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クズのルーツ 〜牛丼屋編①〜

※一応フィクションです。

もう20年前になるだろうか、採れたて野菜の様にフレッシュだった俺は当時、牛丼屋でアルバイトをしていた。(どの牛丼屋とは言わないが)
深夜帯のスタップだったので、ワンオペだった。
(いまでこそ"ワンオペ"って言葉が浸透してるよね)


危ないスジの人がたくさん住んでいるマンションがすぐ近くにあったし、飲み屋街も近かった為、深夜帯の客層は本当に悪かった。
(◯人事件とか抗争が年に数回あった)

店内でクレームつけて暴れる奴はいるし、客同士でケンカが始まるし、俺は何故かコップを投げつけられ土下座させられるし。

オレンジ色のパーマヘアの当時未成年の俺でも、店舗責任者に笑顔で受け入れられたのは、そういう事だったのかなと、今になって思ったりする。

若かったのもあったし、深夜勤もワンオペもたいしてキツいとは感じなかった。
怖い客層でもなんだかんだ捌けたし、馴染めた。
バイトに行きたくない時もあったが、ほぼ休む事なく行っていた(気がする)。
バイト自体は好きだった。
人間関係も良かったし、まかないは好きなの食べれるし。(ホントは牛丼並以外はダメ)


バイトにも慣れてきて半年ぐらい経った頃かな。

刺激を求めていたのか、深夜のテンションに魔が差したのか、通常業務だけでお給料をもらう事に飽きを感じていたのか、俺は数々の事件を起こす。


すべての牛丼屋のシステムがそうかはわからないが、俺が働いていた牛丼屋の牛丼そのものの管理の仕方は以下の方法だった。

・牛丼 並 ご飯100P 肉100P
・牛丼 特盛 ご飯200P 肉200P

※もう一度念押ししておくけど、この話はフィクションです。

何が言いたいかというと、自分がシフトに入っている時間、どれだけの牛丼が売れたかを管理する為のもの。

もし、その日の深夜帯で牛丼並だけが50杯売れたよ、となれば

ご飯5000P、肉5000Pとなる。

これは牛丼に限っての計算方法となり、牛丼を作る場合はある程度の白飯や肉のグラム計算こそ必要だが、大きく規定値を外れない限りは特に問題がないからだ。

ご飯は大きい炊飯器から盛り、肉は大きい肉鍋から専用のお玉でスライドさせるように盛り付ける。

ベテランの域になってくると、グラム計算はせず、目分量と経験と技術で完結する事ができる。

その誤差も踏まえた上で、現実的な棚卸し方法がこのシステムである。

混雑状況に合わせて、ご飯を炊いたり、肉鍋に肉と玉ねぎを追加していく。

店内在庫は常に、ご飯や肉は20000Pほどストックされている。

先ほどの話を踏まえた上で、管理票に書くとすれば、深夜帯に牛丼並みが50杯売れた。
使ったご飯と肉は5000Pずつ。

店舗のストックではご飯と肉が20000Pずつあった。差し引きをすると、残りはそれぞれ15000Pのはず。

そして退勤時に、実際の店舗内のご飯と肉の残量を計算する。

もちろん、先述した誤差が生まれるが、よほど下手な盛り方をしない限りは使ったご飯と肉は5000Pの近似値となる。
(多少の誤差は認められている)

深夜帯、ご飯と肉の売り上げは5000Pでした。
そう管理票に記載してその日の仕事を終えるのだ。
今でこそ同じ管理方法かはわからないが当時はそのような大雑把な管理システムだった。

そのシステムを理解した俺は、どうしただろうか。


牛丼並は、ご飯100P 肉100Pで提供されるものだが、それぞれ意図的に90Pで提供したらどうなるだろうか。

実際、100Pと90Pの牛丼ではほとんど見分けが付かない。
(ちなみにミニ盛だと、それぞれ60Pぐらい)

90Pの状態の牛丼を10杯提供すれば、牛丼並が1杯作り出す事ができる。

特盛の200Pを180Pにした場合は10杯提供した段階で牛丼並が2杯作り出す事ができる。

実際に、そんな事をして問題にはならなかった。
管理票に記載されている数字には問題はないし、客からのクレームもなかった。

問題は、食べる客側が本来食べる事ができる量より少なく食べていたという事。

そして大問題だったのは、当時その牛丼屋チェーンには『防犯カメラ』が店内には無かった事。
※店員の休憩スペースには1台だけ本部直通のモノがあった。

浮いた牛丼分に関しては、夜中に遊びにくる友達に無償で振る舞ったのだ。

これくらいの事では、きっと誰も気づかず、そのまま事なきを得てしまったんだろう。

次第にそんな事にも飽きてしまい、調子にのる俺が、本部に奇襲をかけられるまでには、まだまだ時間がかかった。


その②に続く。

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