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【第33回】JATO 日本人ATC リレー形式紹介企画:菅原瑞貴さん

前回は都内で予約制のパーソナルトレーニングジムを経営しています出口さんにインタビューにお答え頂きましたが、今回は日々障害者の方々の機能向上に励んでいます菅原瑞貴さんにご登場頂きました。

是非一読頂ければと思います!

何故ATCになろうと思ったのですか?

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多くのATCを志した人と同様に私もユーススポーツ時代に多く怪我をして、トレーナーに出会い、そして仕事の素晴らしさを知ったからです。

私の場合は中学時代にクラブチームでサッカーをしていた時に、トレーナーの方に出会いました。当時怪我を多くする選手だったので、トレーナーと関わる時間が多く非常に身体的にも精神的にも支えられたのを覚えています。

当時支えてもらったように、スポーツ選手を支え、彼ら彼女らの力になるためにはどうしたらいいのか?それを考えていたら、ATCという選択肢に出会いました。

私は学生時代英語が一番苦手な教科だったので、絶対海外なんていくものかと思っていましたが、ATCという選択肢を見つけた後は、国内の進学よりも自分のゴールに近づけると思ったのでアメリカに行くことを決めました。

学生、社会人時代に、印象に残っている出来事はありますか?

色々印象に残っている出来事はあるのですが、自分自身のユニークなエピソードは主に3つです。

1つ目は学生時代です。夏休み時のアメフトのキャンプに入る前、消化器官系の病気にかかってしまい、ずっと体を壊しながら一番帯同時間が長いキャンプに参加していました。

その時は痛み止めを毎日飲みながら生活していて、常に疲労困憊でしたので非常に苦い思い出です。(笑)

結局学期が終わるまで手術を待たなくてはいけなく、その状態でセメスター過ごした事は自身の身体ケアの重要性を再認識させられました。

また卒業後に以前このリレーでも紹介されていた石井さんが勤めていたスポルティングカンザスシティーでインターンさせて頂いた事は、自分の人生にとって非常に貴重な経験かつ分岐点でした。

学生上がりだった自分に、知識技術のみならず、仕事の向き合い方やプロフェッショナリズムなど根本的な事から手取り足取り教えて頂いたのは今でも鮮明に記憶に残っており、自分の軸になっています。

石井さんをはじめスポルティングカンザスシティーのメンバーには感謝が尽きません。

3つ目は帰国後です。帰国前まではプロチームでの活動をぼんやり考えていましたが、帰国後は偶然障害者がトレーニングを行う機会を目にしました。あまり自分が経験してこなかった風景ではありましたが、ここではプロチーム以上の達成感が味わえるのではないかという感覚があったのを鮮明に覚えています。

そこが障害者と関わる分岐点となり、今があります。

一般的なATCの道から外れるのは少し怖かったですが、自分自身が面白そうと思える道を選択し、それが今につながっているので、この選択をして良かったと心から思っています。

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現在の仕事内容を教えて下さい。

現在は障害者専門での「株式会社ユニバーサルトレーニングセンター」という会社を設立し、日々障害者の方々の機能向上に励んでいます。

多くの方は事故や病気で後遺症を負ってしまい、お医者さんから「もう二度と歩くことができません。」「もう回復しません。」などと言われてしまう方がほとんどです。一般的なATCがケアをする人達とは真逆の層だと思います。

そういった障害がある人達はいざ運動がしたいと思っても安全面の理由で施設利用を断られてしまいます。それ以前に、階段やスペースの環境面の問題なので施設に入ることすらできません。

私はこの現状を変えたいと思い、事業をスタートしました。

私達が行っているのは訪問のパーソナルトレーニングです。上記のようなハード面の問題を解決するために、クライアントのご自宅又は希望場所に出向きトレーニングを行います。事故や病気などで運動機能障害を負っている箇所に対しての他動的な運動、そして全身運動を提供します。そういったことで障害者の不可能に挑戦し、不可能から可能になる瞬間を目の当たりにした時には何事にも変えられない喜びがあります。

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現在の1日の流れを教えて下さい。

日によって訪問箇所はそれぞれ違うので、大体1日に2、3件訪問します。

一件目のスタートが大体9時か10時くらい。そこから2時間ほどトレーニングを行い、別の場所へ移動します。現在利用者は東京千葉埼玉の方が多く、中には片道2時間かかる場所へも伺います。

そして一件目が終わったらその足ですぐ2件目へ移動します。2件目のスタートが大体14時ごろ。これが終わると最後のセッションへ向かい終わるのが大体20時ごろになります。訪問先へ向かう移動時間や空き時間があるので、移動中にスマホでカルテやメールなどの事務作業を行ったり、パソコンでウェブサイトの記事や動画を編集したりします。

会社設立にあたってトレーナー業務以外の雑務も発生しますが、新しいことにチャレンジするのは比較的好きな方なので、そのプロセスを楽しみながら色々なことにチャレンジしています。

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菅原さんにとってJATOとはどのような存在でしょうか?

自分の軸を忘れずにいられる大切なコミュニティーだと思っています。

他職業とは違い、多くの場合ATCは職場で1人、もしくは多くても数人でしょう。他職種であれば、同じ資格が持っている方や同じバックグラウンドを持っている方が同じ職場に数十人いることも珍しくはないと思います。もともとの母数の違いもありますが、やはりチームや会社にATCは数人しかいないので、主導権を得るのも共感を得るのも難しいこともあるかと思います。

ましてや個人活動が多い人は同じ感覚で相談できる相手や機会も少なくなってしまいます。そんな時、自分の軸を忘れずにいられるのがJATOというコミュニティーだと思います。帰って来れば、いつも同じバックグラウンドを持った人たちと同じ目線で将来を語り合える。そんな安心できる場所です。

JATOに加入するメリットを教えて下さい。

チャレンジングな環境の中逆境を打破してきたトップレベルの方々に接することができる数少ないコミュニティーだと思います。クリニカルな知識経験はもちろんのことですが、それ以外にもトップレベルの人から学べる事は多々あります。

コミュニケーション、チームビルディング、営業、マネージメントなどなど日本人ATCというマイノリティーな人種がアメリカ・日本社会にどう影響を与えてきたか。私は日本人ATCの一番の凄さはゼロから環境を作ってきた点にあると思います。そんな歩みを感じられるコミュニティーは他にはなかなかありません。そういったことを肌で感じ学べる事は大きなメリットですし、職場や社会で自分が経験しているシチュエーションでも応用できることが多いと思います。

これからATCを目指している学生にメッセージをお願いします。

僕は至って普通の学生生活を送り、何も特別なことをアメリカで成し遂げてきていません。

そんな僕でも多くの人に支えられここまできました。

一つだけ僕が気をつけていたことと言えば、何事もすぐに挑戦するということだけです。

わかりやすくいうと「フットワークの軽さ」ですかね。

失敗を恐れずに挑戦すること。何が成功で、何が失敗なのかは数十年後に振り返ってその時初めてわかるものだと思っています。

例えば、嫌いな上司から難癖つけられている時でも、ただただ時間の無駄と思いその時を過ごすのか。それとも、この人はこういう所が良くないと思うので、自分もそうならないように悪い例として参考にしよう。と考えられるのか。

何事も100%無駄な経験はないと思っています。

スティーブジョブズはコネクティングドッツだと言いましたが、色々な一時的な良いところ悪い所だけを見ずに、何事も挑戦すること。そしてそれぞれの経験に関係性を見つける事。私はそれが重要だと思っています。

授業での質問、インターン、異文化への触れ合い、友人関係、仕事、遊びなどなんでもいいです。

ですので、学生の皆さんも失敗を恐れず、むしろ失敗のために色々な事にチャレンジして欲しいなと思います。

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【編集後記】菅原さん、お忙しい中インタビューにお答え頂き誠にありがとうございました。菅原さんを見ていると、本当に今の仕事が好きなんだな!という印象を受けますが、今の道を選択する時に、“一般的なATCの道から外れるのは少し怖かった”という事を考えていたのは意外でした。これからも新しい道をどんどん開拓していき、世の中の困ってる方々のサポートを宜しくお願い致します!
JATO 日本人ATC リレー形式紹介企画のpart1は次回で最終回になりますが、次回は菅原さんの大学の大先輩で、日本人ATC界で必要不可欠な方に登場頂きますので、楽しみにしていて下さい!


この記事は、2/15/2020にJATOウェブサイト、およびJATO公式フェイスブックページに掲載したブログ記事を再編集したものです。

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