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AU#14: 急性足関節内反捻挫の定量的症例報告や足関節 “giving-way” から私たちは何を学んだのか、そして、今後どのようなことを明らかにするべきか。

本研究では、実験中に偶然発生した急性足関節内反捻挫(Lateral Ankle Sprain: LAS)の瞬間を捉えた症例報告や、ビデオに録画されたLASの受傷シーンを3次元解析(Model-based Image Matching本文内注釈1)した症例報告などからデータを抽出・分析することで、LASの発生メカニズムの解明に挑んでいます。

序文
急性足関節内反捻挫(Lateral Ankle Sprain: LAS)はスポーツ活動中に頻発する外傷であり、その再発率も非常に高いことが知られています。LASは、バスケットボールやバレーボールなどの跳躍着地を繰り返すスポーツで多く発生する傾向があります。このようなスポーツでは、LASの再発を繰り返し、足関節の不安定感が解消されない慢性足関節不安定症を有する選手が数多く見られます。選手がベストなコンディションで競技を続けるためにも、LASの発生メカニズムを解明し、予防戦略に繋げる取り組みは重要であると言えます。                                                                                                            目的
LASの発生メカニズムと足関節の “giving-way” 注釈2を記録した症例報告にて示されたデータを定量的に統合し、発生メカニズムを包括的に検討すること。                                                                                                                        方法
MEDLINEとEMBASEにて体系的な文献検索を行った。さらに、特定の学術誌を手作業で検索し、関連する研究者に連絡を取ることで未発表のデータを入手するなどの戦略を取り入れた。個々の症例報告から11例、4つの症例報告から13例、合計24例が定量的統合に含まれた。                                              結果
代表的な統合データを表1に示す。足関節の過度の内がえしは、最も顕著な運動パターンであり、含まれるすべての症例で観察された。

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表1. 代表的な統合データ(Lysdal et al.,に基づき, 著者が作成。なお、本稿で使用されている足関節の運動に関する用語[例:内がえし]は、足の外科学会の「関節可動域表示ならびに測定法改訂について[2022年4月改訂]」< https://jssf.jp/medical/parlance.html >に基づき記載した。)
結論
研究の結果、LASにおける発生メカニズムにおいて、内がえしは最も注目すべき要素であることが示唆された。内転と底屈の要素は重要ではあるものの、LASを予防するためには、過度の内がえしが引き起こされる要因の解明とその予防に主眼が置かれるべきである。今後の研究では、足関節捻挫の発生メカニズムをスポーツの種類、傷害シナリオ、プレイポジションなどと関連させて分析することが望まれる。

まとめ
本研究では、LASの発生メカニズムについて合計24例の症例から検討がなされました。筆者らは、24例の症例は、限定的でありその解釈は慎重になされるべきであると述べています。しかしながら、筆者らが示した手法は斬新であり、今後の研究の発展に繋がる重要なエビデンスが示されたと感じます。今後、LASの発生メカニズムの詳細が明らかなることで、スポーツや個々の選手の特性に合わせた予防戦略の構築が可能となることが期待されます。

注釈1. 実際の受傷シーンのビデオに3次元モデルをマッチさせ、キネマティクスを推定する手法。
注釈2. 足関節捻挫の既往歴があるヒトは、踵が地面についた瞬間に予期や制御ができない足関節の回外を経験することがあります。これを “giving-way” (ギビングウェイ)と呼びます。
注釈3. 平均速度の標準偏差は論文中に示されていないため割愛しています。

出典
Lysdal et al., What have we learnt from quantitative case reports of acute lateral ankle sprains injuries and episodes of 'giving-way' of the ankle joint, and what shall we further investigate? Sports Biomech. 2022 Apr 21.

文責
篠原 純司


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