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自転車泥棒 (1948) 伊

ヴィットリオ・デ・シーカ監督

イタリアの
ネオレアリズモ映画の代表作と言われていますね。

1948年制作と言うと ちょうど私の生まれた頃で
日本も終戦から3年後で 国中が貧しかった時代。
私は赤ん坊だったから
貧しいとか、ひもじい、なんてことは覚えてないけれども・・

イタリア映画も好きで よく観ましたが
なんというか、貧しさの風景が日本と似ているようで
そのやるせなさが ひときわ胸に沁みる気がします。

それにしても
これほど悲しい映画が 他にあるだろうかとも思うけれど
それでもラストには
ほのぼのとした 人間愛が伝わって来る。

デ・シーカ監督の持つ 芸術の力だと思う。

この映画も
50年も昔に通っていた ミニシアターで観ました。
映画終了後の暗闇の時間が いつもより長かった。

その中で静かに漂っていた 私も含めた観客の
すすり泣きと嗚咽が 忘れられません。

終戦直後、街は失業者で溢れていた。

アントニオは 自転車を用意することを条件に
2年ぶりにポスター張りの 仕事にありつくが
自転車は質に入っていた。

妻のマリアが 家中のシーツをかき集め
無事、自転車を受けだし
翌朝、アントニオは息子のブルーノを乗せて
意気揚々と仕事場に向かう。

途中、ブルーノを ガソリンスタンドで降ろし
夕方、迎えに来る約束をする。
6歳のブルーノも ここで働いているのだ。

しかしアントニオは 初仕事のこの日
ポスターを貼っている間に 自転車を盗まれてしまう。

すぐに警察に訴えるが
毎日、何千台もの自転車の盗難がある当時
ろくに相手にもされない。

翌朝、早くからアントニオは 友人たちの協力を得て
ブルーノと一緒に
広場の自転車市を探し廻るが 見つからない。

自転車はバラバラに解体され 部品ごとに売られたり
組み立てられ、ペンキを塗られ
新品の自転車となって 売り場に並ぶ。
登録番号を目当てに 探すほかないのだ。

やがて友人たちは 仕事に行き
二人きりで探し廻る父と子。
突然の通り雨に ずぶ濡れだ。

しかしこの後、犯人に似た若い男を見つけ
男の家まで追って行くが 男は知らないと言い張り
ブルーノが警官を呼んで来るが
自転車は発見されず 証拠も証人もなく
逆に男の仲間たちから 詰め寄られ追い返された。

もう、どうしようもない。
しかし自転車が無くては 仕事は他人にまわる。

途中、イライラから つまらないことで
ブルーノの頭を殴ってしまうアントニオ。
驚き、委縮して 父から離れて歩く息子。

アントニオは後悔し、息子に詫びる気持ちで
レストランに入り 周囲が豪華な食事をする中 
肩身の狭い思いで食事をした。

昨日までインチキだと こき下ろしていた
占い師にも見て貰ったが
「すぐに見つかるか、または出て来ないかだ」

疲労と絶望感で スタジアムの前で座り込む二人。

スタジアムでは サッカーの試合が開催されており
目の前には観客たちの 大量の自転車が並んでいる。

けれど先程から アントニオの目を奪っているのは
この裏通りに
ぽつんと停められている 一台の自転車だ。

やがて試合が終わり 帰る観客たちで
通りは大混雑になった。

意を決してアントニオは
息子に電車賃を渡し 先に帰れと言うと
自分は例の自転車に近づき 手を掛けた。

が、その刹那「泥棒!」の声が響き渡り
あっという間に 数人の人々に追われ
必死に自転車をこいで逃げる 父の姿を
路面電車に乗り遅れた ブルーノは見た。

アントニオはあえなく捕まり、取り押さえられた。
泣きながら 父にしがみつくブルーノ。

男たちはアントニオを 警察に突き出そうとするが
自転車の持ち主はブルーノを見て
見逃してやると言った。

「息子の前で恥ずかしくないのか!」

男たちの罵倒を 背中に受けながら
雑踏の中を歩いて行く父と子。

父の頬をつたう涙。
けれど
父の手を握る ブルーノはもう泣いていない。

先は暗い。
でも、この子がいるから大丈夫、
そう思わせるラストです。

          〇
2018年・イギリスBBCが発表した
世界中の映画評論家の投票による
「史上最高の外国映画ベスト100」の第二位。

【ベストテン】
1「七人の侍」黒澤明
2「自転車泥棒」ヴットリオ・デ・シーカ
3「東京物語」小津安二郎
4「羅生門」黒澤明
5「ゲームの規則」ジャン・ルノワール
6「ペルソナ」イングマール・ベルイマン
7「8 2/1」フェデリコ・フェリーニ
8「大人は判ってくれない」フランソワ・トリュフォー
9「花様年華」ウォン・カーワァイ
10「甘い生活」フェデリコ・フェリーニ

アメリカ映画は 別枠でベスト100があるそうですが

このランキングを見るたびに
日本映画が・・嬉しくて・・・💕





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