寝ることも人生だ


『ねむり』/村上春樹

眠ることが出来なくなってしまった女性の物語。カット・メンシックの挿し絵が美しい

ぼくは幸いにも今まで不眠という状態になったことがない。どんなに辛い時でも眠れてしまう。もはや眠ることが特技だと言っていいのかもしれない

人間は何も食べなくても飲まなくても一週間くらいは生きられるらしい。世の中には一日に青汁一杯だけで生きている人もいる。しかし、寝ないで生きている人はほとんどいないだろう。人は3日くらい不眠の状態が続くと幻覚を見るようになると言われている

ぼくも最高で3日くらい起きていたことがある。その時は脳内麻薬が分泌されていたせいか、すごくハイな状態になった

そんな食事よりも大切な睡眠が現代社会で軽視されていると感じるのは気のせいではないだろう。SNSでは毎日のように誰かが食べたものや飲んだものの写真がアップされている。皆そんなに食べることが好きなのか?早く家に帰って寝ろよ、と思ってしまう

「寝ることも人生だよ」

ある先生にそう言われたことがある。忙しい世界にいると寝ないで仕事したとか、何日寝てません自慢が当たり前のようにまかり通っているけれど、ハッキリ言ってそれはもう病気だ。人は寝ている間に体のメンテンスをしたり脳の情報処理をしたり夢を見たりしている。一度も点検していない車で公道を走り続ければどうなるか、そんなこと子供にだってわかることなのに。アホな大人にとっては寝ないで頑張ることがステータスになるらしい

睡眠時間には個人差がある。3時間で足りる人もいれば8時間必要な人もいる。8時間必要な人が6時間睡眠を続けると病気になる。ナポレオンは短眠だったと言われているが、実際にはちゃんと8時間寝ていたらしい。最近では勤務時間中に昼寝を取り入れている企業もあるということで非常に良い傾向だと思う。健康と長生きの秘訣はぐっすりと眠ること。これに尽きる

眠れない。それが、どれほど大変なことか。この小説を通してあらためて眠ることの大切さを学ぶことができた。寝ることも人生だ。


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