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「もうだめだ」という時、リズムを立て直す感覚

「もうだめだ」という時、
どうやって態勢を立て直すことができるか。
小学生の頃、父親と洋画アクションを一緒に観ていると、主人公が間一髪のシーンで「お前は1秒で落っこちる」だの「お前だったらもう死んでるだろう」などとよく言われた。
敵に追い詰められ、崖の淵に手をかけてよじ登ろうとするムキムキの主人公。彼らは、何であんなに能力があるのにいつもギリギリなのか。むしろああいう間一髪のスリルが好きなんじゃないか。
鉄棒も、木登りもかけっこも苦手な私だったから、まずそんな窮地に立たされるような状況なんかつくらなければいいと、幼いながらに思ったものである。


しかし、大人になってみると、崖の淵に立たなくてもそのような状況はいっぱいあるではないか。
考えてみれば人前でピアノ演奏するときは常に、崖っぷちだ。
ステージに立てば、家の中とは全く違う強いスポットライトで照らされ
自身の無さも弱気も全てさらけ出されてしまう。
逃げ場がない、
「もうだめだ」という時、
どうやって態勢を立て直すことができるか。


ジャズバーでドラムの人が言っていた。
「セッションはリズムを立て直せるかどうかが大事だよ」
もともと完璧にリズムを維持できれば問題はないけれど、アドリブセッションでは何が起こるかわからない。
配慮したせいで、逆に曲の方向性がこんがらがってしまうことだってあるのだ。
今までの経験からすると、セッションの立て直し方はこの2通りでやっていたように思う。
まずは相手が見失った場合、もしくは自分がテーマをとる場合
・自分の中のリズムを止めない
・はっきり相手にわかりやすく曲の区切りを伝える

そして自分が見失った場合
・いったん止める
・周りの音を聞いて今どこか想像する
・曲の区切りっぽいところで戻る
これって練習とか経験の量が大事かと思うかもしれないけれど、心の問題も大きい。
「自分が間違えているのかも」という恐怖が押し寄せる時に、一番客観的になって周りの音を聴かなくちゃいけない。
このセッションで崩れた時、立て直すような感覚。
最近ヨガを始めて、腹筋するような感覚なんじゃないかと思うようになった。
腹筋で体を起こす感覚。
やっているうちに、何かがカーッと湧き出てくる。
不思議と恐怖や不安の入る余地がなくなっている。
臨床心理士さんが恐怖に対抗できるのは「怒り」だと言っていた。
腹が立つ感覚。
転んでも倒れずに起きる力。
七転び八起き。
だるまが怒った顔をしているのはそのせいだろうか。
まずそんな窮地に立たされるような状況なんかつくらなければいいという小学生の私の意見はもっともだけど、それができる人は窮地をたくさん乗り越えてきた人だと今では思う。
だからジャズが上手い人はかっこいいし頼もしいのかもしれない。
みんな涼しい顔をして苦労しているところは全然見せないけれど、いろんな経験してきている。
今回はジャズがメインの話だったので、一緒に掲載する写真がなくて困っていたのだけど、
去年の秋お寺に紅葉を見に言った時、お賽銭箱の近くに並んでいただるまみくじを偶然にもカメラで撮っていた。
あの時、私がこの記事を書くことをあのだるま達は既に知っていたのかもしれない。

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