感染症のSIRモデルと実効再生産数についての解説

<科学的知見にもとづく個別の解説記事> 20th May 2020

 科学コミュニケーターの池辺靖さんが、感染症予測の基本的な数理モデルである「SIRモデル」と「実効再生産数」についてわかりやすい解説記事を書いていますのでご紹介します。

感染症の流行を表すSIRモデルについて 

 感染症が発生してから流行がどのように拡大して終息するのかを説明する、最もシンプルな数理モデルがSIRモデルです。COVID-19での基本再生産数を2.5としたとき、何の対策も取らなかった場合に感染者の数が60%になれば感染がピークに達し、その後終息の方向に向かうという集団免疫の考え方(ジョンソン英首相が打ち出してすぐ取り下げた)の根拠も理解できます。
 また、流行を早く収めるため、治療薬の開発、人との接触減、マスクと手洗い、ワクチン開発が、それぞれ実効再生産数にどのようにパラメータとして含まれているのかも明確に示されており、納得できます。


新規感染者数の推移データから再生産数を推定する方法について ー西浦博氏の5月12日のレクチャーよりー

 日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)が主催した12日の勉強会で西浦教授が解説してくれた実効再生産数の導出方法について、こちらもポイントを大変わかりやすくまとめてくれています。

 実効再生産数がどのように導出されたものかを知ることにより、この数値がしっかりしたデータと分析にもとづいた正確な値であることが理解できます。
 一方で、感染してから陽性であることが分かるまでに時間がかかるというCOVID-19の性質や、人為的な理由でデータを取り揃えるまでに時間がかかることから、実効再生産数が「リアルタイム性に乏しい」という課題を抱えていることも分かります。
 そのため、流行の兆候をいち早く掴むのに、実効再生産数にコンセプトが近い指標として西浦先生が提案していた、報告日に基づく計算によって簡易的に評価できる数値(直近7日間の患者数/その前7日間の患者数)についても紹介されています。


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