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おばあちゃん


小学二年生の一年間、
毎年夏休みの一ヶ月ちょっとを
おばあちゃんの家で過ごしていた。

その頃のおばあちゃんは、毎日夕方になると
散歩に出掛けて行って、
私はいつもそれについて行っていた。
なにか話していた記憶はない。
おばあちゃんは基本無口な人だったし、
私もあまり喋らないこどもだったと思う。

それでもおばあちゃんと過ごす時間が好きだった。
おばあちゃんの家の、あの夏の田舎の匂いも好きだった。

毎回帰りの飛行機の中で、おばあちゃんのことを思って泣いていた。

高校生になり、大学生になっても、
私は一人でよくおばあちゃんの家に遊びに行った。

私が行くといつもスーパー行ってお肉買ってきなさいと言って、お肉とおばあちゃんが育てた野菜を食べさせてくれた。

その時も基本会話はなく、
元気か?最近どう?みたいなことを聞かれいたぐらいだった。

帰りの飛行機に乗る前、必ずおばあちゃんに電話をかけた。

「今から飛行機乗るよ〜。また帰ってきたら寄るね。」
「気をつけてね。ご飯ちゃんと食べるんだよ。」
「おばあちゃんもね!」
「…大好きだよ。」
あの時一瞬時間が止まったみたいだった。
私の知っているおばあちゃんは、誰かに大好きなんて言う人じゃなかった。
その日は飛行機の中でいつも以上に泣いた。

今、おばあちゃんは、施設で過ごしている。
この前おばさんたちと一緒に会いに行くと、
真っ先に私に向かっていつ帰ってきたのかと聞いてくれた。


昔から何度も何度も見ている夢がある。
いつもどこかのトイレの扉を開くと、おばあちゃんの家に繋がっていて、私はおばあちゃんの家でいつもみたいに過ごすという夢。
ずっとおばあちゃんがいる、おばあちゃんの家に帰りたいんだと思う。

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