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自分で作る真空管パワーアンプキットのススメ

音が素直で柔らかく艶があると定評の真空管パワーアンプを作ってみませんか?部屋を暗くして真空管の発するほのかな光を見ながら、半導体では味わえない音に出会える事でしょう。デジタル機器からの再生もこのアンプを通過させることで聴いていて疲れない癒しの音楽に変身するはずです。
出力管に300Bを使ったアンプを自作してみようと思いましたが、部品レベルから集めるのも面倒になってきたのでサンバレーJB300B (発売元:ザ・キット屋)のキットを発注した。それでは逸る気持ちを抑えて製作に取り掛かりましよう。

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キットの内容
パワーアンプ 整流管:5AR4 入力段:12AX7(パラ接)*2 ドライバー:EL84(3結)*2 出力管:300B*2真空管付KIT 300B(サンバレープレミアムセレクト) EL84(JJ製) 他(ゴールド・ドラゴン製)最大出力8W+8W *ステレオ 出力管ヒ-ターは直流点火でハムノイズを低減。
全て手配線の中上級向けのキットであるが、シングルアンプで部品点数と調整箇所も少なく、マニュアルを熟読し、はんだ付けの腕を少し磨けば初心者でも可能。
同様のKITは人気で機種も多くある。並行して完成品でも発売されている。
ヴィンテージアンプの回路図、真空管規格表、半田付け配線のコツなどの詳細はHP「管球王室」を参照ください。
https://kankyu.ehoh.net/

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1. 準備 
キットが届いた。梱包は丁寧になされていて安心感がある。

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マニュアルや説明は、わかり易く書かれているので手順に沿って部品を確認。完全自作のように接続図を見て部品を集め組立て配線する手間から比べると天国である。マニュアルには部品リスト、回路図、実体配線図、組立て手順、が載せられている。

取り揃えておくもの
①工具 
ニッパー、ラジオペンチ、ワイヤーストリッパー、ドライバーセット&ボックスレンチ、ヘックスレンチ、ピンセット、紙やすり、ハンダゴテ、作業手袋など。

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②副資材 
結束バンド(付属品より長い物)、シリコンゴム系接着材、スズメッキ単線1φ位少々・・あると便利 フラックス入り糸半田0.8φ位のもの

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③測定器 音源
マルチテスター(1000V位の高電圧と抵抗値が測れる物、感電防止の手袋使用する)
レベルメーター付のレコーダー、パソコン+DAC等(入力レベルとバランス確認用)・・あると便利 
CDプレーヤー、FMチューナー等(アナログLINE-OUT付)の基準音源

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2.組立て部品取り付け-① 
シャーシにソケットとトランス類を方向確認して取り付ける。塗装シャーシなのでアースポイントは指示通り忘れずに塗装を剥がしておく。300Bソケットはタイト製で絶縁・耐熱性が高いが割らないように注意して取り付ける。

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マニュアルにはないがパイロットランプ(豆電球、整流管ヒーターに接続)には高圧が架かるので空ナット等でシャーシから浮かせる。トランス、チョークコイル類とシールドケースは重厚な作りである。ケースを被せる前に1次側は高圧が掛かるため、誤配線と端末処理のチェック、1,2次とも各巻線極性を確認する。(間違えると音は出ても位相定位で悩む事になる!)NFBの配線も忘れずに引き出しておくこと。

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3.組立て配線 -② 
組み立て用の実体配線図や写真を参考に、付属の色分けされた電線を指定箇所へ半田付け配線する。
ヒーター、アース、高圧V、ソケット内配線など下側になるものから配線をする。
抵抗など上になる部品を取り付け後、枠を載せ前後パネルの端子、電源SW、音量RVを配線する。
はんだ付けは少し熟練が必要なので、初心者は不要な部品などで練習しておくと良いだろう。

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4.組立て配線 -③
ここで少しづつ作業状況をチェックして作業工程の落ちがないか?を確認しょう。
意外に先にやっておくべきこと(部品の下側になって見えなくなる配線など)を忘れているものだ。
注意!美観中心の長い引き回し配線や不用意な結束をしない、(特にヒーター配線と信号配線など)

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5.組立配線検査
部品や配線を半田付けした箇所をスポットライトと拡大鏡を使い見る角度を変えて入念に検査する。裏側や部品の陰で見えにくい箇所はデンタルミラーで確認し不審な箇所はピンセットなどで配線を動かして確認、部品の取り付け間違いが無いか、誤配線が無いか配線図と比べてチェックする。特に電源部の電解コンデンサー、ヒーター電源整流ダイオードの極性には注意。テスターのオームレンジで各高圧電源がアース落ちしていないか絶縁チェックをする。


6.通電 調整 -① 
数百ボルトの高圧を扱うので、感電防止と火傷防止のため作業にはゴム引き手袋使用が必須である!また電圧測定時は直熱ヒーター保護のため本などを管以上の高さに積み上げ、通電時は管内フィラメントが垂直になるよう本体を上下反転して行う。(管ソケットが過熱するため10分以内の形態とする)

①.配線と電解コンの極性、半田付けチェック後、真空管なしで電源を入れ、パワートランスのAC出力電圧を確認
②整流管を除く球を挿しヒーター点灯と電圧を確認、異音、異臭、発煙に注意しすぐ電源を切れる用意。通常では電源の瞬断はヒューズを飛ばす場合があるのと球を劣化させるので行わないこと。
③整流管を挿し各高圧DCを確認、ヒューズが飛ばなければ、まずは成功!

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7.通電 調整 -② 
各部電圧チェック後電源を切り本体を通常の上向きに戻し、左右とも音量ボリュームを絞り出力をスピーカーに接続、電源をオンして暫く待つ、ハム音が少し出てくればOK。ハムバランサーRVを回しハム音が最少になるように調整する。ハム音が調整しても小さくならないときは、配線確認と周りのアースが確実か確認する。CDプレーヤなどからライン入力を少しいれ音量RVを少しずつ上げていき音が出たら大成功!!

半田配線のコツ、回路用語などの詳細はHP「管球王室」を参照ください。

8.通電 調整 -③
いきなりフルパワーにしないで小音量をいれ数時間慣らし運転をするとスピードとしなやかさがUPしてくる。エージングは場合によって数十時間かかるので根気よく聞き込み、じゅうぶんエージングしょう。 電源投入時は予熱時間を1分以上とり、電源の瞬断はヒューズを飛ばす場合があるのと球を劣化させるので行わないこと。動作点が変化して大電流が流れるため電源の再投入は数分おいてから行う。

9.試聴と細かな調整
聴き込むうちに左右のバランスなど違和感があればLとRの球を交互に一段ずつ入れ替えて見る。ハムバランスなども再調整する。ジャストマッチするところがあるはずだが、これで直らなければ部品と音量ボリューム、パラ接続、NFBなどの配線を再チェックする。

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試聴日誌
さて楽しみの試聴である。今まではPPアンプだったので、シングルはパワー不足が心配だったが、JB300Bは数値を超えた聴感パワーが有り、さらに期待通り直熱3極管の特徴である高域が繊細で抜けの良さと中低域の厚みを併せ持つ三ツ星KITでした。スピーカーはなるべく効率の良いもの(86db以上)がお勧めです。
御存じのように真空管はソケットのピン配列と動作の規格さえ同じなら差し替えが可能であるため、各メーカの真空管を交換して音色を楽しむこともできる。

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試聴用機器  カートリッジ:MMタイプ  シュアーM44G (CDプレーヤなどを本機に直接つなげる場合は不要)
真空管プリアンプ: マランツ #7(USA) (CDプレーヤなどを本機に直接つなげる場合は不要)
スピーカー: タンノイ スーパーレッドモニター(SRM)(高効率の機種なら何でもよい)
試聴レコード バッハ  バイオリン協奏曲1,2番  チェンバロ協奏曲1,5番 チャイコフスキー、ラフマニノフの ピアノ協奏曲1、2
ザ マイルスデイビス セクステット(JAZZ)オリビアニュートンジョン(ボーカル)他 ジョン・コルトレーン(JAZZ)

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