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あの頃のあの人(たち)

大学生の頃、
年中暖かい場所で過ごしていた時期があった。

私のことを知っている人が、ひとりもいない場所に逃げたくなり、全てのSNSを削除して、学校に休学届を出し飛行機に乗った。

現地の語学学校に通った。
そこでDと出会った。
どうして親しくなったのかは覚えていない。

私たちは、毎朝一緒にプールに行った。
その後授業に行き、終わると一緒にご飯を食べてカフェに行った。たまに授業をさぼって、そのままカフェに行くこともあった。
夕方になると一緒に校庭を走り、夜になるとマックに行って必ずフライドポテトを食べた。
眠くなる頃にそれぞれの宿に帰った。

異国の地で、私たちはお互いお互いしかいなかった。
だからほとんどの時間を共に過ごした。

同じ悩みを抱えながら、同じ曲を聴きながら、同じものを食べながら、そうやって過ごしていた。

夢から覚めたら、実は全て嘘でした、そんな人存在しませんでした、なんてことはないかと恐ろしいぐらいに夢みたいな日々だった。
満たされていたというわけではない。
ただ現実味がなかった。

あれから、お互い自分の居場所に戻ってから、
私たちはまだ一度も再会できていない。
それでもたまに連絡は取るし、今でも昔のままの呼び名で呼び合っている。

あの関係は、あの場所であの時だからこそ成立していた関係だということぐらい分かっている。あの時も分かっていた。

そんな人ばかりなのに、たまに寂しくなる。


どんな時期でも、この人と一番親しいと自信を持って言える人はいたけれど、それがずっと続いている関係は存在しない。
どこかでまた別の人と出会って、同じことを繰り返す。

私は死ぬまであと何人の人に、
自分の全てを見せるのだろうか。
自分の全てを受け入れて、そばにいてほしいと思うのだろうか。

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