見出し画像

忘れる事 22日目

治療を続けると決めて、久しぶりに病院に行き、数日経ちました。

今日急に、「あれ?私なんで治療続けてるんだっけ?やめるタイミングだったんじゃない?」と、まるで夢でも見ていた様な感覚になりました。薬の管理とか、家事はきちんと出来ているので、正常です。大丈夫です。

夫にそれを伝えたら、「妻、めちゃくちゃ真剣に治療を続けるか、やめるか考えてたよ。」と。よくよく考えてみるとそうなんですが、「そう言われたら、そうだったよね。」と、何十年か前の出来事の様。そして、他人事の様。

日記を見ながら記憶を辿ると、「また流産したらどうしよう…。」とか、「メンタル不調になったら…。」とか不安は沢山あった訳で。経済的な事も考えて夫と話し合いながら一ヶ月間、悩み続けました。子供のいない未来を想像し、アルバイトをしてみたり。今思えば気の焦りは答えを出したい焦りでした。今後どうするかハッキリさせたかった。そして、続ける選択をしたのですが、心の奥では始めから決めていたように思います。ただ、怖さを払拭したかっただけだと。そんな一連の心の葛藤をまるっと忘れていました。自分でも信じられません。

元々は考えすぎ、臆病、引きずり過ぎの私の性格。もう、治療の痛みも、流産の悲しみもその時は辛かったはずなのに、昔の出来事の様に事実としか覚えていないです。人間は良くできているなと。

10年前に全員がすごく頭の良いご家族にお会いしてお茶をしていました。その時、その方は不在だったのですが、その中でも特にポテンシャルが秀でている妹さんの話になりました。私は単純に「頭の良くて羨ましい〜!」という話をしていたのですが、ご家族は「でもね、忘れるって人間にとって大事なのよ。」と、淋しげにおっしゃったのが印象に残っています。頭が良すぎてストレスも多い様で、妹さんは生きづらいと。その時はピンと来なかったのですが、今なら良くわかります。痛みや悲しみまでリアルに覚えていたら、きっと治療に耐えられない。続けられていないです。や、頭の良い人は単純に羨ましいんですけどね。

諦めるにも勇気と覚悟が必要だし、続けていくのにも気力や体力、お金もいります。考えて、悩んで当然だと思います。これまでは声をかけていただいても「がんばったのは医療関係者の方で、私は何も…。」という気持ちがどこかにありました。でも、改めて振り返って日記を書いてみると、忘れてるだけで色々一生懸命だったなと、労ってくださった方々の言葉を素直に受け入れられるようになりました。わたしもがんばった。だからもう結果はどうなるかわからないけど、せめて最後は余計な肩の荷物を降ろして、身軽な状態で進んで行こうと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?