水の継承者ノリア


https://www.amazon.co.jp/水の継承者-ノリア-エンミ-イタランタ/dp/4890137386

北欧発のディストピアSF小説。著者のエンミ・イタランタはフィンランド出身の作家です。フィンランドの小説は初めて読みましたが、SFといっても女性が書いた作品なので全体的に柔らかくて読みやすい

舞台は水が貴重品となったしまった時代。茶人として生きる父とその娘ノリア・カイティオ。街は軍によって支配されている。まずフィンランド人が日本の茶道にここまで精通しているという事に驚きました

我が家に残されてきた「茶人の書」にその一つが記されている。水は世界で起きた全てを、人が誕生する以前からこの瞬間にいたる全てのことを記憶して、流れのままに運んでゆく。水は世界の動きを感じ取り、いつ求められ、どこで必要とされるのかを知っている。泉や井戸は何の説明もなしに枯渇することがある。まるで水が自らの意志で逃れるように、新たな場所を求めて地下へ姿を消してしまう。水が姿を見せなくなる時は、自然に逆らう仕方で縛り付けられるとわかっているからだ。だからこそ泉が涸れるのには意味があり、それを受け入れるべきであることを茶人は知っている。


養老孟司さんも仰ってましたが、日本は水が豊富だから「水は資源である」という認識がとても薄い。でも、このまま無計画に使い続けていればいつか必ず水に困る時代が来ます。本書は戦争や環境問題をSFという大きな物語で包んだパイのように、読み手を楽しませると同時に取り組むべき課題について提起してくれている

フィンランドといえばムーミンが有名ですが、フィンランド語と日本語はイントネーションが似てますよね。他にも日本と共通していることが多く木の家に住んでいたり靴を脱ぐ習慣があったり、あと日本人と一緒でシャイな人が多いらしいです

お茶が好きな人も多く、日本人と感性が似ているからこそ茶道が受け入れられているのではないでしょうか。フィンランド人は日本の「侘び寂び」を理解できる数少ない人達なのかもしれない

『水の継承者ノリア』は映画化も決定しているそうです。楽しみですね。2月には新作も出るということで、そちらも楽しみ。エンミ氏は今ぼくがとても注目している作家さんです。多くの日本人に読んでほしい作品。


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