ジャパン・アスレティックトレーナーズ機構

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NATA公式アフェリエイトである一般社団法人ジャパン・アスレティックトレーナーズ機構(JATO)のnoteです。Japan Athletic Trainers’ Organization (JATO) is an official affiliate of NATA.

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最近の記事

AU#33: サッカー選手における前十字靭帯再建術後に残存するリアクティブ・ストレングスの低下

まとめ ACLR後に見られた垂直方向のプライオメトリック能力の低下は、膝関節伸展筋力とリアクティブ・ストレングスの低下が残存していたことが原因であると考えられます。 ACLR後の競技復帰テストにおいて、膝関節伸展筋力テストを使用することは一般的ですが、それに加えて10秒ホップやドロップジャンプのようなリバウンドジャンプテストを用いてRSIを測定することも必要かもしれません。スポーツ現場では、My Jump 2 (Carlos Balsalobre-Fernadez)のような安

    • AU#32: 関節可動域を測定するための臨床的に利用しやすいスマートフォンアプリケーションの信頼性と妥当性:システマティックレビュー

      まとめ 2007年から2018年の間で出版された37件の研究結果と本論文のシステマティックレビューより、ROMを測定する際にスマートフォンが信頼的かつ妥当なツールとして使えることが明らかになってきました。スマートフォンを一人一台手にする現代において、角度計がそばになくても、スマートフォンさえあればいつでもどこでもROMが測れる時代になりました。もちろん、スマホを角度計の代わりとして使う際の注意点やプロトコルの明確化などの課題はありますが、測定する場所・環境や身体の関節部位によ

      • プロサッカー選手におけるハムストリングス損傷後競技復帰の予測因子としてのBritish Athletics Muscle Injury Classification System

        まとめ 今回紹介した論文では、浮腫の長さ、断面積、および筋肉内の損傷部位・組織を考慮した肉離れBAMIC分類システムが、プロサッカーにおけるハムストリングス肉離れ後の競技復帰までの日数と関連していることがわかりました。一方で、BAMIC分類システムにおいて分類基準とされている各項目とRTPとの間には有意な相関は見られませんでした。したがって、本論文からは、浮腫の長さ、断面積、および筋肉内の損傷部位・組織を競技復帰の予測因子としての有用性に関しては、さらなる研究が必要であるが

        • AU#30 米国高校生における脳振盪体験と自殺念慮、計画そして未遂

          AU#30 米国高校生における脳振盪体験と自殺念慮、計画そして未遂 まとめ 今回の研究では、脳振盪を受傷した青少年におけるメンタルヘルスの臨床的評価と、綿密な経過観察などの重要性と必要性が浮き彫りになりました。この調査では、アメリカの青少年における脳振盪と自殺行動との関連を調査した結果の為、日本の中高生に当てはまるかは定かではありませんが、脳振盪後に起きうる精神衛生への影響は計り知れません。この論文をきっかけに、青少年と関わる臨床家の皆さんには是非、身体的なリハビリや回復だ

        AU#33: サッカー選手における前十字靭帯再建術後に残存するリアクティブ・ストレングスの低下

        マガジン

        • JATO Academic Update
          31本
        • JATO ATCリレー Season2
          17本
        • JATO ATCリレー Season3
          2本
        • JATO日本人ATCリレー形式紹介企画 Season1
          34本

        記事

          AU#29 脳振盪後の有酸素運動と認知トレーニングの付加的利益:現在の臨床コンセプト

          タイトル日本語訳 脳振盪後の有酸素運動と認知トレーニングの付加的利益:現在の臨床コンセプト まとめ 脳振盪後の有酸素運動と認知トレーニングの効果をまとめてきました。本文にはより具体的なプロトコルも書かれていますので、興味のある方は是非読んでみてください。これは脳振盪に対するリハビリテーションに限ったことではないですが、それぞれの介入方法で特徴的な効果がある一方、単独の方法では全てをカバーできないこともわかりました。限られた時間や資源の中で、全てを一人の臨床家が行うことは難し

          AU#29 脳振盪後の有酸素運動と認知トレーニングの付加的利益:現在の臨床コンセプト

          AU#28:睡眠介入が運動能力に及ぼす影響

          睡眠介入が運動能力に及ぼす影響:システマティックレビュー まとめ このシステマティックレビューの結果によると、睡眠延長と昼寝が、身体的・認知的パフォーマンスの改善に対して最も有力な睡眠介入であることが明らかになりました。アスリートが夜に7時間程度の睡眠を取っている場合、3〜49日間に睡眠時間を2時間まで増やすことが推奨されています。また、必要に応じて昼寝(20~90分)で日中の睡眠を補うこともできます。しかしながら今回のシステマティックレビューには、バイアスのリスクが低い研

          AU#28:睡眠介入が運動能力に及ぼす影響

          AU#27:前十字靭帯再建術後の運動恐怖症はジャンプ着地時の最大膝関節外転角度と関連する

          まとめ 前十字靭帯損傷などの筋骨格系疾患のリハビリテーションでは、生体力学的要因に焦点をおくことが多いですが、よりホリスティックなリハビリテーションを提供するためには心理的要因を考慮することも必要です。今回紹介した論文では、前十字靭帯損傷・再建術の患者において、心理的要因の一つである運動恐怖症が、生体力学的要因で、再受傷の危険因子の一つである最大膝関節外転角度と関連していることが明らかになっています。このような心理的要因の筋骨格系疾患に対する影響は、慢性足関節不安定症や腱障

          AU#27:前十字靭帯再建術後の運動恐怖症はジャンプ着地時の最大膝関節外転角度と関連する

          AU#26:筋膜トリガーポイントに対する体外衝撃波治療とドライニードリングの有効性の比較に関する無作為化試験1

          タイトル日本語訳 筋膜トリガーポイントに対する体外衝撃波治療とドライニードリングの有効性の比較に関する無作為化試験1 まとめ 1980年代から衝撃波治療が臨床的に腎臓結石、骨折、腱炎等の治療に利用されるようになり、少しずつその有効性がエビデンスとして明らかになってきました。MTrPsの介入として、適切な資格と教育のもとドライニードリングの使用が広がる一方で、患者によっては抵抗感や禁忌がある場合があります。このような状況で、体外衝撃波が非侵襲的で安全かつ効果的な治療の選択肢と

          AU#26:筋膜トリガーポイントに対する体外衝撃波治療とドライニードリングの有効性の比較に関する無作為化試験1

          AU#25:関節原性筋抑制: 最も有効なエビデンス、メカニズム、そして臨床現場では見えないものを治療するための理論。

          タイトル 関節原性筋抑制: 最も有効なエビデンス、メカニズム、そして臨床現場では見えないものを治療するための理論。 図1. Norte G, Rush J, Sherman D. Arthrogenic muscle inhibition: best evidence, mechanisms, and theory for treating the unseen in clinical rehabilitation. J Sport Rehabil. 2021;31(6):

          AU#25:関節原性筋抑制: 最も有効なエビデンス、メカニズム、そして臨床現場では見えないものを治療するための理論。

          AU#24「軽微な筋線維の壊死を伴う筋損傷後のアイシングは誘導型一酸化窒素合成酵素表現型マクロファージの侵入を制限し、筋再生を促進する」

          まとめ 2021年の報告では、肉ばなれを模した筋損傷にアイシングを行うことで、炎症性マクロファージの到着が遅れて炎症の開始が遅れ、さらには抗炎症性マクロファージへの切り替えも遅れて炎症期が長引くことで、筋再生が遅れてしまうといった結果でした。今回紹介した研究では、圧迫による軽微な筋損傷を対象としています。つまり、運動によって起こった軽微な筋損傷にはアイシングは有効で、肉ばなれなどの重度な筋損傷にはアイシングを行わない方がいい可能性があるということです。ただ、これらの研究結果は

          AU#24「軽微な筋線維の壊死を伴う筋損傷後のアイシングは誘導型一酸化窒素合成酵素表現型マクロファージの侵入を制限し、筋再生を促進する」

          AU#23 慢性足関節不安定症の患者において、バランストレーニングは視覚依存を修正しない:システマティックレビュー・メタアナリシス

          論文概要 まとめ 足関節捻挫や前十字靭帯損傷などの軟部組織に損傷を与える傷害では、その組織に組み込まれている感覚器・神経にも損傷を及ぼし、中枢神経への情報入力を変化させます。このような変化が起こると、身体は様々な生理的適応を通して日常生活やスポーツで必要なタスクを可能とするような戦略を生み出します。この生理的適応や戦略は、生きていくために必要な動作を可能とする適応ではありますが、適応・戦略の柔軟性・自由度が低ければ、多様なタスク・環境に応じる能力が低下してしまい、不適切な

          AU#23 慢性足関節不安定症の患者において、バランストレーニングは視覚依存を修正しない:システマティックレビュー・メタアナリシス

          AU#22 傷害のリスクを増加させずに球速を上げる軽い野球ボールでのトレーニング

          まとめ MLBでは肩の怪我が減少傾向にある一方で、肘の怪我の発症率が高くなっていきています。2 肘の外反ストレスは、肩の外旋可動域や球速と正の関係性があります。 ある研究では、重い野球ボールの使用によって筋力は上がらず、代わりに肩の外旋可動域が上昇することによって球速が上がったと報告されています。3 筋力は上がらずに肩の外旋可動域の上昇、および肘にかかる外反トルクが増えることで、肘へのストレスが上がることは容易に想像できるでしょう。軽い野球ボールを用いたトレーニングの研究はま

          AU#22 傷害のリスクを増加させずに球速を上げる軽い野球ボールでのトレーニング

          AU#21: 学生が最大限の学びを得るための混合授業による反転授業の活用

          まとめ アクティブラーニングにおいて、実際どの程度の自由を学生に与えるのか、また、どうすれば能動的に取り組んでもらえるのか、この論文からヒントを得られたのではないでしょうか?より詳しい注意点なども本文には書かれていますので、興味のある方は是非読んでみてください。また、アクティブラーニングには反転授業の他にも様々な手法があり、論文やウェブサイトなどで紹介されています。バリエーションを持つことで学生も楽しみながら学ぶことができると思いますので、みなさんの指導法や指導環境に合った手

          AU#21: 学生が最大限の学びを得るための混合授業による反転授業の活用

          AU#20 脳振盪後の前庭リハビリテーションの有効性:無作為化比較試験のシステマティックレビュー

          まとめ: 本論文では、VRは脳振盪後の眩暈の軽減、生活の質と歩行障害の改善、競技復帰への時間を短縮するために有効であることが示されています。休養と運動強度の調整を中心にした従来通りの段階的な競技復帰への方法に加え、以前のアカデミックアップデートでも紹介されたVOMSなどによる眼球運動と前庭機能の評価(AU#4)と神経筋トレーニング(AU#12)、そして今回の論文で紹介されたVRによる前庭機能障害に対するリハビリテーションを行うことで、脳振盪からのより安全かつ早期の復帰が可能と

          AU#20 脳振盪後の前庭リハビリテーションの有効性:無作為化比較試験のシステマティックレビュー

          AU#19: 前十字靭帯損傷に関連する神経認知および神経生理機能: リハビリテーションと競技復帰テストにおける神経認知的アプローチの枠組み

          まとめ 300文字程度(筆者による紹介論文のまとめと読者へのメッセージ) 競技中、フィールドのシチュエーションは常に変わり続け、次に何が起こるか予測できません。また、選手は敵、味方、そしてボールの位置などに注意を向けながら、複雑な動作を遂行しなければなりません。ACLR後の代償的な神経生理的変化および神経認知的不全が残った状態で競技復帰をすると、選手には「認知的余裕」がなくなり、自分の動きに注意を払うだけの、認知的リソースが限られた状態となります。その結果、複雑な関節や筋活動

          AU#19: 前十字靭帯損傷に関連する神経認知および神経生理機能: リハビリテーションと競技復帰テストにおける神経認知的アプローチの枠組み

          アカデミックアップデート #18「前十字靭帯再建術に伴う神経可塑性」

          まとめ ACL損傷、ACLRそしてリハビリテーションの過程が、感覚―視覚―運動制御に関連する脳の活性変化を引き起こす可能性があります。そしてこの影響は競技復帰した後も残存する事がわかっています。そのため、変化した感覚―視覚系による膝の神経制御戦略は、新しいリハビリテーション・治療的戦略の対象となり得ます。この論文の結果を臨床的に実施する際に注意すべき点は、この研究デザインでは神経可塑性の変化が受傷後いつ起こったのか、また脳の活性変化が受傷前に存在していたのかどうかを判断するこ

          アカデミックアップデート #18「前十字靭帯再建術に伴う神経可塑性」