マガジンのカバー画像

日本学術会議 任命拒否問題

33
2020年9月、菅義偉内閣総理大臣(当時)が、日本学術会議が推薦した会員候補のうち6名を任命しなかった問題を機に、関係する情報整理とJASTJ会員の意見表明のために立ち上げました。
運営しているクリエイター

#海外のアカデミー

【日本学術会議 任命拒否問題】 全米アカデミーズが価値の高い報告書を作成するための工夫

【日本学術会議 任命拒否問題】 全米アカデミーズが価値の高い報告書を作成するための工夫

 アメリカの3つの組織(NAS、NAE、NAM)からなるアカデミーである、全米アカデミーズでは、科学的に質の高い、不偏・不党の独立した提言を行い、調査プロセスのすべてのステップでチェックとバランスを適用するために、以下のような厳格な決まりがあります。

以下は全米アカデミーズのウェブサイトにあるOur Study Processの全訳です(2020年10月12日閲覧)。
(写真はNational

もっとみる

【日本学術会議 任命拒否問題】 主要国のアカデミー(設立年順)

 アカデミーの設立の歴史は古く、17世期に遡ります。
 古いのはヨーロッパ、新しいのはアメリカとアジアです。
 地域限定であったり文系・理系に分けたりと複数のアカデミーが存在する国もいくつか見られます。

1603年 イタリア リンチェイ国立アカデミー(Academia Nazionale dei Lincei)
1660年 イギリス 英国王立協会(The Royal Society)
1666年

もっとみる

【日本学術会議 任命拒否問題】 各国アカデミーの設置の理由と形態

 ほとんどのアカデミーが、王室勅令、大統領勅令、大臣令、議会令、法令、定款のいずれかにより設立されています。このことによって、その国の学術界の中で高い地位に位置づけられていると理解できます。

 一方で、それぞれの組織の設置形態は、欧米とアジア諸国とで明らかな差異があります。欧米各国のアカデミーは、おおむね非営利団体・法人などの非政府組織です。対照的に、日本をはじめアジア諸国の大半は政府機関のなか

もっとみる

【日本学術会議 任命拒否問題】 各国アカデミーの会員の決め方

 海外のアカデミーでは、会員をどのように決めているのでしょうか?

 会員の選出方法は、海外のほとんど全てのアカデミーにおいて、そのアカデミー内の会員により推薦・選出される方式(co-optation)を採用しています。

 理由は、アカデミー会員は学術上高い評価を得た者で構成されているべきであり、会員選出の判断はアカデミー会員のみによって可能であるという基本的な考え方があるためです。

【日本学術会議 任命拒否問題】 各国アカデミーの会員の任期

会員の任期は、会長・理事などに3〜4年程度の任期制をとる機関がある一方で、普通会員を終身か70歳程度の定年制をとる機関が多いことがわかりました。
 
○終身会員制のアカデミー
全米科学アカデミー、イギリス王立協会、ブリティッシュアカデミー、フランス科学アカデミー、ドイツ科学・人文科学アカデミー連合(65〜70才で義務免除など)、ベルリンーブランデンベルグ科学・人文科学アカデミー(68才で義務免除)

もっとみる

【日本学術会議 任命拒否問題】 各国アカデミーの会員人数と外国人会員

全米アカデミーズの会員数は群を抜いて多く、いずれも数千人規模です。他の国のアカデミーの正会員数は、ほぼ数百から一千人の規模です。

多くの欧米諸国のアカデミーは、自国内はもちろん、国際的にも貢献するべき組織として、会員数の20%からほぼ同数程度の外国人会員・会友を有しています。
※日本学術会議には外国人会員・会友はいません。

○主要アカデミーの会員数は以下の通り(2001年調査時の人数『主要国の

もっとみる

【日本学術会議 任命拒否問題】 各国アカデミーの機能と役割

助言機能
 欧米・アジアを問わず、ほぼすべてのアカデミーは、政府や議会に対して助言を行うことが期待されています。助言は報告、勧告、答申、談話の形で出され、報告書の内容のレベル、信頼性に、アカデミーの真価が問われます。
 報告書は、アカデミーが自発的に行うものと、政府や民間とのコントラクト(契約)によるものの2種類にわけられます。欧米諸国のアカデミーではコントラクトによる報告書の数が多く、『各国アカ

もっとみる

【日本学術会議 任命拒否問題】 各国アカデミーの予算と事務局

全米科学アカデミー連合のように、コントラクト(契約に基づく報告書の作成)を多くこなすアカデミーでは事務局員の人数が多くなっています。コントラクトに含まれる経費として、能力の高い専従スタッフの雇用と調査活動資金が必要であることが認識されており、それに応じた予算規模となっています。

イギリスでは政府からのグラント(競争的資金)が全体予算の半額以上を占めています。フランスでは6割が国からの出資、ドイツ

もっとみる

【日本学術会議 任命拒否問題】 アカデミーが正常に機能するには、政治にも責任がある

 日本学術会議が推薦した新規会員6人の任命を菅義偉総理が拒否した問題で、自民党内ではすでに日本学術会議のあり方の議論が始まっている。しかし、その議論がこのまま進むなら、日本の将来にとって決して先行きの明るいものとはならないだろう。

 日本学術会議は、かつては左派に偏向した学者が優遇される形で会員が多く決められていたこともあり、国は一貫して学術会議の権限を減らす方向で動いてきた。国と学術会議との冷

もっとみる