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OJK規則によるシャリア保険部門のスピンオフの義務化

2023年7月、インドネシア金融サービス庁(OJK)は、保険会社及び再保険会社のシャリア部門のスピンオフを規制するOJK規則2023年第11号を発行しました。
最近発行された従来型及びシャリア型の保険会社及び再保険会社の認可に関するOJK規則2023年第23号とともに、新規則はOJK規則2016年第67号に代わる法的枠組みの一つとなります。

OJK規則2023年第23号により、シャリア保険会社は2026年までに最低資本金を現行の500億ルピアから1000億ルピアまで増額しなければなりません。さらに、2028年までに最低資本金を2000億ルピアに増額しなければなりません。

新規則はオムニバスファイナンシャル法と呼ばれる法2023年第4号の目的と保険セクターの現状を一致させることを意図を示すものであり、シャリア部門を持つ保険会社及び再保険会社は、一定の基準を満たした上でこの部門のスピンオフを実施しなければならないと規定されました。

新規則は、当該シャリア部門がOJKの定める条件を満たした場合、会社からスピンオフのリクエストがある場合又は保険会社・再保険会社の統合によりスピンオフが実行された場合にスピンオフを義務付けています。

シャリア保険とは

従来の保険は、保険料と引き換えに、保険契約者から保険会社へリスクを移転する契約でした。この保険では、保険料は収入として認識され、保険金の支払いは保険会社の費用となります。
このような契約は、将来の支払いが不確実であるため、シャリア法に準拠しません。
シャリア保険は、従来の保険に代わるものであり、保険契約者からリスクをプールする基金(Tabarru)への寄付を行うという方法でリスクを分散するものです。

スピンオフ期限の延長

従来は、保険法(2014年第40号)に基づき、保険会社・再保険会社は2024年10月17日までにシャリア部門のスピンオフが必要とされていました。この期限は、新規則により2026年12月31日まで延長されました。この義務の一環として、保険・再保険会社は2023年12月31日までにOJKの承認を得るためにシャリア部門のスピンオフ案をOJKに提出しなければなりません。

この延長は、保険・再保険会社が経営戦略に基づき適切な計画を作成するのに十分な時間を与えるものと評価されています。2023年現在、シャリア部門を持つ保険会社は42社ありますが、このうち10社は自己資本がOJKの定める基準を下回っているなどの理由で、これらの事業部門を廃止し、シャリア・ポートフォリオを他のシャリア保険会社に移管する予定であると言われています。

他方で、新規則は保険会社がOJKの承認を得てから部門の譲渡を完了するまでの期間を12か月から6か月に短縮しています。この期間中にシャリア部門の譲渡を行うことは可能ではありますが、時間的制約があることから、OJKの認可を得る際には既に包括的なスピンオフ計画を立てておくことが肝要と考えられます。

スピンオフの義務付け

新規則は、シャリア部門のスピンオフにより保険業界の競争力を強化し、保険契約者と加入者の利益を保護することを目的としています。そのため、OJKはこの目的を達成するため、保険会社・再保険会社に対して、シャリア部門のスピンオフを命じる権限が与えられています。

OJKは、期限までにシャリア部門を分離しなかった保険・再保険会社に対して、その免許を取り消すことができます。

スピンオフの手続

保険・再保険会社がOJKの認可を取得した後に実施される、シャリア部門のスピンオフ手続は、一般的に以下の手続で行われます。

会社は、①新たに保険・再保険会社を設立することでスピンオフを実施することができます。この手続では、新会社は必要なライセンスを取得し、その後、保険・再保険会社はその関連するポートフォリオを新会社に譲渡しなければなりません。また、スピンオフは、②既存の保険・再保険会社にポートフォリオを譲渡することでも実施が可能です。

ポートフォリオの譲渡では、シャリア部門が保有する全ての資産、負債、株式を含む必要があります。スピンオフがポートフォリオ全体の譲渡を伴う場合、譲渡の際にはTabarru基金、Participant investment基金、Minimum company基金、無担保貸付(qardh)を含めなければなりません。

また、ポートフォリオの譲渡は、OJKのスピンオフの承認から6か月以内に実施する必要があり、全てのスピンオフ手続は法令に従い実施されなければなりません。

保険・再保険会社が新たなシャリア保険会社の設立を選択するものの、最低資本金(保険会社につき1000億ルピア、再保険会社につき2000億ルピア)を満たさない場合、新会社は、①株主からの出資により増資を行う、②新たな投資家を招く、③事業免許を取得したシャリア保険会社又はシャリア再保険会社にシャリア部門の全てのポートフォリオを譲渡するという方法のうちいずれかを実施する必要があります。

スピンオフのインセンティブ

スピンオフには多額のコストがかかるため、保険・再保険会社はスピンオフを敬遠しがちであり、スピンオフを選択する企業は、多くの場合、事業が持続可能な収益性を既に達成しており、事業拡大を追求できるようになった企業である。

これに対抗するため、新規則はスピンオフにインセンティブを提供し、企業のスピンオフを推進している。
中でも、シャリア部門をスピンオフした保険・再保険会社は、最低資本金要件(シャリア保険会社は5000億ルピア、シャリア再保険会社は1兆ルピア)が免除されるというメリットがある。
この優遇措置により、スピンオフを実施した保険・再保険会社は高額な最低資本要件を満たす必要がなくなりますので、より多くの企業がスピンオフを行うことが期待されています。

結論

以上の通り、2023年POJK11号はインドネシアの保険・再保険会社におけるシャリア部門のスピンオフ手続に重要な変更を導入しています。
例えば、期限の延長、スピンオフの義務化、インセンティブ等により、保険・再保険会社のコンプライアンスの向上、競争促進を促し、業界全体の底上げを行うことを目的としています。
企業は、規制上の要件に対応し、持続可能な成長のために提供されるインセンティブを活用するため、慎重にスピンオフを計画する必要があるでしょう。

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