見出し画像

中学高校留学。海外の学校の定期テストよりずっと大切な課題レポート。日本とは違いすぎる教育システムを理解する。

定期テストの成績をベースにして成績を付ける日本の教育。一方、海外ではテストの比重はそれほど高くないことが一般的です。例えば、オーストラリアの高校では、理科や社会ではリサーチレポートを数週間かけて作成して、そのレポートの採点が成績の軸になり、定期テストなどは行わないのが一般です。

ですので、これから海外の中学や高校に留学を考えている方に、海外の定期テストより大切なリサーチレポートがどのようなものかを詳しく説明したいと思います。

今年の4月から海外の高校に留学した生徒が3週間目(week3)に化学の授業で出された課題がこちらになります。

トピックはこちらになります。

Conduct an investigation to research a specific issue:
Covalent compounds are more effective than metallic alloys for protection.

つまり、どんな課題かというと、

共通結合の化合物は金属合金よりも保護に対して効果が高いことを、ある問題を選んで調べて証明してください。

ということです。

そして、学校から指定された課題は

Do the properties X and Y make boron carbide a better Z than steel.
You may choose from the following:
Properties (X and Y): strength hardness density and elastic module
Types of protection (Z): body armour padlocks and building fromes

訳すと、
XとYの特性は、ある製品Zにおいて炭化ホウ素は、鋼鉄に比べて優れている。
また、X,YとZに関しては以下の中からそれぞれ選んでください。
X and Yは強度、硬度、密度、弾力率
Zは防弾服、南京錠、建物の骨組み

となります。

で、この生徒は、炭化ホウ素が、鋼鉄よりも、強度、硬度において防弾服に適していることを調査して証明することになりました。

これは、各生徒それぞれ好きな研究したいことを選ぶことができます。

課題は、下記の順番でそれぞれユニットに分けて説明します。

1 introduction(150-200words)
2 research question(1 sentence)
3 supported hypotheses(2-3 sentences)
4 data(student-generated table and graph)
5 analysis(50-100 words)
6 evaluation(150-200 words)
7 conclusion(150-200 words)
8 references(list of sources used)

と、8つの項目に分けて、それぞれ指定された採点基準を満たすようにレポートを作成することになります。

1 introduction(150-200words)
まず、introduction(紹介文)では、今回の製品を防弾服に決めました。ですので、防弾服がどのように進化し続けているのか。また、共有結合の炭素化合物などが防弾着として多く利用されている現状などを、伝えて、トピックの背景を独自の視点で書いて先生に注目浴びるように描くことになります。

2 research question(1 sentence)

リサーチの課題は

Do the properties strength and hardness make boron carbide a better body armour than steel.

防弾着として、鋼鉄の防弾着よりも炭化ホウ素の防弾着が強度と硬度に関して優れていることは何か?について説明することになります。

3 supported hypotheses(2-3 sentences)

これは、炭化ホウ素が鋼鉄よりも防弾服として、硬度、強度の面で裏付けできる仮説を立てるわけです。

ただ、それぞれのトピックで採点の基準があるわけです。基準がこちらになります。

つまり、if then when because を使って、文を構成することを推奨しています。この課題はしっかりと自分の伝えたいことをわかりやすく説明する基礎を作っていきます。

今回は、このように仮説を作りました。

自分が思ったことを好きなように書くのではなく、決められた基準に合わせて、その中で効果的な文章を書くことを求められます。

4 data(student-generated table and graph)

データに関しては、自分が希望する特性や製品を選んだうえでそれに必要なデータ類は学校が提供したデータがそれぞれの生徒専用の学校の学習アカウントに入っているのでそこから自分のパソコンでデータを取ることになります。

5 analysis(50-100 words)

この分析に関しても、独自にウェブサイトから調べるのではなく、自分が選んだデータから客観的にそれぞれの強度、硬度が炭化ホウ素、鋼鉄それぞれ比較してどのような違いがあるのか?を欠くことになります。

これは、今回の化学の資料データは、学校が選んだものであり、当然、炭化ホウ素の硬度などもそれぞれの研究所で発表されるデータは微妙に違いますし、硬度を例にとっても、ひっかき傷で硬度を判定するモース硬度 mohs hardnessや押し込みの硬度を測定したビッカース硬度などいろいろあり、また誤差もあります。

学校から書く内容が十分でない場合は、先生から改善点を提案されます。それを何度も繰り返してレポートを作成するわけです。

このような感じです。

このコメントでは、仮説をもっと共有結合と金属合金の違いは化学的にレポートするように指摘されました。

6 evaluation(150-200 words)

Evaluationは評価という意味で、他にもassessmentなどもありますが、違いに関しては、evaluationは基準がある。という点がベースにあると考えるといいと思います。

また、今回はlimitationとexplanationに分けて説明を4つずつ書くように指定があったようです。limitationとは、基本的に理科系の論文などによく出る言葉ですが、限界を指定して説明をする。という流れが一般的なようです。

今回はこのように書きました。

limitation
Boron carbide has a microhardness of 2,946.37±62.6kg/mm² (Lionel Vargas-Gonzalez and Robert F. Speyer,2010,)and steel has a microhardness of 166kg/mm²(A. Casagrande G.P. Cammarota, I. Micere, 2011)

Explanation
Lionel Vargas-Gonzalez a leading researcher in the development of bulletproof clothing, and his numbers on the hardness of boron carbide are credible. While Angelo Casagrande and Gian Paolo Cammarota have produced credible results in research studies in the scientific field.

この数値が信頼のおける研究者が提出した数値ということをしっかりと説明して、自分の課題レポートを信頼に値するものというアピールをします。

7 conclusion(150-200 words)

結論のポイントは

Refer to data as evaluate(データを参照に評価します。)

ということになります。

今回は使用したデータを参照に、共有結合のメリットである、軽くて防弾性に優れていることや、銃弾の力を分散するのに優れていることなどを挙げて文章を作ります。

8 references(list of sources used)

最後のreferencesですが、これは、今回のデータで使用した数値を提供してくれた研究者に関して詳しく説明します。

こんな感じで海外の中学生や高校生は理科だけでなく、社会科などの教科ではこのような研究レポートのようなものを提出します。このアサイメントが成績の軸になり、学校の評価と各国の卒業統一試験の結果を加味して合否を決めることになります。

今回は、当然入学したばかりの生徒がこのような課題をやるのは当然不可能ですので私が文章を書いて、それを生徒の詳しく説明することと、海外の理科や社会の課題の書き方などを説明しました。

また、課題を提出する時に先生からいろいろな説明を受けるので、それを頑張って理解して私の伝えることをお願いしました。

Turnitinに関して、

今回の課題は、各自turnitinというアプリを使って、どれだけホームページの文章に頼らないで自分の言葉で書いたかも評価されます。

当然、すべての文章がどのホームページの文章から引用されていない。と、認定されるのは不可能ですが、30%以内に抑えるように学校では指導するようです。今回は最終的に16%でした。

簡単に全体の流れを説明しましたが、それぞれの先生ごとにやり方は微妙に変わりますし、日本のような簡単な課題レポートとは違った、word excel canva powerpointなどを使ってまとめるわけです。

日本では試験だけが出来れば日本国内限定ですが評価されますが、海外ではテストも出来て、このような論文もしっかりと書けなければ高い成績を取ることができません。

日本の英語の評価と同じで、実用的な英語力を持つことよりも、日本独自の英語のテストで高得点を取ることが日本人にとっては大切なことで、海外では大学や社会人になった時に必要なスキルをしっかりと高校で付けることが教育の軸になっているわけです。

凄く大変な作業ですが、このような授業をサボらずに頑張れば、本当に日本でも海外でも通用するスキルが身につき、日本でも海外でも重要な戦力として迎い入れられると思います。

海外で活躍できる生徒がたくさん出てくることが私の楽しみでもあるし、ほんの少しでも学習面でのサポートで関わることができることが光栄ですし、生徒たちから信頼されている時が華だと感じます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?