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第6回 植木を育てる人、売る人

植木や草花を愛でる園芸文化が庶民まで広く浸透するようになると、そうした人々を対象にした仕事も増えていきます。今回はその一部のご紹介です。

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一口に植木屋といっても、「地植え」を中心に扱う人、「鉢植え」を中心に扱う人、特定の品種だけを栽培する人、新たな品種を開発する人など多岐にわたりました。
規模の大きな植木屋になると、広大な敷地内でさまざまな植木や草花を育てていたようです。お客さんはその植木屋の敷地へ自由に入り、見物をすることができました(気に入ったものがあれば購入もできます)。春ならつつじや桜、秋なら菊や楓…植木屋の中には、江戸の中心部から半日ないしは1日で行ける観光地と化しているものもありました。

江戸の中心部で商売をする植木売りや花売りもまた、棒手振りに限らず、露店での販売など、さまざまな形で活躍しました。(露店の様子は第2回を参照)

ところで、江戸の面影が色濃く残る日本の暮らしを描き残した画家に、ロバート・ブルーム(1857‐1903)がいます。私は彼の「花売り」という作品を見るたびに「色とりどりの菊に挟まれて煙管を吹かしているこの花売りの男性は、一体どんなことを考えているのだろう…」と想像してしまいます。
今回絵に描いた植木売りの男性もまた、何を見つめて、何を考えて地面にしゃがんでいるのでしょう。特に何も考えていないかな…。急に視線を投げかけられたら、驚いてしまうかもしれませんね。

(笹井さゆり)


【参考文献】
青木宏一郎『江戸の園芸――自然と行楽文化』ちくま新書
日野原健司,平野恵『浮世絵でめぐる江戸の花』誠文堂新光社
監修:岡部昌幸『JAPAN ロバート・ブルーム画集』芸術新聞社

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