですね。曲の構成も天才的ですし、またしても小林さんの爽やかなシンセの力が前面に出ています。夏の名曲としてもっと知名度が上がって欲しくはあるんですけどね…
ライブでは1997年を最後にしばらく演奏されていませんでしたが、2011年の野外ツアー『Mr.Children STADIUM TOUR 2011 SENSE -in the field-』で久々に披露され、同時に初映像化。その後また封印?状態にありましたが、2022年にこれまた久々に披露されました。

PVは岡田俊二さんが監督を務め、1993年の4月にアルバムレコーディングを兼ねて訪れたアメリカのニューヨークにて撮影が行われました。セントラルパークで撮影が行われ、かなり大がかりな撮影だったそうです。そして、今回から8ミリカメラでの撮影から通常のカメラでの撮影へと変更されました。
ただ、撮影を行った場所は普段はホームレスの方々が集まっている場所であり、今回撮影の為事前に動いてもらうようスタッフが指示していたそうなので、メンバーとしては色々と申し訳ない気持ちがあったとか。

 All by myself

前作であるアルバム『KIND OF LOVE』に収録された楽曲です。今回、カップリングとしてシングルカットに近い形となり発売されました。
桜井さん曰く、「Mr.Childrenの新境地」的な楽曲なんだそうです。
作詞、作曲共に桜井さんと小林さんの共作であり、桜井さんは「小林さんと私生活とかいろんな話をしてて。そのなかから、いわゆる "Mr.Childrenらしい" というイメージのなかで僕が出せなかった部分を引き出してもらえた気がします」とインタビュー内で述べています。

タイトルは「全ては自分自身で」という意味。何をしても空回りで、追いかけていた物さえも遠ざかってしまう。
だけど、冷静でいようと自分に言い聞かせ、「いいことはきっとある。全ては自分自身で切り開くしかないから前向きでいよう」と願い続ける、そんなポジティブ?ソングです。現在のミスチルの曲に割と違い雰囲気ではないでしょうか。

メロディーは、ファンクというのが近いのではないでしょうか。クラビネットやオルガンといったキーボード類が曲を彩っていますし、バッキングのギターとベースのメロディーがエモくてかなりいい味を出しています。
そして、間奏のおしゃれなガットギター。田原さんが弾いてるのかと思いきや、有名なセッションギタリストの小倉博和さんが演奏されているようです。

一時期はライブで盛り上げ曲として高頻度で演奏されていた本曲ですが、1997年以降は一切演奏されていません。当時発売されたツアーのドキュメンタリーVHS『regress or progress '96-'97 DOCUMENT』でこの曲のライブ映像が収録されているのですが、ホーン隊が加わってかなりライブ化けしている印象です。


3rd ALBUM「Versus」

1993年9月1日に発売された3枚目のアルバムです。週間アルバムチャートではなんと最高3位を記録し、1994年度の年間アルバムチャートに至っては、なんと48位を記録しています。

アルバムタイトルはポップな曲とバンド主体の曲が対になって収録されている事、己の内面での矛盾した2つの要素が戦いあっていることに由来して付けられたタイトルなんだそうです。
1993年2月に山梨県の山中湖にあるスタジオで合宿を開始、ここで大まかなセッションが開始されました。その後、都内のスタジオでプリプロダクションを行い、1993年の4月にニューヨークへ移動します。
ウォーターフロントスタジオというスタジオでレコーディングが行われ、「太い音で録る」というコンセプトのもと、スタジオにあるアナログのテープやビンテージの楽器、アンプを用いてレコーディングが10日間行われ、その間で5曲がレコーディングされました。これが何とミスチル初の海外レコーディングとなります。
その後、帰国し再び都内のスタジオで残りの曲のプリプロを行い、最終的に新宿ヒルトンホテルのスイートルームで残りの曲をレコーディングし終えたとの事です。

本作も前作同様、桜井さんと小林さんの共作も多く見受けられますし、中には小林さんが1人で作詞作曲を手掛けている曲まで存在します。
桜井さんは「前回のアルバムっていうのは、わりと歌を聴かせるっていう感じだったんですけど、今回は歌だけじゃなくて、ひとつひとつの楽器の音の必然性とかを考えて作ったんで、自分たちの中ではすごい刺激的なアルバムだと思うし、Mr.Childrenとして、他の音楽と差別化できるような音楽だと思うんですけどね」とも語っています。

アルバムジャケットはなんと沖縄県で撮影が行われました。1日目は軽い撮影、2日目に本番の撮影を行ったそうです。2日間とも雨だったそうですが、なんとか撮影が行われたとか。

 メインストリートに行こう

アルバム曲ながら、当時はライブの盛り上げ曲として定番の位置にあった曲です。1997年以降、長らくこの曲も演奏されず、2017年のホールツアー『Mr.Children Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ』で久々の披露となりました。こちらのテイクは映像化音源化ともにされています。
作曲は桜井さんと小林さんの共作です。

歌詞はドライブデートを歌ったもの。週末のドライブデートのワクワク感が詰まった名曲です。クラクションを2回鳴らして君を呼び出したり、なかなか当時の空気感が詰まった楽曲でもありますね。
サウンドはエルビス・コステロを意識して作られたそうで、サックスやチープなオルガンが効いたポップなサウンドです。
ドラムのパートもかなり聞いていて気持ちいいですね。

 マーマレード・キッス

またしても隠れた名曲です。桜井さんは山中湖でのセッション合宿でこの曲を作り上げ、「打ち込みのスローなテンポな曲で、しかもすごいいやらしい曲をやりたいなぁ」と考えながら作ったのだそうです。
実際、合宿中に小林さんがキーボードでコードを弾き、桜井さんがメロディーを付けながら作られていったとか。
作曲は桜井さんと小林さんの共作です。

歌詞はかなり踏み込んだもの。今までキス止まりだったそうですが、桜井さん自身もステップアップして今回は作り上げていったのだそうです。
桜井さんも「たとえば雨に濡れるというのと女性が濡れるというのをかけてあったり、初めての人のことというのも当然初体験のことだし。生まれてきたわけというのももちろんS〇Xをしなければ生まれてこなかったわけでしょう」と語っています。
中川さんもベーシストとしてお気に入りな曲なんだそうです。

メロディーは打ち込みのドラム、そしてこちらは生演奏とされているベースが目立っていますね。イントロのオルガン風のシンセもなかなかいい雰囲気です。
桜井さんの声もセクシーな感じですし、何よりもキーボードによる間奏が好きです。
こちらもライブでは長らく披露されていませんでしたが、2012年の『Mr.Children[(an imitation) blood orange]Tour』のドーム公演で久々の披露となり話題となりました。

 逃亡者

こちらのボーカルも「誰やねん」と思わずツッコんだ方が多いかと思われますが、前作に収録された「 思春期の夏 〜君との恋が今も牧場に〜」に引き続き、ドラムのJENさんがボーカルを務めています。
作詞作曲は小林さんが担当、というのもレコーディングの後半、桜井さんが風邪をひき寝込んでしまったために急遽、小林さんがこの曲を作り上げたとの事だったそうです。

JENさんは「ノリでボーカルをやる事が決まったんですよ。肩の力が抜けるポワンとした雰囲気の曲があったらいいよねって」と語っています。
歌詞は、幼少期に迷子になり泣いていた出来事から始まります。そこで大人達が「優しい言葉」をかけてくれた。主人公はそこで人生を感じるのです。
その後主人公は恋人が出来ますが、何故か出ていかれてしまいます。主人公は幼少期の体験を元に優しい言葉をかけようと考えますが、「黙っておく」という方法を取るしかないことに気づくのです。
そして、タイトルの「逃亡者」ですが、これは「薄暗い明日に向かっている」という意味合いで付けられていますね。
歌詞を見ていくと分かりますが、何が起こるかも分からない薄暗い明日へと逃げている主人公の思いが詰め込まれたタイトルです。

サウンドはトロピカル風でポップな印象です。印象的なリコーダーを演奏しているのは山本拓夫さんなんだそうです(クレジットに表記)。
ちなみに歌入れはヒルトンの一室で行ったそうで、JENさんはヒルトンの浴衣を着てレコーディングに臨んだそうです。
ライブでは桜井さんがリコーダーを担当したり、またあるライブではドラムを担当したり、何かと賑やかな演出で披露されていたそうです。

 LOVE

ベストアルバムにも収録された名曲です。恐らく知名度は世間的にはそこそこ…といった感じかもしれませんが、かなりの名曲です。
歌詞に関するエピソードは色々とあるのですが…まず、この曲の主人公は実際の彼女がいるそうなのですが、ここに出てくる「君」のことに興味を抱いています。
ピアスを付けて、見慣れない感じに変わってしまった「君」。前よりも綺麗になっている様子ですね。
そんな「君」は気まぐれだけどスタイルも良く、かなり綺麗だとの事。主人公もだんだん巻き込まれていきます。
ただ、自分には「勘の鋭い」実の彼女もいるから彼氏になる気もない。複雑な心境が歌われています。
だけど、「君」が他の人に染められていくのが気にかかるし、「君」にも昔野球で鍛えていた彼氏が存在している。
「友達以上恋人未満」の関係といった感じでしょうか。

メロディーはイントロからギターが目立っていますね。正確なリズムを刻むドラムの音も欠かせないですね。
そしてバッキングのピアノとシンセ。小林さんのアレンジも相まってキュンとしたアレンジに仕上がっています。
そして、いい意味で憎いのが転調。ミスチルは転調が割と多いのですが、この曲の転調は胸の奥にグッとくるような雰囲気です。天才。
桜井さんは「この娘もいいな、あの娘も良いなって気持ち、そのまま書いた(笑)」と語っているほか、楽曲(特にサビ)の展開は、山中湖での最初のセッションで作り上げられていったそうです。
ライブでは周年ライブで特に演奏されており、メンバーもお気に入りの曲ではないでしょうか?
そして、有名なのが中川さんの友人が大学の卒業論文でこの曲を取り上げたということです。どういう内容だったのか気になりますが…

 my life

失恋ソングですが、そんなことを感じさせないくらいにポジティブで明るい楽曲です。ベストアルバムにも収録されています。
歌詞は、「君」に対する未練をボヤキながらも、「いいことばっかあるわけないよな、それでこそmy lifeなんだから」「ドラマみたいな上手くいく話は滅多にない」と自分で自分に言い聞かせてる主人公の様子を描いたものです。
実は2年前にも失恋し、二度と恋愛するか!と主人公は誓っていたようですが、またしても恋をし、挙句の果てに失恋してしまったようです。

アコギとピアノ、グロッケン、シンセが目立っている若干シンプルなサウンドです。Bメロからはエスニックなシタールが加わり、アウトロでは口笛が加わります。ライブでは、ブラスが参加していることが多いですね。

「62円」というのは、当時の郵便料金であり、同じ世代の人に共感してもらうために「テレビゲーム」や「62円」という歌詞を取り入れたそうです。
ちなみにファンレターを読んだ後、お風呂でメロディーを思いつき、その後スラスラと書き上げていった楽曲なんだそうです。


4th Single 「CROSS ROAD」

 CROSS ROAD

1993年11月10日に発売された4thシングルです。日本テレビ系列で1993年10月から放送されていた水曜ドラマ「同窓会」の主題歌に起用されました。また、2021年には映画「夏への扉 -キミのいる未来へ-」の挿入歌としても起用されています。
オリコンチャートでは初登場でなんと9位を獲得、その後、1994年4月18日付で売り上げがミリオンを達成、1994年の年間チャートでは15位を獲得しミスチル大ヒットの火付け役となった曲です。
また、この曲でミスチルはテレビ朝日系列の音楽番組「ミュージックステーション」に初出演しました(1993年12月17日の放送)。

桜井さん曰く、「同窓会」のドラマの内容は大まかなものしか教えられてもらっておらず、「舞台設定を細かくしているものじゃないから、どうとでもとれるという感じ」と語っています。確かに歌詞の解釈は不要なような…
また、製作途中に「遂に100万枚セールスする曲が出来た!」と桜井さんが叫んだエピソードも有名かと思われます。

メロディーはシンセストリングス?やブラスが効いてポップな印象です。桜井さんは「暗いって言うとアレですけど。キャスティングもすごいベテランの人じゃないですか。舞台でやってもおかしくないキャストなんで、それで暗いメロディだったら、僕は観る気はしないだろうなと。で、後ろに流れている曲がポップスなほうが、観る気がするんじゃないかと思って」と語っていますが…
ちなみにレコーディングは1993年9月下旬にツアーの前後の合間を縫って徹夜で行われたそうです。
かなり名曲にも関わらず、本当にライブでの披露回数は少なく、2023年、桜井さんは単独名義で出演したライブで「僕自体この曲の良さが分かってないんです」と発言、ただまだ無名に近い状態だったので、タイアップを取るのに必死で曲に関して色々と考える時間が無かっただけのようで…

PVはよく分かっていませんが、神奈川県横須賀市の米軍長井住宅基地で撮影されたとの情報があります。ミスチルのPVでは初の国内撮影だったんだとか。
ちなみに同じ場所で後にスピッツが「ロビンソン」のPVを撮影しています…
桜井さんはPVについて「悩みじゃないけど、そういうものを抱えた人間が、いろんな人との出会いによって新しい何かを見つけて向かっていくっていう、力強い歌なんで……その、歌い手側の誠実さ、一生懸命さみたいなものが伝わればっていうのがあって……」と語っています。

 and I close to you

元々は3rdアルバム『Versus』に収録されていた楽曲で、今回カップリングとして新たにシングルカットされ発売されました。
桜井さんがボビー・ウーマックという歌手の方に影響を受けて作り上げた若干ファンクかつポップな曲です。
歌詞は失恋した「君」に言い寄り、付き合おうと狙う下心?ありありの主人公を描いたもの。作曲は桜井さんと小林さんの共作です。
イントロからポップでバックではコンガ?パーカッションがリズミカルに鳴り響いています。
そして印象的なのはブラス。ストリングスも主張しすぎることなく入っていますね。また最後には再びエモい転調。ノリノリになれますね。

この曲といえば、昔はミスチルのライブでも定番曲の枠にあったわけですが、やはり桜井さんも恥ずかしかったのか1997年以降長年に渡って放置状態に。
が、しかし2011年7月17日、静岡県で開催されたフェス「ap bank fes '11」でスキマスイッチがBank Bandと共にこの曲をカバー。桜井さんもボーカルとコーラスで参加し、ミスチルとしてではなかったものの、およそ十数年ぶりの歌唱となりました。
その影響なのか分かりませんが、2016年のホールツアーの仮セトリではアンコールでこの曲を入れることが決まっていたそうです。


5th Single 「innocent world」

 innocent world

1994年6月1日に発売された5thシングルです。当時、日本コカ・コーラ「アクエリアス ネオ  アクエリアス イオシス」のCMソングとして起用され大きな話題となりました。
ミスチルのアンセム、そして更にスターダムに押し上げた楽曲と言っても過言ではないでしょう。
1994年6月13日付けのオリコン週間チャートでは初の1位を獲得、売り上げも伸びていき、100万枚を売り上げ1994年度の年間オリコンチャートでは1位を獲得しました。

歌詞は恋愛風味は抑えられ、希望に向かうそんな力強さを歌っているかのような気がします。桜井さんは「年齢や立場や状況で様々だと思うけど、同世代の10代後半〜20代後半あたりの “働く男の子” にとっては、まさに“僕の歌”、ホントそうなんだよ、と呟いてしまう歌だと思う。新入社員に贈る曲です」と語っています。
バッキングトラックをレコーディングした段階で、仮タイトルは「innocent blue」だったそうで、歌詞もかなり恋愛寄りでした。
しかし、新宿ヒルトンホテルの一室で歌詞を書くたびに小林さんから幾度もダメ出しを喰らっていたそうで、最終的に2月頃、「誰もが歌えるようなラブソングじゃなくて、桜井和寿っていう、今24歳の1人の男がこの日本で生活してる中でしか唄えない歌を書いてみたら?」と提案されたそうです。
その後、帰りに都内を運転中に歌詞が思い浮かび、停車しつつメモを取りながら、自宅で歌詞を完成。桜井さんは当初はその歌詞に懐疑的だったそうですが、メンバーや小林さんにも絶賛され、名曲が誕生したのだそうです。

メロディーはギターがメインで、バッキングでピアノやキーボードが彩りを加えているという印象です。ちなみにイントロの考案は田原さんが行っています。
ちなみに製作段階でタイアップは一度諸事情で中止となったそうですが、その1か月後に撤回されています。

ライブでは定番曲となり、桜井さんが1番を丸々観客に歌わせたり、あるいはサビの部分を歌わせたりすることでも有名です。
かなりライブでも盛り上がる1曲です。
PVは信藤三雄さんが担当し、都内で撮影。撮影日は晴れだっただめ人工雨を降らせながらの撮影になったそうです。
ジャケットも信藤さんが担当。信藤さんはこの曲を聞いた時、「目が隠れていて口だけが叫んでいる」という絵が浮かんできたとか。

 my confidence song

アコースティックギターによる弾き語りのシンプルめな曲です。小林さんがタイトルを考案した楽曲の1つなんだそうです。
元々、「花はどこへ行った」というタイトルの洋楽を日本語でカバー、カップリングとして収録する予定だったそうですが、歌詞に関する諸事情でお蔵入りに。因みにこちらは1995年2月20日のフジテレビ系列の音楽番組「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」でも披露されています。

社会を少し斜に構えて見ているような歌詞で、これも今までのミスチルとは違う、どこか小林さんのアドバイスが濃く出ているような歌詞ですね。
風刺というか、皮肉というか、政治的な歌詞となっています。

桜井さんは当時大阪府のラジオ局であるFM802でラジオ番組「FUNKY STUDIO 802 MUSIC GUMBO」を持っており、東京から大阪まで新幹線でよく移動していたようです。
その車内でこの曲の歌詞は書かれたようで、それもあってかシンプルな歌詞ですね。
ちなみに桜井さんのインタビューで稀にタイトルが出てきていましたが、ライブでは1度も披露されたことはありません…


4th ALBUM 「Atomic Heart」

1994年9月1日に発売された4枚目のアルバムです。オリコン週間チャートでは1位、オリコン年間アルバムランキングでは3位を獲得しています。
売り上げは343.0万枚であり、ミスチルのアルバムの中では1番の売り上げです。
大ヒット曲「CROSS ROAD」と「innocent world」を収録した本作。アルバム曲の完成度も高く、名盤としても名高い作品の1つです。
1994年3月24日、新宿ヒルトンホテルにて本作の制作を開始、3月下旬から4月上旬にかけて本作収録のアルバム曲がだんだんと制作されていきました。
そして4月中旬から山梨県の山中湖にあるスタジオでアルバム曲のレコーディングや収録曲の吟味が行われていったのだそうです。

それから数か月後、アルバム制作は終わりに差し掛かりますが、関係者からアルバム内容について指摘を受ける状態に。聞いていて分かると思うのですが、今までの路線とは完全に違う作風であり、「実験的」とまでも評されました。
関係者はポップな曲を望んでいたわけであり、ミスチル側と対立。結局関係者側が折れ、実験的な作風のままgoサインが出たのだそうです。
桜井さんも本作について「今までのMr.Childrenの詞にあったロマンティックでセンチメンタルな部分をどこかで排除したような詞を書いてみようというのがあって」「とにかく、愛があってロマンチックに、僕は君を愛しているという感情だけではない部分の、本能的な結び付きや人間のおおもとを言葉にしてみた時に、このタイトルが結びついたんですよ」と語っています。
完全にこのアルバムでスタイルを変えていったようです。
確かにラブソングというよりは性愛だったり、失恋、浮気、遺伝子をテーマにした楽曲だったりと多岐に渡っていますね。
また、打ち込みやシンセを生かした曲が増えている気もします。

アルバムジャケットは信藤さんが担当しています。
本作発売後の1994年9月18日からライブツアー『mr.children '94 tour innocent world』を、1995年1月7日からアリーナをメインとしたツアー『Mr.Children '95 Tour Atomic Heart』が開催。
前者は桜井さんらのパフォーマンス、後者は情報量を多めとした演出込みでのライブにしたかったようです。
ちなみに1995年6月3日に公開され後に映像作品化された「【es】 Mr.Children in FILM」にてこの2つのライブの映像が一部収録。ライブの完全公開は公式からはまだされていないようです。

 Dance Dance Dance

実質1曲目の楽曲です。アルバムではインストの「Printing」が付いているほか、ライブでも必ずセットで演奏されるためにひとまとまりの印象がありますが、ベストアルバムを聞いていた方は単体のイメージが強いのではないでしょうか。
桜井さん曰く、「今この世の中にある情報とか欲望がびっしり詰まっている曲」とのことだそうです。
仮タイトルは「ひよこの武道館」「ひよこのトンネル探検」「ひよこのトンネル探検・魔界編「メディアン・エイリアン」だったとのこと。
一連の「ひよこ~」は、ミスチルが当時ひよこ(若手)であったこと、「メディアン~」は、情報に踊らされた世の中を皮肉って付けられた仮タイトルなんだったそうです。

実際歌詞は皮肉に溢れており、コネクションによって揉み消された真相について歌ったり、恋していたグラビアアイドルに会ったところ、理想と違い嫌気がさしたなどと毒を吐いたりかなり尖っています。
また、「今夜も一人 lonely play」という歌詞、これはアレです。恐らくサザンの曲からの影響だと思いますが…もうアレですね。
ちなみに作詞は桜井さん、作曲が桜井さんと小林さんの共同名義です。
メロディーに関してはディストーションの効いたギターのリフが印象的です。またオルガンも踊っており、間奏では「Printing」の音がサンプリングされています。
ちなみにドラムはマイクをバイクのマフラーの中に入れてレコーディングしたそうで、独特の音に仕上がっています。
余談ですが、「グラビアの彼女」とは桜井さんもファンを公言していた女優の牧瀬里穂さんのことだとか。ライブに招待したのにも拘わらずスケジュールの関係か来てもらえずこの歌詞が生まれたのだそうです。

ライブでも特効をバンバン使い披露されるいわゆる盛り上げ曲でして、会場のボルテージがこの曲で一気に高まります。
個人的には2019年の『Mr.Children Dome Tour 2019 Against All GRAVITY』のテイクがベストですかね…とにかくカッコよすぎていい意味で鳥肌が…

 ジェラシー

隠れた名曲です。このアルバムの核となっている曲ではないでしょうか。
仮タイトルは「実験くん1号」だったそうです。確かに実験してるな~という印象の名曲です。
遺伝子や性愛、哲学的な恋愛について歌った今までとは色の違う楽曲ですが、性愛という点では前作に収録された「マーマレード・キッス」と近い部分があるかもしれません。
桜井さんは遺伝子の本を読んでこの曲を書き上げたようで、「東京でも地方の人や海外の人がどんどん入ってきて、セ〇クスして子供が生まれる。遺伝子って環境の変化に適応するために、なるべく自分とかけ離れた遺伝子と結びつきたい意志があるって話を聞いて、あぁ、なんか恋愛って言いながらもそれは実は遺伝子の力であったり、どうしようもない力っていうのがどこかにあるんじゃないのかなって思い出して」と語っています。
ちなみに1994年3月28日に制作されたようです。

作詞は桜井さん、作曲は桜井さんと小林さんの共作で、メロディーはシーケンサーやシンセを生かしたテクノポップ調のサウンドに仕上がっています。
ギターソロ含めどことなくダークな楽曲でクセになります。
桜井さんの声も立体音響のようなエフェクトが掛けられており、浮遊感がありますね。
ライブでは滅多に披露されませんが、2016年春に行われたホールツアーのセトリ案に本曲が挙がっており、披露されていれば20年近くぶりとして話題になっていたかもしれません。
ちなみに1994年10月から放送されたフジテレビ系列の水9ドラマ『若者のすべて』の挿入歌(正式には喫茶店内のBGM)に使用されていたようです。

 雨のち晴れ

ベストアルバムにも収録されたファン人気の高い楽曲、仮タイトルは「環七での危険な遭遇」だったそうです。
前々作の「KIND OF LOVE」からJENさんボーカルの曲が定番化していき、本曲もJENさんのために作られたのだそうです。
桜井さんは当時、曲作りやそれによるプレッシャーによって疲れており、気楽な気持ちで「JENがもしサラリーマンだったとしたら?」をテーマに1994年4月下旬に制作。しかし、桜井さんが作詞中に本曲への愛着が湧き、急遽JENさんが歌う案は取り消されたとのこと。

メロディーはギターのカッティングだったりオルガンだったり、のんびりとした印象ですね。またよく聞くと女性コーラスも入ってるのに気づきます。
桜井さんはこの曲をシングルとして発売する案も考えており、なんだかんだでタイミングを逃し後回しにしていったところ、結局これも何かの縁かカップリングとして収録されることになったそうです(アレンジバージョンですが)。

歌詞はサラリーマンの生活について歌ったもの。彼女からも出ていかれ、会社でも自分だけが浮いており、上司からも愚痴を言われ、実家に帰れば「早く孫を抱きたい」と結婚を急かされる。
そんな波乱万丈な人生ですが、雨降りの人生もいつの日か晴れる日が来るだろう、人生は雨のち晴れなんだとポジティブに乗り切っているそんな楽曲です。締め切りに追われた桜井さんの心情も何となく表れている気がします。

ライブでは本当に滅多に演奏されず、演奏されたとしてもフェスが多めです。特にap bank fesに至っては2005年、2008年、2023年と3回に渡って披露されていますし…
また、2016年頃にウカスカジーのライブで桜井さんがカバーしたという情報もありました…

 Over

ミスチルの失恋ソングの中では3本の指に入る名曲です。こちらもベストアルバムに収録されていますし、何よりも本アルバムのCMソングに起用されていたので聞き覚えのある方も多いかもしれません。
仮タイトルは「2beatでKAN」、歌手のKANさんを意識して作った楽曲であることからこのような仮タイトルが付けられたそうです。
また、ギルバート・オサリバンのヒット曲「Alone Again (Naturally)」も特に歌詞では意識されているそうです。

歌詞は、心変わりが原因で別れた彼女を思い出し、彼女の癖や特徴を羅列し「愛してたのに…」と未練に駆られるというもの。
キスを風邪が伝染るといけないという苦し紛れの理由で拒まれていて、完全に避けられているのが分かりますが、主人公はまだ未練があるらしく毎晩君が眠る前に電話をかけようとしたり、今後街で偶然会った時は綺麗になっていないでほしいと願ったり…未練ありありですね。
ただ、タイトルは「恋の終わり」と「この恋愛を乗り越えていこう」という2つの意味がかかっているそうですが、結局主人公は「思い出になる」と割り切り、切り替えて未練を断ち切った?様子です。
そして、「顔のわりに小さな胸」、よく話題に出るこの歌詞ですが桜井さん曰く「セールスポイントとしてはちょっと低い小さな胸だけど、僕はそれが大好きだったよ」という意味が込められているそうです。詳しくは「ヒカリノアトリエ」のカップリングで…

メロディーはバラードでもなく、トランペットがアクセントとなっており少しばかり明るめなのですが、やはり切ない印象です。
またラスサビで効果的に入る鐘の音が主人公の新たな決意を祝っているかのような…
1994年5月上旬にレコーディングされ、コーラスはビーチ・ボーイズを意識したものだったとのこと。
そして決め手はギターソロです。Cメロの後に入るのですが、このフレーズがなかなかニクい。あまり注目されませんが好きなフレーズです。

ライブでは2000年代に入ってからは2005年のap bank fesを除き、桜井さんの弾き語りで披露されることが殆どでした。が、2022年のツアー『Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス』でキー下げですが、バンドアレンジで披露、同時に映像作品化され大きな話題になりました。


6th Single 「Tomorrow never knows」

 Tomorrow never knows

1994年11月10日に発売された6枚目のシングルです。木村拓哉さん主演で1994年10月から放送されたフジテレビ系列の水9ドラマ『若者のすべて』の主題歌として起用され、オリコン週間チャートでは1位、1995年の年間シングルランキングでは4位、オリコンの歴代シングル売り上げランキングではなんと8位にランクインしています。

仮タイトルは「金のしゃちほこ」「明日への架け橋」です。1994年8月8日、ミスチルは愛知県名古屋市の名古屋城でイベント「SOUND BREEZE '94」に出演。当時の最新曲含め全12曲を披露しました。
その前日、桜井さんは愛知県内のホテルで前日から制作していた「若者のすべて」のタイアップ曲作りに悩んでおり、30分かけてAメロ、Bメロ、サビを制作。同時に小林さんが制作していたコード進行と桜井さんが作ったAメロのコード進行が偶然にもぴったりと合い、この名曲が誕生したのです。
歌詞はある程度作っていたようですが、9月上旬に小林さんからのアイデアを受け変更し、現在の状態になったとか。

歌詞は「痛みを突き放し、そこに出口を見つける」というのがテーマだそう。闇に手を伸ばしもがく主人公の力強さが伝わってきます。
タイトルはビートルズの同名曲からの引用でしょう。桜井さんはあまりビートルズに詳しくないようですが(2023年のラジオ談)、小林さんがビートルズのファンであったため恐らくそのようなきっかけで…だと思われます。
ちなみに有名なエピソード、1番の「勝利も敗北…」の部分は東京都練馬区の石神井公園で思い付いたフレーズなんだとか。
ちなみにメロディーはイントロから名曲感が漂っており、こちらもキーボードでサウンドがかなり覆われていますね。ピアノ、オルガン、シンセ、キラキラしているサウンドです。
そしてサックスソロ、山本拓夫さんによるものですが、スコーンと爽快感、突き抜けた感じがあり気持ちいいソロです。
ライブでは「oh oh」の部分を観客が歌うことでも有名ですね。

そして、1997年のアルバム「BOLERO」に本作は収録されていますが、こちらはタイトルにに(remix)が付いており厳密に言えばアルバムバージョンとして収録されています。
現在はサブスクでたやすくシングルバージョンも聞くことが可能ですが、それ以前しばらくは8cmシングルを入手するのも割と困難だった時期があったために…
と言いながら、あまりシングルとアルバム収録のリミックスバージョンには明確な違いはなく… 
どうも「ベースとドラムがシングルでは打ち込み、アルバムでは生演奏に差し替え」ということらしいですが、あまり分かりません…
1994年9月上旬に歌詞を変更したタイミングでレコーディングしたようですが、当時メンバーが多忙だったため苦肉の策で急遽打ち込みにしたとか…
そもそも桜井さんも1997年のインタビューで本曲を最後に収録した理由について「ボーナストラック」的な発言をされていましたし。
一時期は音楽番組に出るたび、代表曲としてこの曲を披露することも多かったですね。

PVも有名なのではないでしょうか。1994年11月17日から1週間ほどオーストラリアにメンバーは滞在。ヒット記念旅行やドキュメンタリー撮影も兼ねてだったそうですが、このPVのメインのシーンはグレートオーシャンロードで撮影されました。スペース・カムという撮影用ヘリコプターを用いて撮影されたそうです。
今では発売と共にPVが公開されることが殆どですが、本作は発売から数週間後にPVが公開されるというパターンでした。
ジャケット、PVは信藤三雄さんが担当。このジャケット、実物のハトなんだとか。

 ラヴ コネクション

アルバム「Atomic Heart」の収録曲。個人的に最初聞いた時はあまりピンと来る曲ではなかったんですが、アルバムで聞いていくごとにハマっていったいわゆるスルメ曲です。
仮タイトルは「What Do You Want」「背骨男」です。「背骨男」は身内ネタのようであまり曲とは関係ありませんが…笑
歌詞は女性に転がされる男性の心情を描いたもの。かなり歌詞を見ていくごとに魅力的な女性なのではないかと思われます。
またサビは英語詞が多めですね。
サウンドはロックンロールっぽいアレンジに仕上がっており、ギター中心で固められたサウンドにブラスが加わったアレンジとなっています。
どうもローリングストーンズを意識して作られた楽曲なんだそうで、作曲は桜井さんと小林さんの共同名義となっています。
1994年5月頃に制作され、レコーディングも行われたようですが、桜井さんは1993年頃から「ストーンズみたいな曲を作りたい」と語っていたようです。が、小林さんが却下したことによりお蔵入りになっていたとか…

ライブでは「盛り上がれる曲」として作られたようで、90年代は多くのライブで披露されていました。しかし、現在は2009年以降一切演奏されておらず封印状態に。恐らく盛り上げ曲が増えてきたのが原因でしょう。
この曲が披露されると女性ファンの黄色い声が増えるのも印象的でした。
そしてこの曲、実はPVも制作されているんです。
こちらもストーンズを意識したPVで、4人の演奏シーンが含まれている楽曲でもあるんですがなぜか映像作品化もされず長いこと未公開に。
が、2020年4月18日にミスチルの公式Youtubeチャンネルで公開され、ようやく日の目を見ることとなりました。


7th Single 「everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-」

 everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-

1994年12月12日に発売された7thシングル、オリコンチャートでは週間1位、1995年の年間オリコンシングルランキングでは21位を記録しました。
シングルはこれまでバラードやポップな物が多かったですが、ここにきて変化球としてなかなか過激なロックナンバーが投下されました。
作詞は桜井さん、作曲は桜井さんと小林さんの共同名義です。仮タイトルは「即席ロック」でした。

歌詞は、報われないサラリーマン、女優を目指し上京し、枕を行い売れようとするも報われない女性、「教育ママ」と呼ばれ娘を18年間育てたものの、娘は学校をサボりデートクラブに通っていることが発覚した報われない母、頑張っている人(仕事の出来る人)を僻んで「あいつは変わった自惚れ屋さん」とけなす連中が登場します。
でも皆病んでるし、だけど必死で生きてる。そんなことが歌われています。
そして気になるのがラスサビの「退屈なヒットチャートにドロップキック」の部分。当時のチャートも名曲が多いのですが、がっつり皮肉ったような歌詞ですね…

メロディーはギターのリフが印象的。聞こえにくいですがBメロ部分のベースラインがブンブン踊っています。
また、1番と2番の間奏にはシンセソロ、2番明けの間奏には桜井さんによるギターソロが入っています。痺れますね~。
ちなみにコーラスにはMy Little Loverのakkoさん、謎のユニット、es sistersが参加しています。
桜井さん曰く「サザンでいう"勝手にシンドバッド"的なお祭りバカナンバーが欲しかった」と語っており、1994年9月下旬、桜井さんと小林さんでライブで盛り上がれる曲をコンセプトに作られたようです。
最初に桜井さんがリフを考え、小林さんがコード進行を決め、次に歌詞を制作。メロディーとの兼ね合いで作詞には苦労したようです。
また、歌詞は小林よしのりさんの「ゴーマニズム宣言」を意識しているとのこと。
そして10月初旬にレコーディングが行われました。

元々本作は「Tomorrow never knows」のカップリングとして制作された曲なんだそう。しかし、10月初旬「カップリングではもったいない」と判断され急遽シングルとしての発表が決定しました。
ただ、歌詞が過激なことが要因となりタイアップは付いていません。

ジャケットは信藤さんが担当。PVは存在していないものの、CGのes君というキャラクターが登場する高城剛さんが手掛けたCMが放送されました。
ライブでは割と演奏されていますが、2017年12月10日、CBCラジオで放送されているラジオ番組「大谷ノブ彦のキスころ」に桜井さんが出演された際、この曲について「この曲の何が良いのか分からない」と発言。ただ桜井さんは割とこういう発言が多いので…実際同年のドームツアーでもやってますし…

そして個人的に好きなテイクは1994年12月23日のテレビ朝日系列「ミュージックステーション」。桜井さんはスーツ姿に眼鏡で出演。様々なコスプレの女性に囲まれながら歌っている映像が印象的です。
後に桜井さんはあの中に「オカマさん」がいたことを告白、誰かは明らかになっていませんが楽しそうな演出でした。

 クラスメイト

アルバム「Atomic Heart」に収録されていた元アルバム曲です。「Atomic Heart」発売時のCMソングとしても用いられていました。
元々シングルとして発売される予定でもあったそうです。仮タイトルは「女子供の a long time ago」となっています。
歌詞は過去のクラスメイト(彼氏がいる女性)と同窓会で再会し、その3カ月後に恋に落ちてしまう主人公を描いたもの。
実際に2人でデートに出かけていますし、完全に浮気してますね…
また途中の「しばらくは彼の話は~」の部分、これは「しばらく別れの話は~」とかかっているとかいないとか…

サウンドは90年代っぽいというか、フリューゲルホルンの音色がシティーポップさを出していますね。また、あまり目立ちませんがキーボード(オルガン)の音色もアクセント的に入れられています。
そして注目すべきなのはギター。本曲のギターソロは都会を感じさせるようななかなかの名演なのですが、演奏しているのは何と小倉博和さんなんだそうです。
イントロから聞こえるシタールのような音色も実はブズーキという弦楽器であり、こちらも小倉さんが演奏されているとか。

ライブではなかなか演奏されず…という楽曲ですが、個人的には『Mr.Children Concert Tour Q 2000-2001』のテイクが最高なので是非視聴してもらいたいところ。色気が凄いです…


8th Single「【es】 〜Theme of es〜」


 【es】 〜Theme of es〜

1995年5月10日に発売された8枚目のシングルです。ミスチル個人名義としては1995年1発目の作品となっています。
1995年の年間オリコンチャートでは12位、歴代オリコンチャートでは74位にランクインしています。
1995年6月3日に公開されたMr.Childrenのドキュメンタリー映画「【es】 Mr.Children in FILM」主題歌、KADOKAWA「'95 角川文庫の名作100」のCMソングとして起用されました。

歌詞は精神医学者のフロイトが説いた「es」をテーマにしたもの。「本能的かつ衝動的な欲求」という意味合いであり、桜井さんが当時音楽雑誌「月刊カドカワ」に掲載していたエッセイを元に作られていったのだそうです。
そして、印象的なサビの部分。こちらは当時1995年1月17日、関西地方で発生した「阪神淡路大震災」をきっかけに書かれたのだそう。
この時メンバーは数日後のツアー『Mr.Children '95 Tour Atomic Heart』の札幌月寒グリーンドーム公演のため、前入りで札幌市内のホテルに滞在中。
数日前から本曲のデモ作りを行っており、この日も札幌市内のホテルでプリプロを行っていたのだそうです。
その際にテレビから流れてくる報道を受け、急遽歌詞を現在の方向に変更、10日後に完成していったのだとか。
元々は「三丁目の角を曲がって」というようなデタラメな歌詞だったそうですが。

メロディーはシングルとしては初となるストリングスを壮大に生かした曲です。今までのシングル曲はシンセ類で固めた曲がどうしても多いイメージでしたが、本作はバンドとストリングスが前面に出ています。
ストリングスは桑野聖ストリングス。そして間奏では、山本拓夫さんのソプラノサックスのソロが入ります。
アウトロのギターソロはキング・クリムゾンの代表曲「The Court of the Crimson King」のイントロの引用らしいですが、これももしかすると洋楽好きな小林さんのアイデアなのかもしれません。

PVはオーストラリアで撮影。1994年11月17日から「Tomorrow never knows」のPV撮影のため1週間オーストラリアに滞在していた際に、ついでに撮られていたそうです。この時はまだ楽曲自体完成していなかったようですが。監督は信藤さんと小林さんが担当しています。
所々に当時のライブ映像が挟まれているのも確認できます。
ジャケットも信藤さんが担当。様々なオフショットがコラージュされています。

本作は滅多に演奏されず、2000年代頃から桜井さんが「この曲を演奏するときは解散するとき」と発言したという真偽不明の噂が流れ始めました。
そして、2010年。2010年7月17日~19日まで静岡県のつま恋 スポーツ広場で開催されたフェス「ap bank fes '10」の18、19日にミスチルは出演。
この曲をなんと数十年ぶりに披露してしまったのです。加えて、この前年のツアー名が「終末のコンフィデンスソングス」だったことも理由で大騒ぎに。ミスチルが解散or活動休止するのではないかと泣き出すファンまで現れたそうです。(実際桜井さんは1999年頃のインタビューでも好きな曲に挙げていたのでこの発言自体尾鰭が付いたものだと思われる)
その後、翌年のツアー『Mr.Children Tour 2011 "SENSE"』でも普通にセトリ入り。同時に初映像化され話題となりました。
偶然ですが、このツアー期間中の2011年3月11日に東北地方で東日本大震災が発生。数公演が延期、また東北地方での公演は考慮され中止となりましたが、ライブにてこの歌詞がますます響いた方も多かったのではないでしょうか。

 雨のち晴れ Remix version

1994年のアルバム「Atomic Heart」に収録されたアルバム曲「雨のち晴れ」のリミックスバージョンです。ミスチルのシングルのカップリングにリミックスバージョンが収録されるのはこれが初です。
1994年9月18日から開催されたライブツアー『mr.children '94 tour innocent world』で披露された「雨のち晴れ」の音源であり、原曲を越える9分36秒という収録時間となっています。

元々、ライブツアーのみの音源だったようですが、ツアー開催時に「音源化してほしい」という意見が相次いだようで、それによりカップリングとして発売。2007年のカップリング集「B-SIDE」に収録されています。
ちなみにリミックスを担当したのはRIP SLYMEのDJ FUMIYAさんなんだとか。
サンプリング元はHouse of Painの「Jump Around」、Jeremy Jordanの「Wanna Girl」であり、スクラッチ音が入っていたり、間奏に当時のサポートメンバーであった小幡英之さんのサックス、桜井さんの日記風の語り、「虹の彼方へ」のサビ部分、「Rain」の雨の音が追加されていたりとかなり原曲とは違うアレンジとなっています。

ただ原曲の良さを壊しておらず、長いですが聞きやすいアレンジとなっています。
この曲のライブ映像は1995年6月3日に公開されたMr.Childrenのドキュメンタリー映画「【es】 Mr.Children in FILM」で視聴することが出来るのですが、田原さん以外のメンバー(サポメン含む)がサラリーマン姿で寸劇を行うという演出です。アウトロ部分では桜井さんがバク宙を決めようとするのですが… ただこちらはVHSとレーザーディスクのみでしか発売されておらず、今はなかなか貴重な映像作品となっており…是非再発して欲しいです!


9th Single「シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜」

 シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜

1995年8月10日に発売された9枚目のシングルです。1995年の年間オリコンチャートでは5位、オリコン歴代シングルランキングでは40位にランクインしています。
当時のミスチルとしては珍しく、ノンタイアップの作品でありながらも大ヒットを記録。恐らく多くの方が知っている作品の1つではないでしょうか。

歌詞は無愛想な「君」に片思いした主人公の物語。サビの表現は天才的ですし、全体的に「人が恋に落ちる」様子を哲学的に書いた歌詞はなかなか深いなと改めて感じます。
また、とにかくサビの韻踏みが凄い。ミスチルといえば韻踏みが印象的ですが、この曲はよくその代表作として挙げられているイメージです。
2番Bメロの歌詞は男性の性的な…こういう遊び心もミスチルらしいです。

サウンドは桜井さんが「声が似てる」と指摘されたことのあるエルビス・コステロを意識した物。あえて「自分からやってみよう」とオマージュするに至ったのだそうです。「Pump It Up」という楽曲を意識しているようなので是非聞いてみてください。
ストリングスの音色、所々で入る鐘の音、アウトロで聞こえるチープなオルガンの音色、間奏の山本拓夫さんによるサックス。とにかくポップですね。
個人的にサビの「エー!エエー!エエー」の裏メロが好きですね。
通常と違いデモ音源も小林さんはほぼ関与せず、桜井さんが大幅に仕上げた状態だったそうです。

PVは信藤さんと小林さんの共作。かなり「Pump It Up」のオマージュですし、桜井さんがコステロ風の姿で歌っているのが印象的です。目黒区のスタジオで撮影されています。
ジェットコースターのシーンは翌日撮影。山梨県の富士急ハイランドで撮影されました。JENさんは何故か「デビルマン」の不動明のコスプレで参加。
2テイク撮影されたそうです。(中川さんとJENさんは二日酔いの真っ最中で安堵したとか)
また、途中には当時開催されていた野外ツアー『Mr.Children STADIUM TOUR -Hounen Mansaku- 夏祭り1995 空[ku:]』の映像が収録されています。何と言っても、このツアーの為に作られた曲だったとか。
ドキュメンタリー映画「【es】 Mr.Children in FILM」が映像作品化された際に、ボーナスとしてこのPVが収録されました。

ジャケットは信藤さんが担当。猿のイラスト、田原さんによる直筆の文字が書かれており、桜井さん曰く、「新たな気持ちでリスタート、猿の気持ちでリスタート」とのことだそうです。
そして発売日、フジテレビ系列で放送されていたバラエティー番組「笑っていいとも!」の人気コーナー、「テレフォンショッキング」に奥田民生さんからの紹介で出演。
桜井さんは当時放送されていた本作のCMと同様のウェットスーツで(ウェットスーツの桜井さんが、本曲をギターを弾きながら海で歌うCMが放送されていた)、他のメンバーは猿の格好で登場しました。

ライブでは1997年の披露以降、長年演奏されていませんでした。「盛り上がる曲」をコンセプトに作られたものの、桜井さん自身が恥ずかしいと感じたらしく…
その後、2007年のツアー『Mr.Children "HOME" TOUR 2007 -in the field-』で10年ぶりに披露。前年度の2006年7月16日、「ap bank fes ‘06」にてスキマスイッチがBank Bandと共にこの曲をカバー。これがきっかけとなり、久々の演奏に至ったのかもしれません。
最近では盛り上がりに感動したのか、ミスチルや個人名義のライブでも割と披露している印象です。

 フラジャイル

ライブ音源です。1995年5月3日に東京都渋谷区宇田川町付近(渋谷パルコの隣の駐車場)でゲリラライブを開催。その際に披露した音源をそのまま収録しています。仮タイトルは「ハルマゲドンはご機嫌斜め」です。
映像自体は1995年6月3日に公開されたMr.Childrenのドキュメンタリー映画「【es】 Mr.Children in FILM」に収録されています。
桜井さんは「この曲は、当時話題になっていたニュースやなんかから、いろいろ触発されたというか。いろいろ考えたことがそのまま言葉になっているような気がします」と語っています。
確かに、1995年当時の殺伐とした雰囲気をそのまま歌詞にしているような印象です(地下鉄サリン事件やオウム真理教の報道など)
また、桜井さんは『“Acoustic Revolution with Orchestra” 奇跡の地球』(1995年4月~5月にかけてミスチルと桑田佳祐さんらで行ったライブ)と関係があると語っています。
歌詞は元々「喉を壊しても上手に~」だったそうですが、言い訳がつかないために「胃腸」に変更されたとか。

メロディーはビートルズの「Helter Skelter」風のアレンジを施しているようです。
メンバーはミスチルの4人、フェンダーローズのエレクトリックピアノを演奏しているのが小林さん、サックスで小幡英之さん、コーラスとタンバリンで女性の方が参加されていますね。

実は1995年の野外ツアー『Mr.Children STADIUM TOUR -Hounen Mansaku- 夏祭り1995 空[ku:]』、1996~1997年に開催されたツアー『Mr.Children TOUR "REGRESS OR PROGRESS" '96~'97』でもセトリ入りしています。
また、1995年6月9日放送の日本テレビ系列の音楽番組「FAN」でも披露。ライブ音源では実は歌詞を間違えているのですが、こちらではちゃんと正式な歌詞で歌われています。

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