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人まばら、メコン川のマイナー国境【タイ、ラオス旅行記③】

 どーんと天井の高いイミグレーションの建物があるばかりで、行きかう人はまばら。タイ・チェンコーンとラオス・フエサイの間にある国境のことである。メコン川をはさんでタイとラオスが向かい合っており、ここで橋を渡って越境できる。国境というからにはいろんな人が出入りしにぎやかなものかと思うが、まったく対極にあった。出入国審査もまったく行列がないし、国境と国境の間にさびれた売店や両替所があるだけだった。
 まずタイ側を出国。それからバスで橋を渡るが、客が集まらないと発車しないシステム。それがなかなかいっぱいにならない。小さなバンでしじゅう行き来すればよいと思うのだが、待っているのは都市間交通にも使えそうな大きなバス。国境間のシャトル輸送なので無料と思いきや、確か25バーツくらい取られた。しかもなぜだかラオスから戻るときは20バーツかなんか、少し安いというよく分からない設定であった。
 そのへんで腰掛けているうちにようやく客が集まった。ラオスに入ると、トゥクトゥクの運転手がひまそうに待っていた。そしてまたしても客が集まるまでフエサイの中心部までは行かないという…。国境間バスで一緒だった欧米系の若者はツアーか何かだったらしく、待ち構えていたバンでさっさとどこかに行ってしまった。あとには私と、たまたま道中一緒になったアメリカ人の若者だけがぽつんと残されたのだった。


 今回の旅程はこちら。フエサイには1泊してまたタイに戻った。



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 パヤオからチェンコーンまではバスで約3時間半。終点、チェンコーン中心部の手前でバスを降りると、国境行きのトゥクトゥクが待っていた。写真の画面奥がタイ側イミグレーションでその向こうがラオス。トゥクトゥクは50バーツ、約150円だった。値切った記憶はない。アメリカ青年とはバスを降りたときに出会った。外国人がここで降りるからにはラオスに行くのだろうと思い「ボーダー?」と聞くとそうだと言うので一緒に行くことに。
 パヤオからチェンコーンへのバスは139バーツつまり約417円だった。


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 見よ、これがタイ側のイミグレーションだ。人けが全くない。パスポートを見せて難なく出国。アメリカ青年はチェンマイに滞在しており、いわゆる「ビザラン」のためにラオスに行くとのこと。日本人はラオス入国にビザは不要だが、アメリカ人は必要ということでアライバルビザの手続きをしていた。ビザオフィスから出てきた彼は、35ドルも取られたと言ってぼやいていた。こちらはちょっと得した気分だが、たまたま日本のパスポートを持っていることによる恩恵なので居心地の悪さも感じる。ボーダーコントロールでは国籍による差別を当たり前のように行っていて、それを国も旅行者も受け入れている。
 当時、日本人はビザなしで2週間ラオスに滞在できた。今も似たようなもんだろう。
 

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 国境を抜け、ラオスに入国した。トゥクトゥクの運転手がベンチに腰掛けて待っている。おっちゃんに声を掛けると、「今すぐ行くなら1人200バーツ(約600円)、客が集まるのを待つなら1人100バーツ」という。相場が分からないが、200バーツは高いような気がする。アメリカ青年と相談し、待つことにした。再びぼんやりとしていたが、10分待っても20分待っても誰ひとりとして国境を通ってくる者はいない。結局、アメリカ青年とともに値切って1人150バーツ(約450円)で行ってもらった。
 ちなみにタイでトゥクトゥクと言うと屋根付きのトライクだが、ラオスでは軽トラの荷台にいすを取り付けたものだった。進行方向と平行に長いすが据えてあり、屋根もある。タイではピックアップトラックの荷台にいすを据えたものをソンテウと言っていたが、そっちに近い。所変われば品変わるですな。


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 フエサイの中心部までは15分ほど。タイより道路の整備状況も悪く、急に景色が田舎っぽくなる。チェンコーンも田舎だったけど。


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 なんか、こういう二人乗りよいですな。楽しそう。

 

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 フエサイの中心部に着くと、ちょうどメコン川を挟んだ対岸、チェンコーン側に夕日が落ちるところだった。宿を探すより先に川岸に向かう。静かに流れゆくメコン川が暮れなずむ。赤から青へ、グラデーションを描く空。暗くなるまで、ぼんやりしてしまった。橋ができる前は船で国境を行き来していたらしい。


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 地元食堂。つまみは豚ひき肉のスパイシーあえ「ラープ・ムウ」と青パパイヤのサラダ「ソムタム」。アメリカ青年と雑談しながらラオスのビール、ビアラオを飲む。店の便所を借りようとしたら電気が点かず、ろうそくを貸してくれた。ほのぐらい灯の中で用を足す風流。ガスが普及していないのか炭火で煮炊きしているおじさんも見たし、けっこう辺鄙なところと言ってよい。


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 女同士、つもる話もあるもの。以前、ラオスのルアンパバーンに行ったときもそうだったが、ラオス女性はけっこう酒好きが多い。


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 夜中のフエサイの町。これでも中心部。物音がほとんどしない、静かな町だった。


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 特に宿を予約せずに行って、安くてまあ良さそうなゲストハウスに投宿。ほとんど人が歩いていないというのにやたらゲストハウスが多い。泊まった宿のバスルームがこれ。安宿はシャワーを浴びると便所がびちゃびちゃになるつくりが多い。少し工夫したつくりにすれば解決しそうなものだが、ちょっと苦手。宿代はシングルルームが朝飯付きで490バーツ、約1500円だった。
 ラオスにはキープという通貨があるが、フエサイではタイバーツを自由に使うことができた。


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 翌朝は未明から雨が降っていた。街が、いっそううらぶれて見える。静かだったので、極めてよく眠ることができた。


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 静養するにはいいところかと思う。ただし、これという娯楽はない。


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 安宿の朝食。ラオスはかつて、フランスの植民地だった。なのでベトナムの「バインミー」同様、バゲットサンドは名物である。右の器はコンデンスミルク。コーヒーに入れて飲む。アジアで迎える朝、甘いコーヒーを飲むのが好きだ。


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 フエサイにあった三十三間堂みたいなお寺。


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 昼飯。適当に頼んだら担々麺みたいなのが出てきた。米の麺というのがラオスらしい。メコン川を眺めながらすするのはなかなかおつである。ビールと合わせて90バーツ、約270円。右上の皿の野菜を適当に入れて食います。この辺はベトナムと同じ流儀。

<タイ、ラオス旅行記④へ続く>

※2016年9月の旅行です。通貨の日本円換算はかなり大雑把にしています。ご容赦ください。
※全ての写真は筆者撮影です。一切の無断使用や転載を禁じます。


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