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成人の日に思ったこと

私が成人式のときに着た振袖は姉のお下がり。「こういう振袖が着たい!」とか「髪型やメイクはこんな感じが良い!」とか全くなくて、むしろ興味なかったからなんでもよかったというのが本当のところ。母親の友人が美容室を経営していて、母親自身もある程度着付が出来る人だったので、当日はなすがままのマネキンになっていた。

振袖は、祖父が買ってくれたものらしい。東北から関東の呉服屋にご奉公しに来たのが祖父の歴史の始まりで、その呉服屋の店主に見立ててもらったものとのことだった。私は柄とか色とかより、そういうのこそ着たいと思った。小さい頃からお下がりにもほとんど抵抗がなかったし、むしろ姉のものを着れるのは嬉しかった。

祖父が姉のために買った振袖

私に似合ってたかどうかはよくわからなかったけど、振袖というものを人生で初めて着ることができて嬉しかった記憶。なんというか、背筋が伸びる感じ。「良いもの」を着せてもらえた喜びというか。値段もそうだし、品質やブランドも、人生で初めてハレのものを着させてもらえた高揚感というか。

恥ずかしいけど嬉しくて、祖父や祖母、両親にも見てもらったと思うけど、中学校のときのめちゃくちゃお世話になった校長先生に見せに行ったらお酒飲んでてデレデレしてる上に喜んでくれたのかさらにデレデレになってくれた(たぶん)、そのときの方が記憶に残ってる。飲み屋にいると聞き付けて、わざわざ見せに行ったっけ。


ヒロミチナカノデザインの振袖なのである


一年前くらいだろうか、母親がその振袖を取り出して綺麗に畳み直していた。美容室を経営している母の友人が、自分の孫にあの振袖を着させたいと言っているのだという。「孫がいないウチが持ってても仕方ないんだから、あんたが仕事で使うならそのまま持ってていいよ、って言ったのよ」と母。

それを聞いて、思わず写真を撮ったのがここに載せてる写真。そのときの私は、なんだか申し訳ない気持ちと、寂しい気持ちと、でもそれほどにあの振袖が良いものだと思ってもらえてる誇らしさとで複雑で。でも、着物のことを考えたら、何代もの女の子に袖を通してもらった方が嬉しいよな、とも思えたし、それを決めたのは母なのだから止めるつもりもなかった。大切なものを手放せる母の強さや潔さを見た気がした。

姉にも私にも兄にも、あなたがたの孫が出来ることはないかもしれない、と思うと申し訳ない気持ちがあるけど、私たちは私たちの人生があるし、でもなんというか。
ごめんね父ちゃん母ちゃん。
ただ、私は、今、二回目の成人式を迎え、これまで無事に生きてきました。
ありがとうございます。


あー、これ書いてたらなんだか泣けてきたな😂

大事にしまわれていた振袖


ちなみに、母の友人に言わせると「お姉ちゃんじゃなくてアンタのためにこの振袖仕立ててくれたんじゃないの?っていうくらいアンタの方が似合うわねぇ。アンタ鳩胸だし」と、それでもタオルを胸にギュッと詰め込まれながら着付けされたのは姉には内緒です。


◎成人式に振袖が着れない家庭の子もいる、とかいうニュースなどを見て、「着れたエピソードでマウントか」とかそういうことじゃなくて、単純に、自分の置かれた環境に感謝したい、と思って書きました。

じいちゃんにも両親にも、呉服屋のおじさんにも美容室のおばさんにも。皆皆感謝です。




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