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発信して実現した「参鶏湯を作って食べる会」

「参鶏湯食べる会したいなー。」

絵本作家の佐野洋子さんがエッセイで無茶苦茶美味しいと書いていた
参鶏湯。
どんな味だろう?
気になっていた時、
ちょうど見つけたのが
北欧暮らしの道具店に掲載されていた
「スーパーで買えるものだけ!
自宅でできる簡単参鶏湯レシピ」だ。

これなら作れそう!
ただ1 人じゃ食べきらんなー。
ふっと思いっきでインスタのストーリーに呟きを投稿。
ただ参鶏湯を食べたいという欲望を発しただけだったのだが、
まさかの展開に。

「参鶏湯の会、しよ」

おおお!
誰だ!
のってくれたその人は
編集教室で知り合ったデザイナーの女性。
「やってみないと、楽しいかどうかわからないでしょ?」
ありがたやありがたや。
もう1 人お誘いし、参鶏湯の会をすることになった。
教室で知り合ったお嬢さん方と、ほっこり美味しい参鶏湯の鍋を囲んで世間話とかしちゃって。
いいなぁ。
と、呑気に構えていた私。
しかし、後日、
メインディッシュの参鶏湯など、どうでもよくなるほど、
この呟きにのってくれたゆうこさんという女性の存在が
色濃く残ることとなる。

当日。
発案者にも関わらず、全く何も準備していない私。
これはいけないと思い、あわててレシピのテキストを印刷。
買い出し用に、お気に入りの犬柄工コバッグを持っていくこ
とにした。
待ち合わせ場所に彼女は車で迎えに来てくれた。
パッと道路脇に車をとめ、
さっと手招きして私を載せる。
ん、今の動作なんか凄くカッコよくなかったか?
私はあんなカッコいい手招きできんぞ。

「宇多田ヒカル好きなんですか?」
「そう。大好きなの。
あなたは、どんなアーテイストが好きなの?3つ答えて。」
えっ...?
不意打ち。
その質問形式に突っ込む余裕もなく、必死で10 代から聴いて
いたプレイリストの記憶を辿る。
沢山いろんなアーテイストに感動してきたのに、すっとベス卜3 が出てこない。

参鶏湯の材料の買い出しに出る。
「これ」
手元のファイルから参鶏湯のレシピを綺麗にまとめたプリントが出てきた。
「ええ!ありがとうございます!」
「私が作り方わからなかったから用意しただけよ。」
ちゃんと写真までつけて人数分印刷してある。
文字だけ紙切れ1 枚を使ってくださいとは恥ずかしくて言えるはずがない。
「買い物袋持ってきたから使って」
もう言うことなしである。
しかもその買い物バッグが北欧かどこかのプランドらしいのである。
潔いまでの月とスッポン。
仕事ができる女性は遊びに関しても手を抜かない。いや、それが普通なのだ。

お邪魔した彼女のご自宅も
機能的で素睛らしく整っていた。
多分、部屋で埃を見かけていない。
参鶏湯と他2 品をささっと手際よく準備する彼女。
これはここに、こうすると汚れない。
この手順だと作業が早い。
私は彼女の的確な指示にただただ従うことに必死。
あれよあれよと言う間に食卓に料理が並べられていく。気がつくと、いつの間にか参鶏湯の前に座りおもてなしされているのだった。
その後、仕事を終えたもうおー方も加わり、
みんなでひたすらアニメ鑑賞会。
実は彼女と私は攻殻機動隊というマニアックなアニメのファン同士なのだ。
この攻殻機動隊、脳みそにスマホ機能が入っていていつでも
ネットに接続できる電脳化社会の近未来を描いており、あの
キアヌ・リーヴス主演、映画マトリックスにも影響を与えた作品である。(途中参加のNさん。知らないのに一緒に見てくれてありがとう。)
他にも「日常」「働く細胞」「約束のネバーランド」などなど。
最後はカッパが踊り出すアニメも鑑賞。

(なんだ。この鍋会は・・。血が噴き出すシーンを見ながら参鶏湯食べているぞ。)

そんな一風変わった参鶏湯の会は続き、それぞれが観ている映画の話しになった。

「『この世界の片隅に』凄く感動したんですよね!」
ちよっとでも感情を込めた発言をすると、彼女は逃がさない。
「何がどうよかったの?」
一瞬一瞬を鋭い目線で捉えるその姿は、草薙素子そのものである。(攻殻機動隊の女隊長)
「えっと…」

何がどうよかったのか。

質問されても、言いたいことがすぐ出てこない。
本当はいろんな思いがあって出てきた言葉なのに。
自分の中では完結していても、
それを伝わる形で表現しなければ
誰の心にも響かない。

「あなたが書いた『オクラとジャズ』の記事、よかったよ。
もっと発信したらいいじゃない。」
デザイナーはその人本人もまだ自覚できていない、潜在意識や良さを引っ張り出して発信する手助けをする仕事だと思う。
それを無意識にやっている彼女はやっぱり根っからのプロデザイナーなのだ。

私が続けているピアノという楽器はベースやドラムと違って一人で音楽を完結できる楽器。
別に誰かに聴かせなくても音楽は楽しめるのに、人前で弾きたがるのはエゴだと中学の頃から感じていた。でも、自己表現して人と繋がることも、何かを与え合う事も音楽を生み出す上で大事なのではないか?

誰にもわかってもらわなくてもいい。

そんなの悲しいじゃないか。

自分は修行が足りないから。

一生修行してるつもり?

私は怖がっているだけだ。
人に認められたくてしょうがないから、認められなかった時が怖いんだ。

人前でピアノを弾くことも。ブログで本音を発信することも。

でも今、発信したからこそ、この「参鶏湯を作って食べる会」が実現して、プロデザイナーさんの家で参鶏湯とニラチヂミを食べながらアニメ攻殻機動隊を鑑賞するという、なんとも面白い景色を見ることができている。

「発信したい。」

するべき努力はそこから見えてくる。
春以降ずっと考えないようにしていた本音が、ふと漏れた。
「これ、あげる」
彼女が手渡してくれたのは
OLYMPUS のフィルムカメラ。
初心者の私でも使いやすいコンパクトなカメラだ。
どこまでも背中を押してくれる彼女の優しさ。
あんなかっこいい人に背中を押されたら、
こんなダサい私でも勇気が湧く。
いつも、人との出会いが私を強くしてくれる。

作った参鶏湯はもちろん美味しく
骨付き鶏だしと塩だけで充分に旨味があった。
でも、ゆうこさんと一緒に作らなかったら
あんなに刺激的な「参鶏湯を作って食べる会」にはならなかっただろう。

「ゆうこさんと参鶏湯を作って食べた会」
に改名しておこう。
そして、Jazz hiker を始めてみよう。

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#発信する #ゆうこさん#参鶏湯#北欧、暮らしの道具店#攻殻機動隊#佐野洋子

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